リンゴ酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。MSBOT (会話 | 投稿記録) による 2012年4月20日 (金) 12:58個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (r2.7.3) (ロボットによる 追加: fa:مالیک اسید)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

リンゴ酸
{{{画像alt1}}}
識別情報
CAS登録番号 6915-15-7 チェック
ChemSpider 510
EC番号 230-022-8
E番号 E296 (防腐剤)
特性
化学式 C4H6O5
モル質量 134.09 g mol−1
密度 1.609 g/cm3
融点

130 ℃

への溶解度 558 g/l (at 20 ℃)[1]
酸解離定数 pKa pKa1 = 3.4, pKa2 = 5.13
関連する物質
その他の陰イオン リンゴ酸イオン
関連するカルボン酸 プロピオン酸
酪酸
コハク酸
酒石酸
クロトン酸
フマル酸
吉草酸
関連物質 1-ブタノール
ブチルアルデヒド
クロトンアルデヒド
リンゴ酸ナトリウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

リンゴ酸林檎酸、リンゴさん、malic acid)とはヒドロキシ酸に分類される有機化合物の一種。 リンゴ酸の和名はリンゴから見つかったことに由来する。示性式は HOOC-CH(OH)-CH2-COOH、分子量は 134.09。IUPAC置換命名法では 2-ヒドロキシブタン二酸 (2-hydroxybutanedioic acid) と表される。 2位に光学中心を持ち、リンゴに多く含まれる異性体は (S)-(−)-L体 である。0.1 % 水溶液の pH は 2.82。

生化学

天然にはL-リンゴ酸が見られる。

リンゴ酸は生化学で重要な役割を果たす。C4型光合成では、カルビン回路CO2源となる。クエン酸回路ではH2Oフマル酸Si面に付加することで(S)-リンゴ酸が生成する。(S)-リンゴ酸はリンゴ酸デヒドロゲナーゼによって酸化され、オキサロ酢酸となる。ピルビン酸から補充反応によって生成されることもある。

孔辺細胞では、ホスホエノールピルビン酸カルボキシル化によっても合成される。これは細胞がカリウムを取り込む際にその対イオンとなる。細胞内の溶質の濃度が上昇すると浸透圧が低下し、水が流入して細胞が膨張することで気孔が閉じる。

用途

(S)-(−)-L-リンゴ酸

爽快感のある酸味を持つため、飲料や食品の酸味料として用いられる。また、pH調整剤、乳化剤など、食品工業においてさまざまな用途に利用されている。

キレート性を持つ酸であることから、金属表面の洗浄などにも用いられる。

食品、工業に使われるリンゴ酸は、多くの場合ラセミ体が用いられる。

食品との関連

リンゴ酸は1785年、カール・ヴィルヘルム・シェーレによってリンゴジュースから単離された。1787年、アントワーヌ・ラヴォアジエラテン語mālum(リンゴ)に由来するacide maliqueという名を提唱した[2]リンゴの酸味に寄与する。ブドウにも存在し、ワインでは5g/l以上の濃度になることもある[3]。ブドウが熟していくと共にその量は減少するが、ワインに酸味を与える。マロラクティック発酵は、リンゴ酸をよりまろやかな乳酸に変換する。

食品添加物としては、E296というE番号が与えられている。酸味の少ないクエン酸の代用としても使われるが、過剰摂取により口の中に炎症を引き起こす可能性もある。食品添加物として欧州[4]・米国[5]・オーストラリア、ニュージーランド[6]で認可されている。

反応

工業的には無水マレイン酸の水和によって得られる[7]

発煙硫酸によって自己縮合し、ピロンであるクマリン酸(coumalic acid)を与える(クマリン(coumarin)とは異なる)[8]

クマリン酸(coumalic acid)合成

(-)-リンゴ酸はPCl5の作用で(+)-クロロコハク酸となり、(+)-クロロコハク酸は酸化銀(I)触媒により(+)-リンゴ酸となる。(+)-リンゴ酸にPCl5を作用させると(-)-クロロコハク酸となる。このことからワルデン反転が発見された。

出典

  1. ^ chemBlink Online Database of Chemicals from Around the World
  2. ^ The Origin of the Names Malic, Maleic, and Malonic Acid Jensen, William B. J. Chem. Educ. 2007, 84, 924. Abstract
  3. ^ "Methods For Analysis of Musts and Wines", Ough and Amerine, John Wiley and Sons, 2nd Edition, 1988, page 67
  4. ^ UK Food Standards Agency: Current EU approved additives and their E Numbers”. 2011年10月27日閲覧。
  5. ^ US Food and Drug Administration: Listing of Food Additives Status Part II”. 2011年10月27日閲覧。
  6. ^ Australia New Zealand Food Standards CodeStandard 1.2.4 - Labelling of ingredients”. 2011年10月27日閲覧。
  7. ^ Karlheinz Miltenberger "Hydroxycarboxylic Acids, Aliphatic" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,2005, Wiley-VCH, Weinheim. doi:10.1002/14356007.a13 507
  8. ^ Richard H. Wiley and Newton R. Smith (1963). "Coumalic acid". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 4, p. 201

関連項目