リカビジューシリーズ
リカビジューシリーズ (Licca Bijou Series[1][2]) は、タカラトミーが製造・販売する着せ替え人形「リカちゃん」の大人向けブランドのひとつである[1]。新シリーズとして2016年6月18日に第1弾が発売され[2][3]、2018年まで約2年間にわたりシリーズ展開された。「リカちゃん ビジューシリーズ」、あるいは単に「ビジューシリーズ」と呼ばれることもある。
「ビジュー (bijou) 」はフランス語で宝石を意味する語で、「宝石のように特別なおしゃれ」「質の高さと本物感、おしゃれへのこだわり」をコンセプトに、宝石のきらめきをイメージし「大人っぽいリカちゃんがファッションを楽しむキラキラした気持ち」を込めて命名された[2][3][4]。
本項では「リカビジューシリーズ」の終売後に、後継シリーズとして2020年から2021年にかけて展開された「リアルコーディネートスタイル (Real Coordinate Style) 」についても、共通点が多いことから併せて記述する。
概要
前史
タカラ時代のリカちゃんは「小学5年生の女の子」という設定[5]が示すとおり、主に小学生までの女児を対象とした子供向け商品として展開されてきた。
日本において急激な少子化が進む中、玩具メーカーは従来の子供向けラインナップから大人のコレクションに耐えうる高品質・高価格帯の商品に主軸を移していく傾向がみられた。少子高齢化の一方で、おたく文化の隆盛や「大きいお友達」「大人買い」などの流行語が示すように、従来は子供向けとみなされていた玩具を大人が趣味としてコレクションの対象とすることが一般化してゆく。そうした社会の変化の中で、長年「リカちゃん」を製造・販売してきたタカラは、2006年3月1日に同業のトミーと合併してタカラトミーとなる[6][7][8]。これは純玩具メーカーだった両社が、少子化社会の中で将来を見据えた上での決断であった。
タカラトミーとなった翌年の2007年には、リカちゃん誕生40周年を記念して「横浜元町リカちゃん」を発売している。これは1970年代後半から1980年代前半にかけて流行した「ハマトラ」ファッションをコンセプトとし、横浜元町ブランドの衣装をまとったリカちゃん人形で、横浜人形の家で行われたリカちゃん&ジェニー「永遠の夢の世界展」開催記念として1,000体が限定販売された。これは玩具コレクターの北原照久の企画[9]により実現したもので、タカラ時代の1998年にご当地リカちゃん第1号として沖縄限定発売された「琉球リカちゃん」と同様の「ご当地リカちゃん」でもあったが、同時に「ハマトラ」ファッションが流行した時代を知る世代に向けた、大人向けファッションドールとしてのリカちゃんの先駆けでもあった。
その後、2014年11月15日には大人向けリカちゃんの試みとして、光文社の女性ファッション雑誌『VERY』とのコラボレーション商品「VERYコラボ コーディネートリカちゃん」第1弾を発売した[10]。『VERY』は30代から40代前半の大人世代の女性をターゲットとしたファッション雑誌で「シロガネーゼ」の流行語を生み出したことでも知られる。「VERYコラボ コーディネートリカちゃん」はドールが4千円台から5千円台と、一般の子供向けリカちゃんより高額であったにもかかわらずヒット商品となった。2017年11月11日には第2弾ドール(『VERY』コーディネイトブック付き)[11]とドレスセット[12]、2020年11月7日には第3弾のドール[13]とドレスセット[14]が発売され、シリーズ展開となった。
こうして、かつてリカちゃん人形で遊んで大人になった女性をターゲットとした試みが好評を博したことから、2010年代後半以降、タカラトミーは大人向けリカちゃんシリーズの展開に注力してゆくこととなる[2]。
翌2015年には大人向けリカちゃんブランド「LiccA」を立ち上げ、「リカ スタイリッシュドールコレクション」としてシリーズ展開を開始[15]。同年6月より予約受付を開始し、同年12月に第1弾「カプチーノ ワンピーススタイル」と限定版「オリーブぺプラムスタイル」が発売された。「スタイリッシュドールコレクション」はその後もシリーズ展開を継続しており、各モデルとも希望小売価格1万円を超えるというリカちゃん史上でも例を見ない高価格帯でありながら、早々に予約完売するモデルも出るなど、大人向けリカちゃんの可能性を示す商品となった。なお「スタイリッシュドールコレクション」ではボディを新規に製作しており、他のリカちゃんシリーズとは異なるボディが使用されている。
シリーズ誕生
2014年開始の『VERY』コラボ、2015年開始の「LiccA」に続き、さらなる大人向けリカちゃんシリーズとして、2016年からは「ビジューシリーズ」の展開が開始されることとなった[1][2]。
これらの大人向けリカちゃんシリーズに共通するのは、従来の女児向けリカちゃんのようなお姫様風ドレスやアイドル風の衣装ではなく、大人の女性が実際に着たいと思うようなファッション性の高い衣装、すなわち「リアルクローズ」を身にまとっていることである[2][3]。またトップスとボトムスの組み合わせによりコーディネイトを楽しめたり、衣装だけでなくアクセサリーやハンドバッグなど付属の小物にも凝ったり、パッケージデザインにも高級感を出すなどして、大人の女性が楽しめるファッションドールとすることで商品価値を高め[2]、高価格化を可能にしたことであった。
翌2017年にはリカちゃん誕生50周年を迎え、ロングセラー商品となったリカちゃんはもはや子供向けの商品にとどまらず、かつてリカちゃんで遊んだ大人世代にも高い認知度を誇る商品に成長していた[2][3]。タカラトミーはこれを踏まえ、大人の女性向けの「リカちゃん」ブランド価値の創出に取り組んでいた[2][3]。ブランド強化の一環として開始したTwitterやInstagramといったSNSアカウントにも大人世代のフォロワーが急増し、大人の女性が満足できる商品へのニーズを高めることとなった[2][3][4]。
こうした大人向けリカちゃんへのニーズの高まりに応えるべく投入された新シリーズが「リカビジューシリーズ」であった。同シリーズ発売時のプレスリリースでは「リカちゃんブランドを支える大きな柱として力を入れて育てていく」と、タカラトミーが同シリーズに込めていた期待が述べられている[2]。
「リカビジューシリーズ」は、髪の長さや髪色など豊富なバリエーションを揃えたヘアスタイル[3]、ファッショントレンドを意識したリアルクローズの衣装[3]、贈り物や箱のまま飾るにも適した高級感あるパッケージデザイン[2]の3点を重視して開発された[2]。第1弾ではドール4体のみの発売であったが、着せ替え用のドレスセットも発売予定と発表され、第2弾からはドレスセットも展開された。また従来のリカちゃんはロングヘアが主流であったが、同シリーズではボブカットがラインナップされている[2][3](第1弾「スノードロップ」、第4弾「ミルキーベレー」)。また第4弾「ミルキーベレー」には眼鏡が付属する。
2016年6月18日の発売に先駆け、同年6月9日から開催される「東京おもちゃショー2016」のタカラトミーブースで「リカビジューシリーズ」が展示された[4]。
なお「リカビジューシリーズ」の発売に先立ち、2016年3月にアメリカの女性シンガー・アリアナ・グランデの日本版ミュージックビデオ『フォーカス』に、「リカビジューシリーズ」第1弾のドール「ルミナスピンク」が出演した[1][4]。ドールの衣装や髪色、メイクなどもアリアナに似せてダンスも披露した[16]。リカちゃんが海外アーティストとコラボレーションするのはこれが初の試みである[17][18]。
販売終了
2018年8月4日に発売された第5弾をもって発売は終了し、その後は「リカビジューシリーズ」としての商品は発売されていない。
その後、2020年より大人向けの「リアルクローズ」をテーマにしたリカちゃんの新シリーズとして「リアルコーディネートスタイル」が展開された。ピンク基調の外箱デザインは「リカビジューシリーズ」を踏襲している。この「リアルコーディネートスタイル」が事実上の後継シリーズとなるが、「リカビジューシリーズ」より価格を抑えて買いやすくしている。コストダウンのため「リカビジューシリーズ」より付属品を減らして外箱が小さくなった。共通の商品コンセプトや外箱デザインから、消費者からは「リアルコーディネートスタイル」も「リカビジューシリーズ」と同一視されることが多い。
この「リアルコーディネートスタイル」も2021年までの短期間の展開に終わり、2022年以降は「リアルコーディネートスタイル」としての商品は発売されていない。ただしすでに廃番商品となり、未開封品にはプレミア価格が付いている「リカビジューシリーズ」と異なり、「リアルコーディネートスタイル」の商品の中にはメーカー在庫があり新品購入可能なものもある(2022年10月現在)[19][20]。
ラインナップ
大人向けシリーズであるが、いずれも対象年齢は3歳以上とされている。
リカビジューシリーズ
ドール
ドールにはいずれも専用スタンドが付属する。ポーズを付けやすいよう片足のみ押さえるタイプのスタンドで、通常版リカちゃんの両足をはめ込むスタンドとは形状が異なる。
- 第1弾
- 2016年6月18日発売。希望小売価格 5,478円(税込)。
- 第2弾
- 2016年11月12日発売。希望小売価格 5,478円(税込)。
- 第3弾
- 2017年6月17日発売。希望小売価格 5,478円(税込)。
- 第4弾
- 2017年11月11日発売。希望小売価格 5,478円(税込)。
- 第5弾
- 2018年8月4日発売。希望小売価格 4,378円(税込)。
- LD-17 リカビジュー ライダースキュート[31]
- 第5弾のドールは価格が値下げされ、通常版リカちゃんのドールと同様に「LD-」の品番が付いた(ドール・ドレスとも番号は17)。
- 従来の「リカビジューシリーズ」とは異なるヘッドを使用し、顔がやや大きくなっている。また顔のプリントも大幅に変更されたため、従来品とは表情がかなり異なる。
ドレス
着せ替え用ドレスのみの商品。ドールは付属しない。
- 第1弾
- 2016年6月18日の第1弾リリース時には発売なし。
- 第2弾
- 2016年11月12日発売。希望小売価格 3,278円(税込)。
- 第3弾
- 2017年6月17日発売。希望小売価格 3,278円(税込)。
- 第4弾
- 2017年11月11日発売。希望小売価格 3,278円(税込)。
- 第5弾
- 2018年8月4日発売。希望小売価格 2,750円(税込)。
- LW-17 リカビジュードレスセット ストリートウォーク[38]
- 第5弾のドレスセットは価格が値下げされ、通常版リカちゃんのドレスセットと同様に「LW-」の品番が付いた(ドール・ドレスとも番号は17)。
リアルコーディネートスタイル
後継シリーズ「リアルコーディネートスタイル」のラインナップは以下のとおり(2022年7月現在)。
「リカビジューシリーズ」第1弾 - 第4弾のドールとは、顔のプリントが違うため表情が異なる(第5弾「ライダースキュート」とも異なる)。
脚注
- ^ a b c d リカビジューシリーズ誕生 アリアナ・グランデさんのMVに出演中 タカラトミー、2016年6月15日、2022年7月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 待望の「リカちゃん」新シリーズ誕生!「リカビジューシリーズ」6月新発売のご案内(タカラトミープレスリリース) プレスリリース/ニュースリリース配信の共同通信PRWire、2016年5月13日、2022年7月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i アラフィフ「リカちゃん」に"大人も楽しめる"新シリーズ「リカビジューシリーズ」誕生 J-CASTニュース - トレンド、2016年05月17日、2022年7月19日閲覧。
- ^ a b c d 大人も満足できる“大人っぽいリカちゃん”新シリーズ「Licca Bijou Series」、タカラトミーから6月発売 ネタとぴ、インプレス、2016年5月13日、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカちゃん プロフィール タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ 株式会社トミーと株式会社タカラの合併による新会社「株式会社タカラトミー」の基本方針に関するお知らせ 株式会社タカラ、株式会社トミー、2005年(平成17年)8月24日、2022年7月19日閲覧。
- ^ トミーとタカラ、来年3月に合併 ITmediaニュース、2005年5月13日、2022年7月19日閲覧。
- ^ 「数時間前までもめていた」──タカラトミー、スピード交渉の舞台裏 ITmediaニュース、2005年5月13日、2022年7月19日閲覧。
- ^ タカラトミー通販サイト トイホビーマーケット[リンク切れ]
- ^ VERYコラボ コーディネートリカちゃん リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LD-16 VERYコラボ コーディネートリカちゃん リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LW-20 VERYコラボ コーディネートドレスセット リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LD-16 VERYコラボ コーディネートリカちゃん リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LW-20 VERYコラボ コーディネートドレスセット リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LiccA スタイリッシュドールコレクション タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ “アリアナ・グランデ×リカちゃん「フォーカス」ミュージック・ビデオ”. UNIVERSAL MUSIC JAPAN公式YouTubeチャンネル (2016年3月22日). 2016年3月22日閲覧。
- ^ “奇跡のコラボレーションが実現!!「アリアナ・グランデ × リカちゃん」ヒット・シングル「フォーカス」の日本版MV完成!リカちゃんが海外アーティストのMVに出演するのは初!!”. ユニバーサルミュージックジャパン. 2016年3月24日閲覧。
- ^ “アリアナ・グランデのアルバム『デンジャラス・ウーマン』収録のMVにリカちゃんが出演!”. ファッションプレス (2016年3月22日). 2016年3月22日閲覧。
- ^ リカちゃん LD-17 ムートンミックス タカラトミーモール、2022年10月16日閲覧。
- ^ リカちゃん LW-17 フィールザウィンド タカラトミーモール、2022年10月16日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ルミナスピンク リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ スパークルアイズ リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ シャイニータイム リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ スノードロップ リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ キャンディデート リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ キャンディデート リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ピンキーパーティ リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ダズリンダーリン リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ミルキーベレー リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ スウィートトーク リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LD-17 リカビジュー ライダースキュート リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ドレスセット ビビッドシャンデリア リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ドレスセット メルティハート リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ドレスセット サンシャインピクニック リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ドレスセット ブライトアヴェニュー リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ドレスセット トレンチウィンク リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ リカビジューシリーズ ドレスセット シャイニーデート リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LW-17 リカビジュードレスセット ストリートウォーク リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LD-17 ガーリー フルラージュ リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LW-17 レインボーホリデー リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LD-17 ムートンミックス リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
- ^ LW-17 フィールザウィンド リカちゃん ラインナップ、タカラトミー、2022年7月19日閲覧。
関連項目
- リカちゃん
- 琉球リカちゃん - 1998年リリース。ご当地リカちゃん第1号。
- 日枝神社の巫女リカちゃん - 2010年リリース。日枝神社限定リカちゃん。
- タカラ (玩具メーカー) / タカラトミー
- フォーカス (アリアナ・グランデの曲) - 日本版MVにドールが出演。
外部リンク
- リカビジューシリーズ誕生 - タカラトミー(リカちゃん公式サイト)
- リカちゃん ラインナップ - タカラトミー(リカちゃん公式サイト)
- Licca Bijou Series - LICCA KAYAMA OFFICIAL(リカちゃん公式サイト)
- アリアナ・グランデ×リカちゃん「フォーカス」ミュージック・ビデオ - YouTube - ユニバーサル ミュージック ジャパン公式チャンネル