マックス、モン・アムール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Doc Taxon (会話 | 投稿記録) による 2022年6月6日 (月) 05:49個人設定で未設定ならUTC)時点の版 ((GR) File:Blason ville fr Cannes (Alpes-Maritimes).svgFile:FRA Cannes COA.svg)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

マックス、モン・アムール
Max, Mon Amour
監督 大島渚
脚本 大島渚
ジャン=クロード・カリエール
製作 セルジュ・シルベルマン
出演者 シャーロット・ランプリング
アンソニー・ヒギンズ
ビクトリア・アブリル
音楽 ミシェル・ポルタル
撮影 ラウール・クタール[1]
編集 エレーヌ・プレミアニコフ
製作会社 グリニッチ・フィルム・プロダクションズ (Paris)[2]
グリニッチ・フィルムズ (U.S.A.)[2]
Films A2[2]
配給
公開
上映時間 97分
製作国 フランスの旗 フランス
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国[4]
言語 フランス語英語
テンプレートを表示

マックス、モン・アムール』(: Max, Mon Amour; : Max My Love[3])は、1986年制作のフランス恋愛映画である。 タイトルはフランス語で「愛しい人マックス」の意(正確な読みは“マックス、モナムール”)。本作は、人間の女性とチンパンジーとの恋愛を描いた異色の作品であり[5]、チンパンジーは本物とリック・ベイカーが製作したダミーが併用された。

本作の監督を務める大島渚は単身渡仏し、外国のスタッフや俳優を集めて制作した。

第39回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品[6]

あらすじ

パリイギリス大使館に勤務するピーターは妻のマーガレットと息子と幸福な生活を送っていたが、最近、マーガレットが行先不明で毎日家を空けるようになった。ピーターはマーガレットが浮気をしているのではないかと不審に思い、探偵に調査させる。

その結果、マーガレットは部屋を借り、姿を現さぬ誰かとそこで過ごしているらしいという事が分かる。部屋に踏み込んだピーターは、彼女がマックスという名のチンパンジーとともにベッドにいるのを見て驚愕する。動物園で眼と眼が合ってお互いにひかれたのだ、とマーガレットは言う。

ピーターは迷い悩んだ末、妻とマックスの関係を探るべく、自分たちの住むアパルトマンに檻のある部屋を作り、マックスと同居することを決める。

ところが、アパルトマンでのホームパーティーを開いた際に、マックスの存在がパーティーの訪問客たちに露見してしまう。

キャスト

制作

本作の企画はルイス・ブニュエルの監督作に脚本家として参加してきたジャン=クロード・カリエールのアイデアがもとになっており、ブニュエルの作品をプロデュースしてきたセルジュ・シルベルマンの提案によりスタートした[7]。 そして、大島はカリエールとともに脚本を執筆した[7]

樋口尚文が記した『大島渚のすべて』によると、初期案ではマックスが殺害される結末も考えられたが、人間とサルの関係性を描くことにこそドラマがあるという大島の判断から、最終的には採用されなかったとされている[5][8]

キャスティング

生前大島は、キャスティングに関して「一に素人、二に歌うたい、三四がなくて、五に映画スター。六七八九となくて十に新劇」という考え方を示していたとされており、たとえば『戦場のメリークリスマス』には、演技における「素人」である坂本龍一ビートたけし、「歌うたい」であるデヴィッド・ボウイが起用されている[7]。 一方、本作においては「映画スター」に相当するシャーロット・ランプリングや、ヨーロッパ映画界における「新劇」俳優たちが起用されている[7]

反響

本作の制作が発表された時点ではセンセーショナルな内容になるのではないかと期待された[7][5]。 ところが、実際に公開された際は、『愛のコリーダ』(1976年)と比べると刺激性に乏しく、当時の観客や評論家を困惑させたとされている[5][7]

ライターの松崎まことは、2020年に「洋画専門チャンネル ザ・シネマ」へ寄せたコラムの中で、彼らが戸惑った他の理由として、日本をテーマとした『愛のコリーダ』や『戦場のメリークリスマス』とは異なり、純然たるフランス映画のように見えた点を挙げている[7]

後世の反響

松崎は、本作が日本とフランスにおいて大ヒットしたという話は聞いたことがないとしつつも、大島の意図を踏まえると、フランス映画のエスプリが感じられる本作は十分成功したのではないかとみている。 動物性愛者(ズーフィリア)を調査した『聖なるズー』で知られるノンフィクション作家の濱野ちひろは、目立たないだけで、本作のような異種愛に共感する人は相当数いると推測している[5]。 ライターの小峰健二は朝日新聞に寄せた記事の中で、印象的な場面としてマックスが自室で妻と息子とともに食事をする場面を挙げ、マックスを排除しようとする夫の方がシュールに見えたと述べている[5]。そして、小峰は大島がこの映画を通じて、当時は当たり前とされた家族観を揺さぶったと締めくくっている[5]。 中国の映画監督婁燁は、『パリ、ただよう花』の制作にあたって参考にした映画の一つとして本作を取り上げており、今見ると当時の大島の気持ちがよくわかるような気がしたとも話している[9]

脚注

  1. ^ 『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』名撮影監督が死去|シネマトゥデイ”. シネマトゥデイ. 2022年1月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j Max My Love (1986)”. IMDb (Company Credits). Amazon.com. 2021年7月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k Max My Love (1986)”. IMDb (Release Info). Amazon.com. 2021年7月7日閲覧。
  4. ^ Max My Love (1986) / Countries of origin: France - United States”. IMDb. Amazon.com. 2021年7月7日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 小峰健二 (2022年1月3日). “(覧古考新:2)恋愛と家族 「マックス、モン・アムール」 「普通」は反転する、視点ひとつで:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2022年1月3日閲覧。
  6. ^ Festival de Cannes: Max, Mon Amour”. festival-cannes.com. 2009年7月11日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g 松崎まこと (2020年5月30日). “日本映画の革命児・大島渚が、『マックス、モン・アムール』で挑戦したこと”. 洋画専門チャンネル ザ・シネマ. 2022年1月3日閲覧。
  8. ^ 樋口尚文『大島渚のすべて』キネマ旬報社、東京、2002年。ISBN 4-87376-242-1OCLC 51261263https://www.worldcat.org/oclc/51261263 [要ページ番号]
  9. ^ 5年間の映画製作禁止処分を下されたロウ・イエ監督が語る新作「パリ、ただよう花」 : 映画ニュース”. 映画.com. 2022年1月3日閲覧。

外部リンク