ファイヤーマンズキャリー

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ファイヤーマンズキャリーを実演するアメリカ陸軍の兵士
担ぎ上げる手順

ファイヤーマンズキャリー (fireman's carry)は、人を担ぎ上げて運ぶための技術、あるいは格闘技における技の一種である。

自衛隊では「消防夫搬送」と呼ばれている。

概要

搬送要領AからE 搬送方法FからJ
搬送要領AからE
搬送方法FからJ

うつぶせまたは正対した相手の腋の下から自分の首を差し入れた後、肩の上に相手を担ぎ上げる。火災現場で消防士が怪我人を運び出すために使われることからこの名がついた。

この技術は全身の筋肉の中で最も強い筋肉である大腿四頭筋を使って相手を肩に担ぎ上げるため、比較的軽く持ち上げ、速く退避することが出来る。反面、実際の火災現場では高熱や有毒な煙が充満した高い場所に怪我人を晒してしまう運び方であるため、使用の場は限られる。軍隊ライフセービングの現場でも使用される。

アマチュアレスリングプロレスでは上記の体勢から相手を投げる技(飛行機投げ)や、相手の体を傾けて両肩をつけホールドする技(ファイヤーマンズキャリー・ホールド)として使用されるほか、見栄えの良さからこの体勢から多くの派生技が開発されている。柔道の肩車とほぼ同形。

プロレスにおける派生技

ボブ・ホーリーをファイヤーマンズキャリーに捕らえるケン・アンダーソン
エアプレーン・スピン
ファイヤーマンズキャリーの体勢から自らが横に何度も回転し、相手の目を回し三半規管にダメージを与える技。かつてはごく普通に見られた技で、1950年代にはルー・テーズフィニッシュ・ホールドにもしていた。主な使い手はアニマル浜口マッハ文朱など。また全盛時のジャイアント馬場もつなぎ技として使っていたが、近年の使い手は太田一平ジュース・ロビンソンなど。「飛行機投げ」の和名はここから。
バックフリップ
ファイヤーマンズキャリーの体勢から後ろに倒れ込む。アブドーラ・ザ・ブッチャーアニマル浜口マイク・ロトンドらが得意とした。「サモアン・ドロップ」の別名があり、サモア系のレスラー(ワイルド・サモアンズヨコズナリキシザ・ロックウマガなど)の得意技としても知られる。ジョージ・ゴーディエンコアントニオ猪木が使っていたブロックバスターは厳密には別の技。
デスバレーボム
ファイヤーマンズキャリーから相手を脳天から垂直に落とす技。三田英津子が師である北斗晶ノーザンライトボムに触発され開発した技。ジョン・シナは「アティチュード・アジャストメント(A.A)」の名称で使用しているが、現在はボディスラムに近い落とし方になっている。
リバース・デスバレーボム(クルーアル・インテンションズ、プロフェシー、ウィドウ・メーカー
デスバレーボムとは逆に相手の足側から回転させてパワースラムのように自分の体を浴びせながら落とす技。ショーン・オヘアの得意技。
カナディアン・ロッキー・バスター
ファイヤーマンズキャリーの体勢で相手を担ぎ上げ、助走をつけ前方に回転して相手をマットに叩きつける技。オリジナルはイギリス人プロレスラーの初代ケンドー・ナガサキことピーター・ソーンリーが考案した「カミカゼ・クラッシュ[1]。日本ではカナダ出身のダニー・クロファットの得意技として「カナディアン・ロッキー・バスター」と呼ばれたが、もともとクロファットも本国のカナダでは「カミカゼ」の名で使用しており、カナダ遠征時にクロファットのカミカゼを見たリッキー・フジも帰国後に同じ技名で用いるようになった[1]ケン・アンダーソンは「グリーンベイ・プランジ」の名称で使用。
ウェイストランド
WWEで活躍するウェイド・バレットの、初期の必殺技。ファイヤーマンズキャリーの体勢から、相手の片手片足を掴みながら、勢いよく前方に叩きつける。上記カナディアン・ロッキー・バスターの投げ捨て式。
ハワイアン・スマッシャー
ファイヤーマンズキャリーの体勢からダイヤモンド・カッターに移行する技。太陽ケアが代表的な使い手である。オリジナルはマーク・メロの「TKO」(太陽ケアも同名の技を使用するが、別の技となる。後述のハリケーンドライバーを参照)。泉田純至は「不入ドム」として使用している。
ハリケーンドライバー
ファイヤーマンズキャリーから相手を横方向に旋回させてみちのくドライバーIIの形で落とす技。南条隼人が開発。太陽ケアは「太陽ケア・オリジナル(TKO)」、中邑真輔は「ランド・スライド」、ミラクルマンは「ミラクル・ツイスター」の名称で使用している。
F5
ファイヤーマンズキャリーから相手を横方向に旋回させてフェイスバスター(顔面から相手をマットへ落とす)の形で落とす技。ブロック・レスナーの得意技。WWE退団後は商標の関係で「バーディクト」の名称で使用している。
ライトニング・スパイラル
ファイヤーマンズキャリーで担ぎあげ、持ち上げないまま自らの体ごと横方向に回転させ、脳天から叩きつける技。吉野正人の得意技。
GTS
ファイヤーマンズキャリーの体勢から相手を上に放り投げ、落ちて来るところを顎に膝蹴りを食らわせる。CMパンクヒデオ・イタミの日本での(KENTA時代の)得意技。
一騎当千
KAGETORA(ジミー・カゲトラ)の得意技。ファイヤーマンズキャリーの体勢から、三沢光晴の得意技エメラルド・フロウジョンの形でマットに叩きつける。三沢自身も、変形のエメラルド・フロウジョンの一種(旋回式)がこの形になる。
牛殺し
後藤洋央紀がフィニッシュホールドの昇天・改に繋ぐ際に使用する得意技の一つ。相手をファイヤーマンズキャリーの体勢から相手の首を軸にして肩の上で仰向けに回転させると同時に片膝立ちの状態になって落下する相手の後頭部に膝を食らわせる。名前の由来は、後藤が猛牛のニックネームを持つ天山広吉をこの技で病院送りにし、1年9ヶ月にわたる長期欠場に追い込んだことから。
ベナドリラー
ファイヤーマンズキュリーの体勢から相手をおろした瞬間に右ハイキックを放つ技。リコシェのフィニッシュ技。

脚注

  1. ^ a b 『Gスピリッツ Vol.29』P88-89(2013年、辰巳出版ISBN 4777812359

関連項目