ケルベロス
ケルベロス(ギリシア語: Κέρβερος)は、ギリシア神話における冥界の番犬。ローマ神話ではケルベルス(ラテン語: Cerberus、英語読みではサーベラス)という。その名は「底無し穴の霊」を意味する[1]。
ヘーシオドスの『神統記』によれば、50の首と青銅の声を持つ怪物で、テューポーンとエキドナの息子とされている。
しかし、一般的には(特に絵画・彫刻などにおいては)3つ首で、竜の尾と蛇の鬣を持つ巨大な犬や獅子の姿で描かれる。死者の魂が冥界にやってくる時には友好的だが、冥界から逃げ出そうとする亡者は捕らえて貪り食うという。これが地獄の番犬といわれる由来である。
また、この獣の唾液から猛毒植物であるトリカブトが発生したとされており、ヘーラクレースによって地上に引きずり出された際、太陽の光に驚いて吠えた際に飛んだ唾液から生まれたと言われている。ハーデースの忠犬といわれる。また、2つ首の頭を持つオルトロスは、ケルベロスの弟にあたる。
ソロモン72柱の魔神の1柱、ナベリウスと同一視されることもある。
3つの頭が交代で眠るが、音楽を聴くと全ての頭が眠ってしまう。ギリシア神話では、竪琴の名手オルペウスが死んだ恋人エウリュディケーを追って冥界まで行く話があるが、ケルベロスはオルペウスの竪琴によって眠らされている。
また、甘いものが好きで蜂蜜と芥子(小麦とも)の粉を練って焼いた菓子を与えればそれを食べている間に目の前を通過することが出来る。アイネイアースを連れたクーマイのシビュレーや、ペルセポネーに美を分けて貰いに行ったプシューケーはこの方法でケルベロスをやり過ごした。その後この菓子はカローンへの渡し賃にもなっている。ただし、プシューケーがこの時カローンに渡したのはオボロス銅貨で、ケルベロスに食べさせたのは堅パンで、シビュレーが食べさせたのは睡眠薬入りの酒に浸したパン(ソップ)だともいわれる。そして、後にこのことから厄介な相手を懐柔する賄賂の意で「ケルベロスに与えるソップ」という言葉が生まれた。
ダンテの『神曲』「地獄篇」にも登場し、貪食者の地獄において罪人を引き裂いていた。
脚注・出典
- ^ バーバラ・ウォーカー著 『神話伝承事典』より