どんと祭
どんと祭(どんとさい)は、宮城県を中心に呼ばれる祭りの呼称である。他地域で左義長やドント焼きなどと呼ばれる祭りに類似する。
概要
神社の境内などで正月飾りを焼き、御神火にあたることで一年の無病息災・家内安全を祈願する祭。特に宮城県内各地の神社で盛んに行われており、仙台市の大崎八幡宮の「松焚祭」(まつたきまつり)が宮城県最大規模である。
宮城県の多くの地域では小正月の前日の1月14日夕方から行われるが、岩手県の盛岡八幡宮では1月15日に行われ、福島県の西根神社では「うそかえ祭」と一緒になって数日間開催される。また、宮城県石巻市では1月7日に行われる[1]。石巻の場合は、新生活運動により1970年代に前倒しが定着したものとされる[1]。松の内(門松を飾っている期間)が終わると漁が始まるため、石巻漁港(1973年(昭和48年)に特定第三種漁港に指定)を擁する同市では、新生活運動が謳う「合理的民主的な生活慣習の確立」に従って松の内を県内他地域より短縮した。
参拝者の一部は裸参りを実施している。宮城県内各地の裸参りは大崎八幡宮における裸参りとおおむね同様の装束・方式で実施しているが、同県登米市迫町・津島神社の「佐沼どんと祭裸参り」では提灯ではなく松明を持って参拝し[2]、同県角田市の「かくだどんと祭り裸参り」では鳥追い棒を持って『ヤー、ホイホイホイ』の掛け声とともに町中を練り歩き[3]、盛岡八幡宮では紙のハサミを持って特徴的な振りをしながら行進する[4]など、地域によって一部違いがある。
神社で行われるのが一般的だが、神仏混淆の中山鳥瀧不動尊[5]、あるいは、定義如来や仙台大観音などの寺でも行われており、白山神社の別当寺の立場にある陸奥国分寺では裸参りも実施される。また、岩手県奥州市江刺区では大通り公園で[6]、釜石市大渡では甲子川河川敷で[7]開催するなど、神社・寺以外での開催例もある。さらに、宮城県登米市では石越総合運動公園で「石越どんと祭冬の花火大会」が実施されており[2]、イベント性が高い。
神社 | 所在地 | どんと祭参拝客数 (万人) |
(初詣参拝客数) (万人) |
---|---|---|---|
大崎八幡宮 | 仙台市青葉区 | 10.0 | 9.3 |
竹駒神社 | 岩沼市 | 8.0 | 39.1 |
仙台東照宮 | 仙台市青葉区 | 6.0 | 7.9 |
賀茂神社 | 仙台市泉区 | 3.0 | |
鹽竈神社 | 塩竈市 | 2.0 | 41.0 |
愛宕神社 | 仙台市太白区 | 0.5 | |
宮城縣護國神社 | 仙台市青葉区 | 6.7 |
松焚祭
仙台市都心部北側の北山丘陵西部にある大崎八幡宮で行われる年中行事で、300年の歴史があるとされ、2005年(平成17年)に仙台市の無形民俗文化財に指定された[8]。市内各地から当社を目指して歩く、裸参りが特に有名である。
例年約10万人の人出で賑わい、神社前の国道48号と接続道路は交通規制がなされ、バスやタクシー以外の進入が出来なくなる。また、市内各地から、参拝用のバスの特別運行がなされる(仙台市電があった頃は市電の特別運行もあった)。
以前は20万人程度の人出があったとされるが、仙台都市圏の拡大や郊外居住者の増大により、人ごみを嫌った参拝客が他の最寄の神社のどんと祭に流れるようになったこと、また、成人の日が1月15日ではなくなった(ハッピーマンデー制度導入で、その年の1月8日から14日までのうち月曜日に該当する日に変更された)ことにより、その前夜のお祭りの意味もあったどんと祭に参拝しづらくなったことなどが原因となり、大崎八幡宮への参拝客は減ってきた。
裸参り
仙台藩内に来て日本酒の醸造をしていた南部杜氏が、醸造安全・吟醸祈願のために参拝したのが始まりとされる。
白鉢巻・白さらしを巻き、白足袋・わらじの装束に身を包み、氷水で水垢離をした後、神に息かけないためとして「含み紙」と呼ばれる紙を口にくわえたまま、右手には鐘を、左手に提灯を持って徒歩で参拝し、御神火を渡り、火にあたる。
低温の中での裸参りは健康を害する可能性があるため、参加団体では裸参り前に健康診断を行う例も見られる。また、女性は1枚羽織ることが許されている。暖かい国から来た外国人留学生の場合も、服装の規定はゆるい。
例年100団体前後(計2500人程度)が参加しており、仙台市内各地から徒歩で数時間かけて参拝する団体も多い。そのため、14日の午後は、一番町や中央通りなどの中心部商店街を歩いている裸参りの列を多数目撃する。
脚注
関連項目
外部リンク
- 大崎八幡宮 松焚祭
- 仙臺伝統裸参り保存会
- 仙台市文化財調査報告書 大崎八幡宮の松焚祭と裸祭り(仙台市教育委員会 2006年12月)