PIAT
PIAT(ピアット)は、第二次世界大戦時、イギリス軍が開発、使用した対戦車擲弾発射器である。名称は「Projector, Infantry, Anti Tank(歩兵用対戦車発射器)」の略。
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構造[編集]
アメリカのバズーカやドイツのパンツァーシュレック、パンツァーファウスト等といった同時代の携帯式対戦車兵器が、閉鎖されていないパイプに弾体を押し込み後方噴流を逃がす仕組みになっている[1]のに対し、PIATでは薬室後方が閉鎖され、そこに撃針のついた底板と約90kgの反発力を持つバネが配置されている。発射時にはあらかじめ圧縮されていた(後述)バネが解放されて撃針のついた底板が前進し、弾体底部のごく少量の発射薬を発火させ、弾体を飛翔させる。底板とバネは発射薬の反作用で後退するので、第2弾以降は手動によるコッキングは不要となる。 この構造により、ロケットランチャーや無反動砲と異なり、閉鎖空間や後方に空きが無い個所からでも安全に発射が可能となっている。
発射筒外部には肩当て、引き金、照準、単脚が付いている。発射器の材質にはそれほど上等なものは使われなかったが、各部は頑丈に出来ていた。
筒内で砲弾は固定されないため、下方を狙うと砲弾が滑り落ちてしまう構造上の欠点があった。また、設計上は火薬の圧力でバネが再び縮められ発射位置まで後退することになっているが、実際にはほとんど戻ることがなく、戦闘中に手で再度コッキングする必要があったと言われている。よって、勲章を貰えるくらい優秀な兵士にしか扱えなかったとも言われている。
対戦車戦闘時の射程距離は約100m、建築物などに対する曲射の場合は約350mで、使用される成形炸薬弾は100mmの装甲板を貫徹する能力を持っていた。
使用手順[編集]
- PIATを地面に垂直に立て、内部のスクリュー軸にはめられたバネを、肩当てを両足で踏みながら単脚を手がかりに本体を5回転半回して押し込み、発射位置にコッキングする。小柄な兵士だとコッキングに失敗した際、バネ力により跳ね上がった発射筒で顔を打つ恐れがあったため、「身長168cm以下の兵士は注意するように」と促されていた。
- 照準器を引き起こす。照準器は70ヤード(約64m)、100ヤード(約91m)のどちらか望む方に設定できる。
- 開放されている発射筒前上方から対戦車擲弾を装填する。
- 敵戦車を照準設定距離まで引き付け、引き金を引いて発射する。引き金は大型で指4本を使う必要があるほど重い。
沿革[編集]
戦前にイギリス陸軍のスチュワート・ブラッカー中佐が発明し、これに合わせた成型炸薬弾と共に1940年に軍に提出していたものだが、この時は粗雑な兵器であるとして採用されなかった。後にブラッカー中佐が秘密兵器の開発を担当する機関であるMD1にこの兵器を持ち込むと、改良を加えられPIATとして採用されることとなった。
英軍兵士の間では装填時の苦労や射程の短さや下方を狙うと砲弾がずり落ちる欠点、放物線を描く弾道による命中率の悪さもあってPIATの評判は芳しくなかったが、敵戦車に効果のある唯一の携帯兵器として広く使用された。実戦ではティーガー戦車の側面を撃ちぬいて搭載弾薬を誘爆させ撃破した例もある。
またワルシャワ蜂起の際、レジスタンスに対し輸送機から補給物資として投下され使われている。後継にバズーカや無反動砲が配備されると次第に置き換えられていき、1950年に退役した。
諸元[編集]
- 口径:76mm
- 全長:99.04cm
- 重量:14.4kg
- 砲身長:86.4cm
- 弾体長:38.1cm
- 弾体重量:1.35kg
- 対戦車有効射程:90m
- 最大射程:685m
- 使用弾種:対戦車成型炸薬弾、破片榴弾、煙幕弾など
脚注[編集]