豚もおだてりゃ木に登る

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豚もおだてりゃ木に登る(ぶたもおだてりゃきにのぼる)とは、日本語のことわざの一つであり、普段は無能な者でも、おだててその気にさせると期待以上の成果を出すことがあるという譬え(たとえ)である[1][2][3]。これとは別に、不可能なことの譬えとして「豚の木登り」ということわざもある[4]

沿革[編集]

これ以前の用例があるか詳らかではないが、昭和20年代から30年代(1945年 - 1964年)には福島県会津地方で使用されていた[2]1997年の『動植物ことわざ辞典』には掲載されている[5]。ただし、2000年の『岩波ことわざ辞典』には、「ことわざとしての市民権を得ていない」旨の記述がある[4]。より新しい事典(辞典)[6][7][8]にはそのような注釈は見られない。

1977年 - 1979年に放送されたテレビアニメ『ヤッターマン』の第60話以降に登場したドロンボーのコクピットメカの一つ「おだてブタ」が放った台詞がきっかけで爆発的に普及する。初めは流行語の一種として、やがて一般的な日本語の語句として定着し、本のタイトルや造形芸術のテーマにもなる[1]2016年(平成28年)、会津若松市出身の笹川ひろしタツノコプロ顧問=当時)は、朝日新聞の取材に対し、「ヤッターマン発祥だと勘違いされるのですが、会津でどこかのおじさんが話していた慣用句」だと答えている[9]

出典[編集]

  1. ^ a b 時田 2009, p. 611.
  2. ^ a b 北村 2012, p. 1204.
  3. ^ 日本国語大辞典 2000k, p. 883.
  4. ^ a b 時田 2000, p. 529.
  5. ^ 高橋 1997, p. 195.
  6. ^ 大辞泉 2012, p. 3169.
  7. ^ 三省堂 2016, p. 582.
  8. ^ 新村 2018, p. 2562.
  9. ^ 江戸川 2016.

参考文献[編集]

  • 時田昌瑞『図説ことわざ事典』東京書籍、2009年9月8日。ISBN 978-4-487-79954-1。"その気にさせると普段ではできないこともできてしまうという譬え"。 
  • 北村孝一 編『故事俗信ことわざ大辞典』(第二版)小学館、2012年2月25日。ISBN 978-4-09-501102-8。"とりたてて能力のない者でも、まわりからちやほやされると思いもよらないことをやってのける"。 
  • 時田昌瑞『岩波ことわざ辞典』岩波書店、2000年11月15日。ISBN 978-4-00-080099-0 
  • 高橋秀治 編『動植物ことわざ辞典』東京堂出版、1997年9月30日。ISBN 4-490-10468-5 
  • 『新明解故事ことわざ辞典』(第二版)三省堂、2016年5月1日。ISBN 978-4-385-13988-3 
  • 新村出 編『広辞苑第七版 机上版 た―ん』岩波書店、2018年1月12日。ISBN 978-4-00-080132-4 
  • 小学館大辞泉編集部 編『大辞泉【第二版】下巻 せ―ん』松村明(監修)、小学館、2012年11月7日。ISBN 978-4-09-501213-1 
  • 日本国語大辞典 第二版 編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編『日本国語大辞典 第二版』 第十一巻、小学館、2000年。ISBN 4-09-521011-7 
  • 江戸川夏樹 (2016年3月26日). “会津若松市の転車台”. 朝日新聞デジタル. 株式会社朝日新聞社. 2021年9月22日閲覧。

外部リンク[編集]