腰辨頑張れ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
腰辨頑張れ
Flunky, Work Hard
本篇タイトル。
監督 成瀬巳喜男
脚本 成瀬巳喜男
原作 成瀬巳喜男
出演者 山口勇
浪花友子
加藤精一
撮影 三浦光男
製作会社 松竹蒲田撮影所
配給 日本の旗 松竹キネマ
イタリアの旗 ポルデノーネ無声映画祭
公開 日本の旗 1931年8月8日
イタリアの旗 2001年10月13日
上映時間 38分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
テンプレートを表示

腰辨頑張れ』(こしべんがんばれ)は、1931年(昭和6年)製作・公開、成瀬巳喜男監督による日本の短篇劇映画サイレント映画である[1][2][3][4][5]。新漢字表記『腰弁頑張れ[2][3]。成瀬の監督作としては第8作、現存する最古の成瀬作品として知られる[5]

略歴・概要[編集]

映画冒頭、「腰辨」こと岡部の仕事用の洋靴は穴が開いてしまっている。
右が「腰辨」こと岡部を演じる山口勇、左は医師を演じた西村青児
父に叱られて泣いて帰る道で列車事故に遭ってしまう「腰辨」の息子・進(加藤精一)。

本作は、本作公開の前年、1930年(昭和5年)1月21日に公開された喜劇映画『チャンバラ夫婦』で監督に昇進した成瀬にとっての第8作にあたる[5][6]。同年8月8日、東京・浅草公園六区帝国館等を中心に公開された[2][3]。同時上映は、田中絹代主演による、映画プロデューサー城戸四郎唯一の監督作、7巻の長篇映画『ルンペンとその娘』であった[7][8]。本作は好評を得ることができ、城戸四郎からの評価も高かった[6][9]。本作の評価は、本作公開の翌週、同年8月15日に公開された小津安二郎監督の『東京の合唱』と並んで「特筆に値する佳作」と、『松竹七十年史』にも記されているほど高かった[10]池田義臣門下で助監督を務めていた成瀬は、後輩にあたる小津安二郎や五所平之助が先に監督に昇進し、忸怩たるものがあり、かつ昇進初年度の作品は、翌年の本作を含めていずれも「小市民もの」であり、当時、どうしても小津との比較がつきまとったという[6][9]

タイトルにある「腰弁」とは、「腰弁当」の略であり、江戸時代において、下級の武士が袴の腰に弁当を結びつけて出勤していたことから、小役人や地位の低い勤め人、安サラリーマンを指す語である[11][12]。したがって「腰弁」とは、映画の冒頭で、底に穴の開いた靴を修理に出すことも新調することも経済的に許されず、新聞紙を詰めて自力で当座の修理をする姿で登場する、本作の主人公である山口勇演じるところの保険勧誘員・岡部[5][13]を表した語である。映画史家の山本喜久男は、この冒頭での貧困の表現について、斎藤寅次郎の喜劇作品との類似を指摘する[13]

本作の技術的側面でいえば、主人公の脳裏にフラッシュバックする息子とのやりとりの場面等で、幾何学的に画面を分割し、過剰なモンタージュが使用されている[5]。撮影は「三浦賞」に名を残す三浦光男(三浦光雄)が務めている[2][3][4]。作品冒頭のクレジットには「原作・監督 成瀬巳喜男」とされているが[2][3][4]、脚本も成瀬が書いている[14]。のちの記録映画作家・秋元憲は、当時、同撮影所で劇映画の助監督を務めており、島津保次郎監督の『上陸第一歩』(1932年)、野村芳亭監督の『島の娘』(1933年)のほか、本作も担当している[15]

2013年(平成25年)1月現在、東京国立近代美術館フィルムセンターは、38分完全尺の35mmフィルム2種および16mmフィルムの合計3種類の上映用ポジプリントを所蔵している[3][4][16]。同プリントは、2001年(平成13年)10月13日 - 同月20日、イタリアサチーレで開かれた第20回ポルデノーネ無声映画祭で上映された[17]マツダ映画社は、本作の上映用プリントを所蔵していない[18]

ビデオグラムについては、2011年(平成23年)3月22日に米国のクライテリオン・コレクション英語版が、エクリプス・シリーズ英語版第26巻として発売したDVDボックス『サイレント・ナルセ』に収録された[1]。『サイレント・ナルセ』には、ほかに松竹蒲田時代の作品『生さぬ仲』(1932年)、『君と別れて』『夜ごとの夢』(1933年)、『限りなき舗道』(1934年)が収録されている。

スタッフ・作品データ[編集]

キャスト[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b Flunky, Work Hard!, インターネット・ムービー・データベース (英語)、2013年1月31日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 腰弁頑張れ日本映画データベース、2013年1月31日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h 腰弁頑張れ、日本映画情報システム、文化庁、2013年1月31日閲覧。
  4. ^ a b c d e f 腰辨頑張れ東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月31日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 生誕百年特集 映画監督 成瀬巳喜男、東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月31日閲覧。
  6. ^ a b c 佐藤[2007], p.448.
  7. ^ ルンペンとその娘、日本映画データベース、2013年1月31日閲覧。
  8. ^ 城戸四郎 - 日本映画データベース、2013年1月31日閲覧。
  9. ^ a b 蓮實山根[2005], p.170-172.
  10. ^ 松竹[1964], p.270.
  11. ^ デジタル大辞泉『腰弁』 - コトバンク、2013年1月31日閲覧。
  12. ^ デジタル大辞泉『腰弁当』 - コトバンク、2013年1月31日閲覧。
  13. ^ a b 山本[1983], p.355.
  14. ^ a b 石割ほか[2005], p.36.
  15. ^ a b キネマ旬報[1976], p.9.
  16. ^ 所蔵映画フィルム検索システム東京国立近代美術館フィルムセンター、2013年1月31日閲覧。
  17. ^ a b c d e KOSHIBEN GANBARE, ポルデノーネ無声映画祭 (イタリア語)、2013年1月31日閲覧。
  18. ^ 主な所蔵リスト 劇映画 邦画篇マツダ映画社、2013年1月31日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]