福島送電

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福島送電株式会社
Fukushima Power Transmission Co., Ltd.
種類 株式会社
市場情報 非上場
略称 FPT
本社所在地 日本の旗 日本
960-8043
福島県福島市中町4番20号
みんゆうビル402
設立 2017年3月15日
業種 電気・ガス業
法人番号 2380003003720
事業内容 阿武隈山地及び福島県沿岸部における送電線・変電所等の設計、建設及び運営等
代表者 代表取締役 佐々 惠一
資本金 1,300万円
主要株主 福島発電株式会社 39.23%
東京電力ホールディングス株式会社 37.69%
株式会社東邦銀行 11.54%
福島商事株式会社 11.54%
外部リンク https://www.fukushimasouden.jp/
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福島送電株式会社(ふくしまそうでん)は、福島県内で送電線を建設・運用する送電事業者

事業内容[編集]

福島県の阿武隈山地浜通りに送電線、変電所などを建設し、地域に立地する太陽光発電所・風力発電所から電気を集めて東京電力パワーグリッドの設備まで送り届ける事業を営む。2020年1月、合計44 kmの送電線の運用を開始した[1]。総延長80 kmの送電線を計画している[1]

歴史[編集]

1911年(明治44年)、猪苗代湖の水で発電し、東京に送電することを目的に、猪苗代水力電気株式会社が設立さた[2]。同社は、猪苗代第一発電所(現在は東京電力リニューアブルパワーの所有)と同所から田端変電所(当時、東京府北豊島郡尾久村、現在の東京都荒川区)に至る約225 kmの送電線を完成させ、1914年(大正3年)、東京への送電を開始した[2]。これが福島県から首都圏に送電した最初の事例であり、以来1世紀にわたり、福島県は首都圏の繁栄を電力供給により支え続けてきた。

第二次世界大戦中の電力国家管理のもとで、猪苗代湖周辺の水力発電所は日本発送電の所有となった。1951年(昭和26年)、日本発送電は解体され、九電力会社に再編された。このとき、福島県は東北電力の供給区域となり、福島県内の設備は東北電力が所有することになったが、猪苗代湖周辺の水力発電所と送電設備は東京電力が所有し、引き続き首都圏への電力供給を担うことになった。

そして、大戦後の急速な経済成長、電力需要の急増に応じ、火力発電や原子力発電が伸長し、水力発電の比重が低下しても、電源地帯としての福島県の地位が揺らぐことはなかった。県内には、奥只見ダム田子倉ダムなどが建設され、大規模な水力発電所が設置されたほか、勿来発電所広野火力発電所などの火力発電所や福島第一原子力発電所福島第二原子力発電所が立地した。これらの発電所で発生した電気の大部分は首都圏に送電された。結果として、首都圏の需要家が福島県で発生した豊富で低廉な電気の利益を享受する一方、発電所の地元の福島県民は東京電力より高い料金で東北電力から電気の供給を受けなければならないという矛盾を生じた。

そして、猪苗代水力電気の設立から百年目に当たる2011年(平成23年)、東北地方太平洋沖地震の震動と津波により、福島第一原発が被災し、炉心溶融・水蒸気爆発・放射能漏れ事故が発生した。事故により大気中に放出された放射性物質は、福島県内外に降下し、土壌を汚染した。大量の放射性物質が降り注いだ阿武隈山地・浜通りの広範囲に避難指示が出され、特に放射線量の高い一部の地域は、「帰還困難区域」となった[3]

福島県は、2011年8月、「福島県復興ビジョン」を策定し、その中で、「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」を復興の基本理念の一つに据え、「再生可能エネルギーの飛躍的推進による新たな社会づくり」を主要施策の一つに掲げた[4]。2012年(平成24年)に改定した「福島県再生可能エネルギービジョン」では、「県内のエネルギー需要量の100%以上に相当する量のエネルギーを再生可能エネルギーで生み出す県」を目指すという目標を掲げた[5]

経済産業省資源エネルギー庁は、福島県の復興を支援するため、平成29年度予算以降、「福島県における再生可能エネルギーの導入促進のための支援事業費補助金」をエネルギー対策特別会計から福島県に支出することになった[6]。福島県は、この補助金を原資に、毎年度、「阿武隈山地や県沿岸部において、再生可能エネルギー導入のための共用送電線を整備する事業」を行う県内企業に事業費を助成することにした。

福島送電は、この助成を受けて送電線を建設することを目的とする会社である。2016年(平成28年)10月に福島発電株式会社と東京電力ホールディングスとが共同で「福島送電準備合同会社」として設立した[7]。筆頭株主の福島発電は、福島県、県内市町村、民間企業が出資する第三セクター会社である[8]。2017年(平成29年)3月に東邦銀行が資本参加し、商号を「福島送電合同会社」に改めた[7]。福島県からの助成のほか、金融機関からの借入金[9]を原資として、県内に総延長80 kmの送電線を新設する計画を立てた[1]

2019年(平成31年)2月に経済産業省から送電事業の許可を受けた[10]。12月、株式会社組織変更し、商号を「福島送電株式会社」に改めた[11]。2020年(令和2年)1月、7か所の太陽光発電所と東京電力パワーグリッドの設備とを結ぶ合計44 kmの送電線の運用を開始した[1]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 福島送電株式会社 (2020年1月6日). “共用送電線の一部運用開始について”. 福島送電株式会社. 2021年3月20日閲覧。
  2. ^ a b 宮地英敏 (2012). “猪苗代水力電気設立の諸相 : 経営者層の転換を中心にして”. 歴史評論. 科学研究費助成事業-日本における電力業の発展と碍子産業の確立 (歴史科学評議会): 80-98. ISSN 0386-8907. NAID 120005315162. hdl:2324/27199. https://hdl.handle.net/2324/27199. 
  3. ^ 福島県. “避難指示区域の状況”. 福島県. 2021年3月20日閲覧。
  4. ^ 福島県. “福島県復興ビジョン策定 (平成25年12月)”. 福島県. 2021年3月20日閲覧。
  5. ^ 福島県. “福島県再生可能エネルギー推進ビジョン”. 福島県. 2021年3月20日閲覧。
  6. ^ 資源エネルギー庁 (2021年3月12日). “福島新エネ社会構想について”. 資源エネルギー庁. 2021年3月20日閲覧。
  7. ^ a b 福島発電株式会社ほか (2017年3月15日). “福島新エネ社会構想の実現に向けた送電網の建設・運営事業会社の設立について”. 東京電力ホールディングス株式会社. 2021年3月20日閲覧。
  8. ^ 福島発電株式会社. “沿革”. 福島発電株式会社. 2021年3月20日閲覧。
  9. ^ 株式会社日本政策投資銀行 (2019年11月11日). “福島送電合同会社による、福島県内の再生可能エネルギー導入拡大に向けた送電線事業に対し、資金面からサポート”. 株式会社日本政策投資銀行. 2021年3月20日閲覧。
  10. ^ 福島送電株式会社 (2019年2月4日). “送電事業許可の取得について”. 福島送電株式会社. 2021年3月20日閲覧。
  11. ^ 福島送電株式会社 (2019年12月9日). “福島送電合同会社の組織変更 (株式会社化) について”. 福島送電株式会社. 2021年3月20日閲覧。

外部リンク[編集]