動物裁判

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

動物裁判(どうぶつさいばん)とは、中世ヨーロッパなどにおいて行われた、人間に危害を加えるなどした動物の法的責任を問うために行われた裁判手続を指す。世俗法に基づく刑事裁判のほかにも、教会法に基づく裁判がある。

概要[編集]

西洋における史料上確認できる動物裁判は、有罪となったものだけでも合計142件記録されている。この裁判は12世紀から18世紀の時代に見られ、特に動物裁判が活発だったのは15世紀から17世紀の間。その3世紀における裁判は合計122件である。また、動物裁判が行われているのは、キリスト教世界においては、罪を犯した物は人間でも動物でも植物でも無機物であっても裁かれなければならないというキリスト教文化の土壌によるものである。動物裁判は中世の法理によるものであり、現代では成立しない。

裁判の流れはフランスであった例として原告側弁護人が被害の見積り、被告の身体的特徴を調べた請願書を裁判所に提出、司教代理判事が被告に対して大声で出廷を命じるも裁判当日に現れず、被告側弁護人は来なかったのは出廷しても発言できないからだと弁護している[1]

文献[編集]

動物を訴えるという話だけ見れば、紀元前から確認されることであり[2]、中国の代の話として、張湯の父が外出から戻ると、ネズミに肉を盗まれたことに怒り、子供だった湯を鞭打ったが、湯はネズミの穴からネズミと残った肉を見つけると、ネズミの罪を糾弾して鞭打ち、ネズミを告訴する書を作成すると、ネズミと肉を取り押さえ、訊(訊問)、鞫(きく、求刑)、論(判決)、報(上申)という手順を取った上で、最後は堂下での刑に処した[2]。これは父親の職務内容でもある裁判の物真似であったが、その文書は熟練した獄吏のようだったため、驚かれ、その能力をかわれて、長安県の吏になったという故事である[2]

聖書
出エジプト記第21章28-32節に、牛が人間を害した場合は石を投げて殺し、肉を食べてはいけないなどの処罰が書かれている[3]

判例[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 4』講談社、2003年。 
  2. ^ a b c 鶴間 2004, p. 224.
  3. ^ ウィキソース出典 出エジプト記(口語訳)#第21章』。ウィキソースより閲覧。 
  4. ^ Barton, K.: Verfluchte Kreaturen: Lichtenbergs "Proben seltsamen Aberglaubens" und die Logik der Hexen- und Insektenverfolgung im "Malleus Maleficarum", in Joost, U.; Neumann, A. (eds): Lichtenberg-Jahrbuch 2004, p. 11ff, Saarbrücken 2004 (SDV Saarländische Druckerei und Verlag), ISBN 3-930843-87-0. In German.
  5. ^ Cockchafer guide: how to identify and where to see 著:BBC Wildlife Magazine(Stuart Blackman, Richard Jones) 掲載サイト:discoverwildlife.com 参照日:2021年10月4日
  6. ^ E. V., Walter (1985). “Nature on Trial: The Case of the Rooster That Laid an Egg” (英語). Comparative Civilizations Review 10 (10). ISSN 0733-4540. https://scholarsarchive.byu.edu/ccr/vol10/iss10/7/ 2018年4月2日閲覧。. 
  7. ^ サクラ : 日本から韓国へ渡ったゾウたちの物語 著者:キムファン 出版社:学研教育出版 出版年:2007 ISBN:4052025261、9784052025266
  8. ^ 朝鮮王朝実録
  9. ^ 西洋における文明の転換…「動物権」思想とキリスト教的DNA : 国際・安全保障 : 記事・論考 : 調査研究”. 読売新聞オンライン (2022年1月6日). 2022年5月10日閲覧。

参考文献[編集]

  • 鶴間和幸『中国の歴史03 ファーストエンペラーの遺産 秦漢帝国』講談社、2004年。 

関連文献[編集]

関連項目[編集]