モグラ

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モグラ科 Talpidae
Talpa europaea MHNT.jpg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: トガリネズミ目 Soricomorpha
: モグラ科 Talpidae
(Fischer de Waldheim, 1817)

本文参照

地表近くをモグラが通過した跡の土盛り(英語ではMolehill): 千葉市加曽利貝塚にて(2008年10月13日撮影)

モグラ土竜鼠、鼠)は、トガリネズミ目モグラ科 (Talpidae) に属する哺乳類の総称である。中国語の学名では「」は齧歯目モグラネズミ(モグラネズミ属 Myospalax)を指す。

ヨーロッパアジア北アメリカに分布。

形態[編集]

モグラはずんぐりとした胴体を持つ。とがった鼻を持ち、眼は退化して小さく視力はほとんどない。また、耳も外見からは見えない。四肢は短く、前足の掌部は平たく大きくなり、鋭い爪がある。これらは地下で穴を掘って暮らすための適応と考えられる。また、前足は下ではなく横を向いているため、地上ではあまりうまく扱えない。全身が細かい毛で覆われ、鼻先だけが露出している。尾は短い棒状。

生態[編集]

モグラは地下にトンネルを掘り、その中で生活する。ただし、掘削作業は重労働であるため積極的に穴掘りを行うわけではなく、主となるのは既存のトンネルの修復や改修である。地表付近にトンネルを掘ったり、巣の外へ排出された残土が積みあがるなどの理由で、地上には土の盛り上がった場所ができる。これを「モグラ塚」という。

地中に棲むミミズ昆虫の幼虫を主な食物としている。多くの種に見られる狩猟法は、一定の範囲内に掘られたトンネルに偶然引っかかってトンネル内に落下してきた獲物を感知・採取するという方法である。そのため、モグラのトンネルは巣であるのと同時に狩猟用の罠となっている。

モグラが地上で死んでいる例が時々見られ、「太陽に当たって死んだ」とされ、モグラは日光に当たると死ぬと言われてきたが、それは誤りである。モグラは普段地中に住み、地上はめったに出てこないため「太陽に当たって死んだ」と誤解されたのだろう。実際にはモグラはしばしば昼間でも地上に現われるが、人間が気付かないだけである。死んでいるのは、仲間との争いで地上に追い出されて餓死したものと考えられる。

実際、モグラは非常な大食漢で、胃の中に12時間以上食物が無いと餓死してしまう。この特性を知らないでモグラを飼い、餌を与えきれずに死なせてしまうことが少なくない。

なお、餌が手に入らなかった場合の対策として、唾液に麻酔成分が含まれており、それによって獲物を噛んで仮死状態にして巣に貯蔵しておくという習性を持つものが存在する。

地中での生活が主であるが実は泳ぎが上手く、移動中やむなく水辺に当たった場合などは泳いで移動をする。

モグラの種類[編集]

モグラ科には12属が含まれる。主な属・種を以下に記す。

日本のモグラ[編集]

アズマモグラ(日本)

日本には4属7種のモグラ類が棲息し、さらに複数の亜種に分けられるが、分類には異説もある。7種のうち、コウベモグラを除く6種が日本固有種である。

北海道を除くほぼ全国で、都市部以外では人家周辺でも普通に「モグラ塚」が見られる。たとえば、都心の孤立した緑地である皇居でも、吹上御所にアズマモグラが棲息している。

日本のモグラ類は、“あまりモグラらしくないモグラ”であるヒミズ(日不見)類と、その他の真性モグラ類とに大別される。

ヒミズヒメヒミズは森林の落ち葉や腐食層の下で暮らすが、動きが素早く、しばしば地上にも現れる半地下生活者である。

2属5種の真性モグラ類のうち、コウベモグラ西日本に、アズマモグラは主に東日本に広く分布する。両者の生息域の境界線は中部地方にあるが、やや大型のコウベモグラが少しずつ東側に生息域を広げつつある。これは、先に大陸から移入したアズマモグラが日本全土に生息域を広げたあとに、新たに大陸から移入してきたコウベモグラが東進しているためともいわれる。

一方、アズマモグラ以前の先住者といわれるコモグラミズラモグラなどは生息域が減少し、山地などに隔離分布するようになってきており、それぞれに程度の差はあるものの、絶滅が危惧されている。

  • ヒメヒミズ属 Dymecodon
    • ヒメヒミズ D. pilirostris 【本州・四国・九州、日本固有種】
    頭胴長70-84ミリと、非常に小型。外形はモグラとトガリネズミの中間。ヒミズと競合する生息域では個体数が減少する傾向にあり、主にヒミズの進出し難い標高の高い岩礫地に棲息する。はっきりしたトンネルは掘らず、落ち葉の下などで単独で生活する。本種のみでヒメヒミズ属を構成する。
  • ヒミズ属 Urotrichus
    • ヒミズ U. talpoides 【本州・四国・九州・淡路島・小豆島・対馬・隱岐など、日本固有種】
    落ち葉や腐食層に浅いトンネルを掘り、夜間には地表も歩き回る、半地下性の生活を営む。対馬の個体群を亜種として U.t.adversus とすることもある。本種のみでヒミズ属を構成する。
  • ミズラモグラ属 Euroscaptor
    本州からしか発見されておらず、棲息数は少ない。棲息域によってヒワミズラモグラ、フジミズラモグラ、シナノミズラモグラの3亜種に分ける説もあり、これらがそれぞれ 準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト)に指定されている。
  • モグラ属 Mogera(Moguraの読み間違いで記載されている)
    • アズマモグラ M. imaizumii (Mogera wogura) 【本州(中部以北のほか、紀伊半島、広島県などに孤立小個体群)・四国(剣山・石鎚山)・小豆島・粟島(新潟県)、日本固有種】
    主に東日本に分布する日本固有種。山地に棲む小型のものがコモグラ M.i.minor として亜種とされることもある。
    • コウベモグラ M. wogura 【本州(中部以南)・対馬・種子島・屋久島・隱岐など】
    西日本に棲息する大型種で、アジア大陸にも分布。屋久島と種子島に棲息する小型のものをヤクシマモグラ M.w.kanai として亜種とする説もある。
    越後平野の個体群は、佐渡島のものよりやや大型で、エチゴモグラ M.etigo として別種とする説もあるが、サドモグラの亜種 M. t. etigo とされることが多い。農業基盤整備事業等による環境の改変のため、越後平野の主要な棲息地が大型モグラの棲息に不利な環境となり、小型種のアズマモグラが侵入するとともに、エチゴモグラは分布域を縮小しつつある。エチゴモグラは絶滅危惧IB類(EN)環境省レッドリスト)に指定されている。
    1976年採取、1991年新種認定。標本は、亜熱帯の尖閣諸島に属する約4平方キロメートルの島、魚釣島の、海岸近くの草地で捕獲されたメスの1体のみ。生息数は非常に少ないと考えられるが、1978年に魚釣島に持ち込まれたヤギの大増殖による環境破壊のために、存続が危ぶまれている。発見当初はNesoscaptor 属を作り Nesoscaptor uchidai として1属1種とされたが、現在はMogera 属に含める説が有力である。

日本以外のモグラ[編集]

ヨーロッパモグラ Talpa europaeaモグラ塚(英語はMolehill

モグラと人間[編集]

日本では、古くはモグラのことを「うころもち」(宇古呂毛知:『本草和名』)と呼んでいた。また、江戸時代あたりでは「むくらもち」もしくは「もぐらもち」と呼んでいた。なお、モグラを漢字で「土龍」と記すが、これは本来ミミズのことであり(そのことは本草綱目でも確認できる)、近世以降に漢字の誤用があり、そのまま定着してしまったと考えられる。

日本各地で小正月には、「烏追い」と並んで土龍追い(もぐらおい)・土龍送り(もぐらおくり)・ 土龍打(もぐらうち)などと呼ばれる「農作物を害するモグラを追い出し、五穀豊穣を祈る神事」が行われ、その集落の子どもたちが集まり、唄を歌いながら、を巻きつけた竹竿などで地面を叩き練り歩くものである。

有用動物としてのモグラ[編集]

  • 柔らかく、上質の光沢をもつモグラの毛皮は重宝され、20世紀に入るまで、乗馬用ズボンやコートなど、さまざまな用途に用いられてきた。
  • モグラの黒焼きは土龍霜と呼ばれ、日本でも民間薬として使われてきた。強壮作用、興奮作用、排膿作用があるとされる。『大和本草』の鼠(ウクロモチ、モグラのこと)の項に、「肉ヲ焼テ癰疽諸瘻ヲ治スト云ウ」、つまりはオデキや痔などの化膿したものを治すと、本草綱目から引用している。また、中外医薬生産中外製薬とは別)から、土龍霜を配合した「ユリアン」という夜尿症の治療薬が発売されている。


雑学[編集]

  • 処女膜はモグラと人間にしか存在しない』と言うのは、週刊明星に連載された三島由紀夫の「不道徳教育」が出典。
  • 西洋ではモグラは盲目の象徴とされる。キリスト教では神の光に盲目な、キリスト教に改宗しない者の隠喩として用いられる[要出典]。この寓意においてモグラと対置されるのは、何でも見通す眼力を有すると考えられたリンクス(オオヤマネコ)である。
  • モグラのすみかの近くには必ずある特定のキノコが生えている。これはモグラの糞を栄養源にしているキノコで、ナガエノスギタケという。そのキノコの下を掘ってみるとモグラの巣のトイレがある。つまり、モグラの巣の中にはトイレの部屋があることが、このキノコの存在で分かる。
  • モグラの名で呼ばれるもの
    • 地下道やトンネルのことを「モグラ」と揶揄することもあり、地下鉄は「モグラ電車」だと呼ばれたこともあった。他に、上越線土合駅はトンネル内にあるため「日本一のモグラ駅」、トンネルの多い新幹線は「モグラ新幹線」などとも言われている。(都営地下鉄大江戸線は、開業後の愛称名を「ゆめもぐら」と定めるべく調整が進められていた。)
    • 諜報機関では自分の諜報組織の内通者のことを「Mole(英語でモグラの意)」という(出典:CIA失敗の研究)。
  • モグラが水の中を泳ぐように常に地中をモコモコと掘りながら進み続けるというのは間違ったイメージである。実際は先祖代々、受け継がれてきた地中に張りめぐらされたトンネルを増築・改修・修理を行いながら利用を続けているというのが主な生態。
  • 上記の「もぐらうち」があるように、畑にモグラのトンネルが現れた際にトンネルと接触した農作物の根が食害を受けることがあり、「モグラにかじられた」と言われる事がある。だが、モグラは動物食であるためこれは誤りで、実際に食害しているのはモグラのトンネルを利用したネズミなどによるものである。

モグラをモチーフとした作品[編集]

モグラは童話漫画アニメ絵本テレビ番組などにおいてよくキャラクター化される。地下にトンネルを掘るその習性から、ヘルメットをかぶりシャベルドリル、ツルハシを手にしているなど、掘削作業員になぞらえたデザインをされることも多い。また、盲目なためにサングラスを着けていることも多い。

SF作品[編集]

  • ジェットモグラ - イギリスのテレビ番組『サンダーバード』に登場する架空の車両The Moleの日本での名称。地下災害の救助活動のため先端にドリルのついた車両で地下を掘り進む能力を持つ特殊車両。
  • モゲラ - 東宝特撮作品に2度登場したロボット。ドリルを主武装とし、地中を掘り進む能力を持つ。モグラ種の学名=Mogeraをそのまま使った。

画像[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ “Organization of the somatosensory cortex of the star-nosed mole.”. J Comp Neurol 351 (4): 549-67. (1995). PMID 7721983.