モグラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

?モグラ科 Talpidae

分類
界 : 動物界 Animalia
門 : 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
綱 : 哺乳綱 Mammalia
 : トガリネズミ目 Soricomorpha
 : モグラ科 Talpidae

モグラ(土竜)は、トガリネズミ目モグラ科(Talpidae)に属する哺乳類の総称である。

目次

[編集] 特徴

モグラはずんぐりとした胴体を持つ。とがった鼻を持ち、眼は退化して小さく視力はほとんどない。また、耳も外見からは見えない。四肢は短く、前足の掌部は平たく大きくなり、鋭い爪がある。これらは地下で穴を掘って暮らすための適応と考えられる。また、前足は下ではなく横を向いているため、地上ではあまりうまく扱えない。全身が細かい毛で覆われ、鼻先だけが露出している。尾は短い棒状。

ヨーロッパアジア北アメリカに生息している。地中に棲むミミズ昆虫の幼虫を主な食物としている。

[編集] 習性

地下にトンネルを掘り、その中で生活している。 モグラが地上で死んでいる例が時々見られ、「太陽に当って死んだ」とされ、モグラは日光に当ると死ぬと言われてきたが、それは誤りである。モグラは普段地中に住み、地上はめったに出てこないため「太陽に当たって死んだ」と誤解されたのだろう。実際にはモグラはしばしば昼間でも地上に現われるが、人間が気付かないだけである。死んでいるのは、仲間との争いで地上に追い出されて餓死したものと考えられる。

実際、モグラは非常な大食漢で、胃の中に12時間以上食物が無いと死ぬ。それは、トンネルを掘るという極度の重労働によって膨大な熱、つまり、体温が発生するためである。すなわち、発生した熱が体にたまって体温が上がらないようにモグラの体は熱を非常に放散しやすい構造になっている。それは逆に、必要以上の熱を体内で作り出さねばならないことにもなって、そのために大量の食物を摂取しないと生きてゆけないのである。この特性を知らないでモグラを飼い、結局えさを与えきれずに死なせてしまうことが少なくない。

[編集] 主なモグラ

モグラ科には12属が含まれる。主な属・種を以下に記す。

[編集] 日本のモグラ

日本には4属7種のモグラ類が棲息し、さらに複数の亜種に分けられるが、分類には異説もある。7種のうち、コウベモグラを除く6種が日本固有種である。

7種のうち、ヒミズとヒメヒミズは森林の落ち葉や腐食層の下で暮らすが、動きが素早く、しばしば地上にも現れる半地下生活者である。日本のモグラ類は、“あまりモグラらしくないモグラ”であるこれらヒミズ(日不見)類と、その他の真性モグラ類とに大別される。

2属5種の真性モグラ類のうち、コウベモグラは西日本に、アズマモグラは主に東日本に広く分布し、北海道を除くほぼ全国で、都市部以外では人家周辺でも普通に「モグラ塚」が見られる。たとえば、都心の孤立した緑地である皇居でも、吹上御所にアズマモグラが棲息している。一生地面から出ないイメージがあるが実は泳ぎが上手く、移動中やむなく水辺に当たった場合などは泳いで移動をする。

一方、他の3種は分布域が限られ、程度の差はあるものの、それぞれに絶滅が危惧されている。

  • Dymecodon
    • ヒメヒミズ Dymecodon pilirostris 【本州・四国・九州、日本固有種】
    頭胴長70~84ミリと、非常に小型。外形はモグラとトガリネズミの中間。ヒミズと競合し、より標高の高い山地に棲息。はっきりしたトンネルは掘らず、落ち葉の下などで単独で生活する。
  • Urotrichus
    • ヒミズ Urotrichus talpoides 【本州・四国・九州・淡路島・小豆島・対馬・隱岐など、日本固有種】
    落ち葉や腐食層に浅いトンネルを掘り、夜間には地表も歩き回る、半地下性の生活を営む。対馬の個体群を亜種として U.t.adversus とすることもある。
  • Euroscaptor
    • ミズラモグラ Euroscaptor mizura 【本州(青森県~広島県)、日本固有種】
    本州からしか発見されておらず、棲息数は少ない。棲息域によってヒワミズラモグラ、フジミズラモグラ、シナノミズラモグラの3亜種に分ける説もあり、これらがそれぞれ 準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト)に指定されている。
  • Mogera
    • アズマモグラ Mogera imaizumii (Mogera wogura) 【本州(中部以北のほか、紀伊半島、広島県などに孤立小個体群)・四国(剣山・石鎚山)・小豆島・粟島(新潟県)、日本固有種】
    主に東日本に分布する日本固有種。山地に棲む小型のものがコモグラ M.i.minor として亜種とされることもある。
    • コウベモグラ Mogera wogura 【本州(中部以南)・対馬・種子島・屋久島・隱岐など】
    西日本に棲息する大型種で、アジア大陸にも分布。屋久島と種子島に棲息する小型のものをヤクシマモグラ M.w.kanai として亜種とする説もある。
    • サドモグラ Mogera tokudae 【本州(越後平野)・佐渡島、日本固有種】
    越後平野の個体群は、佐渡島のものよりやや大型で、エチゴモグラ M.etigo として別種とする説もあるが、サドモグラの亜種 M.t.etigo とされることが多い。農業基盤整備事業等による環境の改変のため、越後平野の主要な棲息地が大型モグラの棲息に不利な環境となり、小型種のアズマモグラが侵入するとともに、エチゴモグラは分布域を縮小しつつある。エチゴモグラは絶滅危惧II類(VU)環境省レッドリスト)に指定されている。
  • Nesoscaptor
    1属1種。1976年採取、1991年新種認定。標本は、亜熱帯の尖閣諸島に属する約4平方キロメートルの島、魚釣島の、海岸近くの草地で捕獲されたメスの1体のみ。生息数は非常に少ないと考えられるが、1978年に魚釣島に持ち込まれたヤギの大増殖による環境破壊のために、存続が危ぶまれている。

[編集] 日本以外のモグラ

  • Condylura
    • ホシバナモグラ C.cristata
    (英名 star-nosed mole) 北アメリカに生息。鼻の先端に左右あわせ22本の突起が放射状に配置している。大脳新皮質の一次体性感覚野には左右それぞれ11本の鼻の突起に対応した体性感覚地図がある。Catania, K.C., Kaas, J.H. (1995). “Organization of the somatosensory cortex of the star-nosed mole.”. J Comp Neurol 351 (4): 549-67. PMID 7721983.
  • Desmana
    • ロシアデスマン D.moschata
    水生生活に適応したモグラ。体長18~21.5cmとモグラ科で最も大きい。
  • Scapanus
    • トウブモグラ S.aquaticusセイブモグラ S.townsendi など
    北アメリカに生息する。
  • Neurotrichus
    • アメリカヒミズ S.gibbsii など
    北アメリカに生息する。

[編集] モグラの種間競争

日本本土には7種のモグラが生息しているが、中でも一般的なのは、アズマモグラとコウベモグラである。前者は中部地方以北に、後者は中部地方以南に分布し、両者の生息域の境界線は中部地方にある。だが、アズマモグラよりも大型であるコウベモグラが、少しずつ東側に生息域を広げつつある。

これは、先に大陸から移入したアズマモグラが日本全土に生息域を広げたあとに、新たに大陸から移入してきたコウベモグラが東進しているためともいわれる。ちなみに、アズマモグラ以前の先住者といわれるコモグラ、ミズラモグラなどは、生息域が減少しつつあり、山地などに隔離分布するようになってきている。

ヨーロッパモグラTalpa europaeaのモグラ塚
ヨーロッパモグラTalpa europaeaのモグラ塚

[編集] 名称について

日本では、古くはモグラのことを「うころもち」(宇古呂毛知:『本草和名』)と呼んでいた。また、江戸時代あたりでは「むくらもち」もしくは「もぐらもち」と呼んでいた。モグラを漢字で「土龍」と記すが、江戸時代中国から渡来した博物学書『本草綱目』ではミミズのことを「土龍」としており、誤用した漢字が定着してしまったと考えられる。

モグラ類が属する食虫目は、文部省(当時)の提唱した呼称改定(1988年)により、現在は「モグラ目」とも呼称されるようになっている。おそらくこのことが一因となって、動物図鑑等の記事を見て、トガリネズミハリネズミといった同じ食虫目(モグラ目)の動物を、“モグラの一種”と勘違いする人がしばしばある。だが、一般に、食虫目(モグラ目)であっても、特にモグラ科の動物以外は「モグラ」ではないので、注意を要する。「食肉目(ネコ目)」に属するイヌクマイタチが、ネコの「仲間」であるというのと同様、“同じグループに属する”という意味で、トガリネズミやハリネズミを「モグラの仲間」と言うことはできるが、この表現は誤解を招きやすい。

[編集] 雑学

アリストテレスは著書『動物誌』にて、モグラは胎生動物で唯一眼を持たない動物としている。ただし、皮膚の下には退化した眼があるとも記述している。

処女膜はモグラと人間にしか存在しない』と言うのは、週刊明星に連載された三島由紀夫の「不道徳教育」が出典。

西洋ではモグラは盲目の象徴とされる。キリスト教では神の光に盲目な、キリスト教に改宗しない者の隠喩として用いられる。この寓意においてモグラと対置されるのは、何でも見通す眼力を有すると考えられたリンクス(オオヤマネコ)である。

モグラの毛は柔らかく光沢があるため、20世紀初頭まではモグラの毛皮は乗馬用ズボンやコートなどに用いられた。

モグラの黒焼きは土龍霜と呼ばれ、日本でも民間薬として使われてきた。強壮作用、興奮作用、排膿作用があるとされる。『大和本草』の鼴鼠(ウクロモチ、モグラのこと)の項に、「肉ヲ焼テ癰疽諸瘻ヲ治スト云ウ」、つまりはオデキや痔などの化膿したものを治すと、本草綱目から引用している。また、中外医薬生産株式会社(中外製薬とは別)から、土龍霜を配合した「ユリアン」という夜尿症の治療薬が発売されている。

なお、地下道やトンネルのことを「モグラ」と揶揄することもあり、地下鉄は「モグラ電車」だと呼ばれたこともあった。他に、上越線土合駅はトンネル内にあるため「日本一のモグラ駅」、トンネルの多い新幹線は「モグラ新幹線」などとも言われている。

モグラのすみかの近くには必ずある特定のキノコが生えている。これはモグラの糞を栄養源にしているキノコで、そのキノコの下を掘ってみるとモグラの糞があるらしい...

[編集] モグラをモチーフとした作品

モグラは童話漫画アニメ絵本テレビ番組などにおいてよくキャラクター化される。地下にトンネルを掘るその習性から、シャベルドリルを手にしているなど、掘削作業員になぞらえたデザインをされることも多い。

[編集] 文学

  • うんちしたのはだれよ!(ヴェルナー・ホルツヴァルト(文)、ヴォルフ・エールブルッフ(絵)の絵本)
  • ぼく、おつきさまがほしいんだ(ジョナサン・エメット(文)、ヴァネッサ・キャバン(絵)の絵本)
  • 二分割幽霊綺譚(新井素子
  • モグラが三千あつまって(武井博)

[編集]

[編集] キャラクター

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ