丸山ワクチン
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丸山ワクチン(まるやまワクチン、英: Specific Substance Maruyama, SSM)は、1944年に皮膚結核の治療薬として誕生した医薬品。タンパク質を除去したヒト型結核菌青山B株から抽出したリポアラビノマンナンおよびその他のリポ多糖 (LPS) を主成分とする。
がんに対して予防・治療効果があると支持者によって主張されているが[1]、薬効の証明の目処は立っておらず、2011年現在がんに対する医薬品としては未承認である。
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[編集] 開発の経緯と現状
発明者丸山千里の名前から後に「丸山ワクチン」と呼ばれるようになったこのワクチンは、ドイツのロベルト・コッホが1890年に発明したヒト型結核菌製剤ツベルクリンにヒントを得ている。現在では結核診断用の薬剤として知られるツベルクリンは、もともとは結核の免疫療法として開発されたものだったが、逆に症状を悪化させる結果を招き、治療薬としては失敗に終わった。丸山はコッホの試みに強い関心を持ち、「副作用につながる毒素を特定し、それをツベルクリンから取り除く」という発想の下に実験に着手。
1945年より丸山は、開発した多糖体を主成分とするワクチンによる治療を開始。
丸山はさらに、(実際の因果関係は不明で交絡因子[2]によるバイアスが推測されている。現在では結核の既往が肺がんのリスクを高めることがわかっている[3]。)がん治療にワクチンを用いることを決意した。そして、昭和40年代以降『がんの特効薬』との噂が一気に高まり、医薬品の承認の手続きより世論が先行することになってしまった。
支持者による嘆願署名運動などが行われ、国会でも医薬品として扱うよう要請された[4]が、今日においてもその薬効の証明の目処は立っておらず、医薬品として承認されるには至っていない。
[編集] 有効性について
愛知がんセンターが行った臨床試験と東北大学が行った臨床試験については、丸山ワクチンの有効性が認められなかったとされている [5] [6]。
また、丸山ワクチンに対して特別に不利な扱いをしているとする疑惑については、クレスチンやピシバニールは提出された資料で効果が証明されているので承認が早かった、丸山ワクチンは提出された資料では効果の証明が不十分なので追加資料を求めたから時間が掛かったとされている [7] [8] [9] [10]。
尚、丸山ワクチンの承認を求めた小林進衆議院議員によると、丸山ワクチンは1%から2%の効果があるかないかだとしている[11]。
[編集] 支持者の動向
丸山ワクチンは、有効性の確認の為の研究を継続するため、治験期間3年で有償治験を行い、その結果によって、その都度、治験期間の延長の届出[12]が行なわれている[13][14][15][16][17]。 丸山ワクチンによる治療を望む患者あるいはその家族は、丸山ワクチンの治験を引き受けてくれる医師を探し出し、治験承諾書(丸山ワクチンによる治験を引き受けるという担当医師の承諾書[18])およびSSM治験登録書(現在までの治療経過をまとめた書類[18])を整えさえすれば、丸山ワクチンの投与が受けられるという1972年以来の状況が続いている。
なお、放射線療法による白血球減少症の治療薬として、1991年に承認された「アンサー20」(ゼリア新薬工業)は、丸山ワクチンと同成分である。アンサー20が効果ありとされた白血球減少症は、悪性腫瘍によって引き起こされる症状、あるいは、その化学療法や放射線療法時の副作用である。丸山および丸山ワクチンの支持者たちは、抗がん剤として承認されることを切望していたが、「放射線療法時の白血球減少抑制剤」としての承認に留まり、生みの親である丸山が部分承認の9カ月後に死去したため、丸山の生存中にはついに抗がん剤としての承認は果たせなかった。
[編集] 脚注
- ^ 丸山ワクチン 患者・家族の会. “丸山ワクチンって何? - どんな治療法?”. 2011年3月24日閲覧。
- ^ 神奈川歯科大学. “医学統計学:臨床編”. 2009年12月13日閲覧。
- ^ 祖父江友孝 (2000). “固形癌の疫学 第8回 肺がんのリスクファクター”. 血液・免疫・腫よう 5 (4). ISSN 1341-5824.
- ^ 参議院 (2009年10月27日). “第095回国会 社会労働委員会 第3号”. 参議院会議録情報. 2009年12月13日閲覧。
- ^ 1981年、第94回国会衆議院社会労働委員会第20号衆議院 (1981年7月30日). “第094回国会 社会労働委員会 第20号”. 衆議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。にて桜井欽夫癌研究会癌化学療法センター所長は、愛知がんセンターの中里による投与データは、胃がんの手術不能患者では効果がないが手術後では統計学的に有意な差があったが差は小さく有意義とは言えない、腹膜転移のない患者では効果がなかったが腹膜転移のある患者でははっきりとした差があったが症例数が20例程度と少なく、もっと症例数を増やせば有意な差が出るのではないかとし、無作為割付の違反例の処理によって有利な解析結果となっている可能性を指摘している。また、東北大学が行った臨床試験の症例の大部分を占める胃がんでは差がない、その他のがんが少数まじっているが効くかどうかはがんの種類によって違う、膵臓がんの例は慢性膵炎の疑いがあるとされたがその後の組織診断からがんだと確定できたのでがんとして訂正したとしている。同委員会にて、砂原茂一国立療養所東京病院名誉院長は、東北大学が行った臨床試験は症例数が少ないので効くかもしれないとは言えるが効くとまでは言えないとしている。
- ^ 第95回国会参議院社会労働委員会第3号参議院 (1981年10月27日). “第095回国会 社会労働委員会 第3号”. 参議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。での持永和見厚生省薬務局長の答弁によると、東北大学が行った臨床試験にて、各種消化器がん、胃がん、肝がん、胆嚢がん、肺がんの切除不能、あるいは術後再発患者に対して、化学療法剤+丸山ワクチン184例(うち解析対象105例)と化学療法剤+生理食塩液179例(うち解析対象107例)の比較を行なった結果、腫瘍縮小効果や自覚症状の改善は見られなかったが、延命効果として20日間程度の延長があり、生存率も統計的には有意であった(具体的数値は不明)としながらも、「医薬品としての有効性は認められない」とされている。同委員会にて、村山達雄厚生大臣は、生理食塩液の群は最終的に全員死亡したが丸山ワクチンの群105例のうち3名が生存していた、うち2名は末期がんではなかったと判定され、残りの1名も膵臓がんではない疑いがあったが調査会では膵臓がんだったと判定したとしている。
- ^ 1979年、第87回国会参議院社会労働委員会第16号衆議院 (1979年5月24日). “第087回国会 社会労働委員会 第16号”. 衆議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。にて本橋信夫厚生省薬務局審議官は、クレスチンやピシバニールにあった腫瘍縮小効果のデータが丸山ワクチンになかったので提出を待っているとしている。
- ^ 1981年、第94回国会衆議院決算委員会第9号衆議院 (1981年4月17日). “第094回国会 社会労働委員会 第9号”. 衆議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。にて山崎圭厚生省薬務局長は、クレスチンやピシバニールは提出されたデータだけで十分有効性が認められるとして承認されたが、丸山ワクチンは資料が足りなかったため審議に時間が掛かった、両者の取り扱いに差を設けているわけではない、追加資料については指導しているとしている。
- ^ 1981年、第94回国会衆議院社会労働委員会第20号にて、砂原茂一国立病院機構東京病院名誉院長は、クレスチン等はデータがそろっていたから承認が早かったが丸山ワクチンはデータがそろっていなかったから時間が掛かった、クレスチンやピシバニールの生存曲線では後になるほど開きが大きいが丸山ワクチンの生存曲線ではところどころで少し有意差になるだけとしている。
- ^ 1982年、第96回国会予算委員会第三分科会第3号衆議院 (1981年7月30日). “第096回国会 予算委員会第三分科会 第3号”. 衆議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。にて持永和見厚生省薬務局長は、丸山ワクチンもクレスチンもピシバニールも全く同じ認可基準を使っている、丸山ワクチンは単独使用での有効性が認められなかったので他剤との併用試験を追加で行うことになったとしている。同分科会にて小林進衆議院議員は、丸山ワクチンは1%から2%の効果があるかないかだとしている。
- ^ 1982年、第96回国会予算委員会第三分科会第3号にて
- ^ 薬事法第八十条の二第二項
- ^ 衆議院 (1981年9月24日). “第095回国会 社会労働委員会 第1号”. 衆議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。 “丸山ワクチンにつきましてはさきの薬事審議会で、現段階では有効性を確認することができなかった、しかしながら、無効と断定するものではないので、したがって引き続き研究継続をする必要があるというような異例の意見が出まして、これを受けまして私どもは、これをつくっておりますゼリア新薬工業に研究継続の要請をいたしますとともに、お話しのように現在丸山ワクチンを使っておられる患者さんが多数おられますので、そういった人たちのニーズにこたえるべく、供給についても検討をお願いしている段階でございます。(持永和見厚生省薬務局長)”
- ^ 第95回国会参議院社会労働委員会第3号での持永和見厚生省薬務局長の答弁によると、治験の対象症例が非常に多いため製造・供給元にかなりの経済的負担を伴うことを理由として治験薬は有償とし、治験実施機関を日本医大として、丸山ワクチンの使用を希望する医療機関は共同治験を可能したとしている。
- ^ 衆議院 (1983年3月3日). “第098回国会 予算委員会 第16号”. 衆議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。 “一万の治験薬という形でいま使っておるところでございますし、そういったいろいろな形でデータが積み重ねられた上で認められてくるのだろうと私は思います。(林義郎厚生大臣)”
- ^ 衆議院 (1984年2月20日). “第101回国会 予算委員会 第8号”. 衆議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。 “治験計画三年ということで有償治験を実施しております(正木馨厚生省薬務局長)”
- ^ 衆議院 (1993年4月2日). “第126回国会 厚生委員会 第6号”. 衆議院会議録情報. 2011年3月24日閲覧。 “丸山ワクチンにつきましては、現在有償治験薬ということで患者さんに提供されておるわけでございまして、メーカーの方から試験研究を継続したい、そういう希望が出ておるわけでございまして、その結果を待って厳正にこの問題につきましては検討していきたい。(丹羽雄哉厚生大臣): 丸山ワクチンにつきましては、現在行われております有償治験の期間が、先生お話しのように本年の十二月二十日までということで予定をされておりまして、治験継続中という段階でございます。その後の丸山ワクチンの取り扱いにつきましては、現在行われておりますこの治験の結果を待ちまして検討してまいりたい、このように考えております。(市川和孝厚生大臣官房審議官)”
- ^ a b 日本医科大学付属病院ワクチン療法研究施設. “治験を受けるには”. 丸山ワクチン・オフィシャルサイト. 2009年12月13日閲覧。
[編集] 関連項目
- 癌ワクチン
- 将棋棋士の丸山忠久九段が、ゴキゲン中飛車戦法への対策として編み出した指し方は、本項に因んで丸山ワクチンと呼ばれている。
- テレビアニメ 『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』に架空の薬品として登場する村井ワクチンとそのシナリオは、丸山ワクチンをモデルにしている。
- 自律神経免疫療法
- 篠原一 (政治学者)