結核菌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
結核菌
TB Culture.jpg
結核菌のコロニー
分類
ドメイン : 細菌 Bacteria
: 放線菌門
Actinobacteria
: 放線菌綱
Actinobacteria
: 放線菌目
Actinomycetales
亜目 : コリネバクテリウム亜目
Corynebacterineae
: マイコバクテリウム科
Mycobacteriaceae
: マイコバクテリウム属
Mycobacterium
: 結核菌
M. tuberculosis
学名
Mycobacterium tuberculosis
Zopf 1883

結核菌(けっかくきん、Mycobacterium tuberculosis、ヒト型結核菌)は、ヒトの結核の原因となる真正細菌1882年細菌学者ロベルト・コッホにより発見された。ヒトの病原菌としては、コッホの原則に基づいて病原性が証明された最初のものである。グラム陽性桿菌である抗酸菌の一種であり、細胞構造や培養のための条件など多くの点で他の一般的な細菌と異なる。特に、ミコール酸と呼ばれる特有の脂質に富んだ細胞壁を持つため消毒薬や乾燥に対して高い抵抗性を有する。保菌者のくしゃみなどの飛沫、あるいはそれが乾燥したものを含むほこりなどから空気感染して、肺胞マクロファージの細胞内に感染し、肺結核をはじめとする各種の結核の原因となる。

細菌学的特徴[編集]

結核菌は、マイコバクテリウム科マイコバクテリウム属に属し、他のマイコバクテリウム属細菌とともに抗酸菌と呼ばれる細菌群の一種である。芽胞鞭毛莢膜を持たない、大きさ2-4 x 0.3-0.6 µmの好気性桿菌である。

細胞壁にミコール酸と呼ばれる脂質を多量に含有し、通常のグラム染色では染まりにくく結果が安定しないため、グラム不定と呼ばれることもある。ただし、細胞壁の構造と加温グラム染色法からグラム陽性菌として分類するのが一般的である。一方、媒染剤を加えて加温しながら染色を行うチール・ネールゼン染色などの強力な方法を用いると、染色が可能になるだけでなく、一旦染まった色素液が脱色されにくいという特徴を持ち、強い脱色剤である塩酸アルコールに対しても脱色抵抗性を示す。この染色法を抗酸性染色と呼び、本法で染色されるマイコバクテリウム属は抗酸菌(acid-fast bacteria, この場合のfastは「退色しない」「固定された」の意)とも呼ばれている。抗酸菌は、増殖の遅い(コロニーが肉眼で判別可能なまで増殖するのに1週間以上かかる)遅発育菌群 (slow growers) と、増殖の早い迅速発育菌群 (rapid growers)、培養不能菌(らい菌のみ)の3つに大別される。結核菌はこのうち遅発育菌群に属し、分離培養には3週間以上かかることがある、

抗酸菌のうち、結核菌(Mycobacterium tuberculosis、ヒト型結核菌)、ウシ型結核菌(M. bovis、ウシ型菌、ウシ菌)、マイコバクテリウム・アフリカンス (M. africans)、ネズミ型結核菌 (M. microti) の4菌種は、(1) 37℃で増殖可能だが28℃で増殖しない、(2)耐熱性のカタラーゼを持つ、などの点で他の抗酸菌とは鑑別される。この4種を結核菌群 (M. tuberculosis complex) と呼ぶ。結核菌群と癩菌(らいきん)以外の抗酸菌を非結核性抗酸菌(古くは非定型抗酸菌)と呼んで区別する。結核菌群の4種はいずれも遅発育菌群であり、同定が困難であった。現在は分子生物学的手法を用いて、遺伝子増幅により同定可能となっている。
生化学的性状および病原性の点で、4種それぞれに相違点を持つ。このうち、結核菌 (M. tuberculosis) が結核の原因菌としてヒトへの病原性を示すほか、M. bovisM. africansがまれにヒトに感染する。M. microtiはヒトに対する病原性を持たない。またM. bovisを長期間継代培養して弱毒化したものがBCGであり、結核予防のためのワクチン(弱毒生菌ワクチン)として利用されている。

病原性[編集]

結核菌(紫)に侵された組織

結核菌はくしゃみなどで空気中に飛散し、空気感染を引き起こすことが多い。(正確には飛沫核感染である。)結核菌を吸い込んだとしても、免疫がしばらく菌を閉じ込めてしまい、すぐには発症しない。しかし、ほうっておくと、咳や微熱が出る。病状が進行していくと、最悪の場合に至る。 結核菌が起こす主な疾患:

など。

診断[編集]

治療[編集]

イソニアジド(INH),リファンピシン(RFP),ストレプトマイシン(SM)(注射剤)またはエタンブトール(EB)(経口剤)のどちらか,ピラジナミド(PZA)の4剤の短期併用(2ヶ月)を行い、その後2剤(イソニアジド+リファンピシン)を4ヶ月または6ヶ月、もしくは3剤(短期にEB使用の際、イソニアジド+リファンピシン+エタンブトール)併用を行うことが近年推奨されている。しかしPZAは肝障害を合併しやすく、薬剤の選択については患者によって異なる。またストレプトマイシンは聴覚障害、エタンブトールは視神経障害が副作用として有名である。