胃癌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(胃がん から転送)
胃癌
分類及び外部参照情報

胃癌の疑いがあるとして切除された胃潰瘍の標本
ICD-10 C16.
ICD-9 151
OMIM 137215
DiseasesDB 12445
eMedicine med/845 
MeSH D013274

胃癌(いがん、Stomach cancerMagen krebs:MK)はに生じるの総称。

目次

[編集] 定義

広義の「胃癌」には以下の種類がある。

[編集] 疫学

胃癌は中国日本韓国などアジア南米に患者が多く、アメリカ合衆国をはじめ他の諸国ではそれほど顕著ではない。

2003年の日本における死者数は49,535人(男32,142人、女17,393人)で、男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌に次いで第2位であった(厚生労働省 人口動態統計より)。かつて日本では男女とも胃癌が第1位であったが、死者数は年々減少している。

胃癌の発生過程でヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)による「慢性萎縮性胃炎」の関与が示唆されている。

[編集] 病理

組織型としては、殆どが腺癌胃小窩や胃腺に分化する円柱上皮幹細胞から生ずる)であり、稀にガストリン等の内分泌細胞から生ずる内分泌細胞癌(=高悪性度カルチノイド)が発症する。

病理学的には以下に分類される。

  • 一般型
    • 乳頭腺癌(pap:papillary adenocarcinoma)
    • 管状腺癌(tub:tubular adenocarcinoma)
      • 高分化型(tub1:well differentiated type)
      • 中分化型(tub2:moderately differentiated type)
    • 低分化腺癌(por:poorly differentiated adenocarcinoma)
      • 充実型(por1:solid type)
      • 非充実型(por2:non-solid type)
    • 印環細胞癌(sig:signet ring cell carcinoma)
    • 粘液癌(muc:mucinous adenocarcinoma)
  • 特殊型
    • 腺扁平上皮癌(adenosquamous carcinoma)
    • 扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)
    • カルチノイド腫瘍(carcinoid tumor)

また歴史的に、胃癌の他覚的発見にちなんで、転移・浸潤先の病変に名称が付けられており、卵巣への直接浸潤として「クルーケンベルグ(Krukenberg)腫瘍」、ダグラス窩に転移したものは「シュニッツラー(Schnitzler)転移」、左鎖骨窩リンパ節転移は「ウィルヒョウ(Virchow)転移」と呼ばれている。

[編集] 症状

自覚症状による胃癌の早期発見は難しい。ほとんどの場合、早期癌の段階では無症状であり、癌が進行してからでないとはっきりとした自覚症状が出てこないことが多いからである。胃癌は進行してくると次のような症状が出てくる。

  • 自覚症状
腹痛・胃部不快感・吐気・嘔吐・胸焼け・食事後の胃部膨満感・食欲減退等
  • 理学的症状
貧血・体重減少・黒色便

[編集] 検査

主に以下の検査が行われている。

  • 上部消化管造影
いわゆる「バリウム検査」であり、現在において多くの癌検診として広く行われている。
現在において最も確実な検査方法。多くの医療機関・人間ドックで施行される。
粘膜下腫瘍の診断・転移浸潤の評価に多く施行される。
主にCEA等が上昇を見せる場合もある。

[編集] 病期

胃癌の進行度は、以下に分類し、生存率がほぼ等しくなるようにグループ分けしたのが病期(Stage)であり、数字が大きくなるほど進行した癌であることを表す。国際的にはUICC(International Union Against Cancer)のTNM分類が用いられるが、日本では胃癌取扱い規約による病期分類が広く使用されている。

画像検査による、臨床診断による病期診断が行われ、手術加療を行う場合には、手術結果によって最終的な病期診断(Final Stage)が確定される。

[編集] 形態

肉眼的形態は以下のように分類される。

0型 表在型
病変の肉眼的形態が軽度な隆起や陥凹を示すに過ぎないもの。
1型 腫瘤型
明らかに隆起した形態を示し、周囲粘膜との境界が明瞭なもの。
2型 潰瘍限局型
潰瘍を形成し、潰瘍をとりまく胃壁が肥厚し周堤を形成し、周堤と周囲粘膜との境界が比較的明瞭なもの。
3型 腫瘍浸潤型
潰瘍を形成し、腫瘍をとりまく胃壁が肥厚し周堤を形成するが、周堤と周囲粘膜との境界が不明瞭なもの。
4型 びまん浸潤型
著明な潰瘍形成も周堤もなく、胃壁の肥厚・硬化を特徴とし、病巣と周囲粘膜との境界が不明瞭なもの。
5型 分類不能
上記分類に当てはまらないもの。

また、0型については以下のような亜分類が用いられる。

I型 隆起型
明らかな腫瘤状の隆起が認められるもの。
II型 表面型
明らかな隆起も陥凹も認められないもの。
IIa型 表面隆起型
表面型であるが、低い隆起が認められるもの。
IIb型 表面平坦型
正常粘膜に見られる凹凸を越えるほどの隆起・陥凹が認められないもの。または肉眼的に病変の存在を認めがたいもの。
IIc型 表面陥凹型
わずかなびらん、または粘膜の浅い陥凹が認められるもの。
III型 陥凹型
明らかに深い陥凹の存在するもの。

0型では単一の分類型を示さないことも多い(隆起と陥凹が混在する、陥凹の浅い部分と深い部分があるなど)。そのときはより広い病変から+でつないで表現する(IIa+IIcなど)。

[編集] 進達度

組織学的深達度によってT分類は決定される。T分類はクリニカルステージを決定するのに非常に重要な因子である。

  • T1:癌の浸潤が粘膜(M)または粘膜下層(SM)にとどまるもの。リンパ節転移の有無を問わず、早期胃癌といわれることが多い。粘膜筋板から0.5mm未満をSM1、それ以降をSM2と細分化することもある。
  • T2:癌の浸潤が粘膜下組織を超えているが固有筋層(MP)または漿膜下組織(SS)にとどまるもの。
  • T3:癌の浸潤が漿膜下組織を超えて漿膜に接しているか、またはこれを破って遊離腹腔に露出しているもの(SE)。
  • T4:癌の浸潤が直接他臓器まで及ぶもの(SI)。
  • TX:癌の浸潤の深さが不明なもの。

[編集] 進行

TNM分類としてはN:リンパ節転移、H:肝転移、P:腹膜転移、CY:腹腔細胞診、M:遠隔転移がある。

  • N:リンパ節転移
  • N0:リンパ節転移を認めない。
  • N1:第1群リンパ節のみに転移を認める。
  • N2:第2群リンパ節まで転移を認める。
  • N3:第3群リンパ節まで転移を認める。
  • NX:リンパ節転移の程度が不明である。
  • H:肝転移
  • H0:肝転移を認めない。
  • H1:肝転移を認める。
  • HX:肝転移の有無が不明である。
  • P:腹膜転移
  • P0:腹膜転移を認めない。
  • P1:腹膜転移を認める。
  • PX:腹膜転移の有無が不明である。
  • CY:腹腔細胞診
  • CY0:腹腔細胞診で癌細胞を認めない。
  • CY1:腹腔細胞診で癌細胞を認める。
  • CYX:腹腔細胞診を行っていない。
  • M:遠隔転移
  • M0:肝転移、腹膜転移および腹腔細胞診陽性以外の遠隔転移を認めない。
  • M1:肝転移、腹膜転移および腹腔細胞診陽性以外の遠隔転移を認める。
  • MX:遠隔転移の有無が不明である。

基本的にN3やH1、P1、CY1、M1となれば無条件ステージIVとなり予後は厳しいということになる。以下に病期分類とクリニカルステージの対応を示す。

  N0      N1      N2      N3   
T1 IA IB II
T2 IB II IIIA
T3 II IIIA IIIB
T4 IIIA IIIB IV
H1、P1、CY1、M1

[編集] 治療

他のの治療と同様に、治療方針は癌の病期によって変わってくる。主に以下にあげられる治療を集学的に行っていく。以下は狭義の胃癌の治療について記述。

悪性リンパ腫GISTの治療については各項を参照。

[編集] 内視鏡治療

分化型でリンパ節転移の無い早期胃癌と診断される病変に対し、EMRESDといった内視鏡治療が広く行われてきている。詳細はEMRESDの記述を参照。

[編集] 手術治療

以前より、根治術として外科的手術は根幹を成しており、胃切除術+リンパ節郭清が根治術の基本である。詳細は胃切除術の記述を参照。

また、癌の進行が進んでいると術前診断がなされれば、大網脾臓胆嚢といった周囲他臓器合併切除を行う拡大手術が行われる。

[編集] 化学療法

胃癌に対する化学療法は、術後の補助治療や、術後再発、全身転移・周囲浸潤を生じ手術的加療による根治が困難な場合に施行される。化学療法は以下の種類があり、組み合わせによって様々な「レジメ」が提唱されている。

[編集] 放射線治療

腺癌が多いため、放射線療法は多くは行われない。術後病変に対する治療や、未承認治療法として術中照射(intraoperative radiation therapy)が手術の補助として有効かどうか研究されている。

[編集] 生物学的療法(免疫療法)

生物学的療法(免疫療法とも呼ばれる)は身体の免疫が癌細胞を攻撃するのを補助する治療法であり、他の治療法の副作用から回復させる補助としても施されることがある。未承認治療法として他の治療法と併用して、再発癌の防止する生物学的治療法研究が医者によって進められている。別の生物学的治療法として、化学療法中あるいは治療後に(白血球など)血球が減少した患者に、コロニー刺激因子などを投与して、血球数レベルの回復の手助けをすることがある。ある種の生物学的治療法を受ける患者は入院が必要な場合がある。

[編集] 予後

早期に発見され治療が行われれば予後の良い癌である。国立がんセンター中央病院胃癌グループの統計によると、5年生存率は胃癌全体で71.4%、StageIで91.2%、StageIIで80.9%、StageIIIで54.7%、StageIVでは9.4%であった。

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

[編集] 外部リンク