リーマン曲率テンソル

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微分幾何学の数学的な領域において、リーマン曲率テンソル(リーマンきょくりつテンソル、Riemann curvature tensor)あるいはリーマン-クリストッフェルテンソル (Riemann–Christoffel tensor)リーマン多様体の曲率を表す最も標準的なものである。名称は、様々なものに名を残すベルンハルト・リーマンおよびエルウィン・ブルーノ・クリストッフェルに因む。この曲率テンソルはレヴィ・チヴィタ接続の言葉を使い、

R(u,v)w=\nabla_u\nabla_v w - \nabla_v \nabla_u w - \nabla_{[u,v]} w

なる式で与えられる。接ベクトルの任意の組 (u, v) に対して、R(u, v) はそのリーマン多様体の接空間における線型変換であり、また u, v に関して線型である。著者によっては、リーマン曲率テンソルを上式の符号を逆にしたものとして定義している場合があるので注意を要する。u = ∂/∂xi, v = ∂/∂xj を座標ベクトル場とすれば、[u, v] = 0 であるから、上式は

R(u,v)w=\nabla_u\nabla_v w - \nabla_v \nabla_u w

に単純化される。すなわち、リーマン曲率テンソルは「共変微分の非可換さ」を測るものである。線型変換

w\mapsto R(u,v)w

曲率変換あるいは曲率自己準同型とも呼ばれる。

リーマン曲率テンソル(の特に以下で述べる座標式)は重力の現代的理論である一般相対論における数学的な道具の中心となるものである。

座標式[編集]

局所座標 xμ に関するリーマン曲率テンソルは、∂μ = ∂/∂xμ を座標ベクトル場として

{R^\rho}_{\sigma\mu\nu} = dx^\rho(R(\partial_{\mu},\partial_{\nu})\partial_{\sigma})

で与えられる。この式はクリストッフェル記号を用いれば

{R^\rho}_{\sigma\mu\nu} = \partial_\mu\Gamma^\rho_{\nu\sigma}
    - \partial_\nu\Gamma^\rho_{\mu\sigma}
    + \Gamma^\rho_{\mu\lambda}\Gamma^\lambda_{\nu\sigma}
    - \Gamma^\rho_{\nu\lambda}\Gamma^\lambda_{\mu\sigma}

と書くことができる。ベクトル Vμ の無限小長方形 dxνdxσ を回る変換は

\delta V^\mu = R^\mu_{\nu\sigma\tau} dx^\nu dx^\sigma V^\tau

である。(反変成分を持つ)リーマン曲率テンソルの、純共変版が

R_{\rho\sigma\mu\nu} = g_{\rho \zeta} {R^\zeta}_{\sigma\mu\nu}

によって定義される。

対称性・恒等式[編集]

リーマン曲率テンソルは次の対称性

  • R(u,v)=-R(v,u),
  • \langle R(u,v)w,z \rangle=-\langle R(u,v)z,w \rangle,
  • R(u,v)w+R(v,w)u+R(w,u)v=0

を持つ。この式のブラケット \langle,\rangle計量テンソルにより引き起こされた内積である。この最後の恒等式はリッチが発見したものだが、以下で述べるビアンキ恒等式と見た目が似ているため、しばしば第一ビアンキ恒等式あるいは代数的ビアンキ恒等式と呼ばれる。これら3つの恒等式はリーマン曲率テンソルの対称性の完全なリストを成している。つまり、上記の恒等式すべてを満足するテンソルが任意に与えられたとき、そのような曲率テンソルを持つ点を備えたリーマン多様体を見つけることができる。簡単な計算により、そのようなテンソルが n2(n2 − 1)/12 個の独立な成分を持つことが示される。

上記の3式から得られる別の有用な恒等式に

\langle R(u,v)w,z \rangle=\langle R(w,z)u,v \rangle

がある。(しばしば第二ビアンキ恒等式あるいは微分のビアンキ恒等式の名で呼ばれる)ビアンキ恒等式は、共変微分によって生じる恒等式

\nabla_uR(v,w)+\nabla_vR(w,u)+\nabla_w R(u,v) = 0

である。多様体上のある点に関する座標チャートが任意に与えられたとき、上記の恒等式はその点におけるリーマンテンソルの成分の言葉で

  • R_{abcd}^{}=-R_{bacd}=-R_{abdc},
  • R_{abcd}^{}=R_{cdab},
  • 第一ビアンキ恒等式: R_{a[bcd]}^{}=\frac{1}{3}\left(R_{abcd}+R_{acdb}+R_{adbc}\right)=0,
  • 第二ビアンキ恒等式: R_{ab[cd;e]}^{}=0

のように書くことができる。ここで、角括弧は添字についての巡回対称化、セミコロンは共変微分を表している。

曲面の曲率[編集]

二次元曲面に対して、ビアンキ恒等式はリーマンテンソルが

R_{abcd}^{}=K(g_{ac}g_{db}- g_{ad}g_{cb})

の形に表せることを示している。ここで gab はこの曲面の計量テンソルKガウス曲率と呼ばれる函数で、a, b, c, d は 1 または 2 のいずれかの値をとる。期待の通り、このリーマン曲率テンソルは独立成分をただ一つだけ持つ。

ガウス曲率は、この曲面の断面曲率と一致し、また 2-次元多様体のスカラー曲率のちょうど半分にもなっている。同時に、この曲面のリッチ曲率テンソルは単に

\operatorname{Ric}_{ab} = Kg_{ab}

として与えられる。

関連項目[編集]