ボヴァリー夫人
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ボヴァリー夫人 (Madame Bovary) はフランスの作家フローベール(1821-1880年)の作品。 はじめ「パリ評論」誌に連載され、風俗紊乱の罪に問われるが、1857年無罪判決を得る。裁判のとき、「ボヴァリー夫人は私だ」"Madame Bovary, c'est moi"と言ったことは文学史上、有名。同年に単行本を出版。この一作でフローベールの文名は大いに上がった。
田舎の医者シャルル・ボヴァリーの妻、エンマ・ボヴァリーがヒロインとなり、平凡な生活から抜け出そうと無謀な恋に走り、破綻に陥るまでを描いた。
自由間接話法や非主観的視点など、現在の小説の技法のほとんどが使われているといわれる。 実際にあった事件をモデルに、写実主義的な手法で描かれた傑作。 事実、ウラジーミル・ナボコフやバルガス・リョサ、ヌーヴォー・ロマンの作家たちも高く評価している。 中でもシャルル・ボードレールが発表した書評には、フローベールがいたく気に入り、よくぞ理解してくれたと喜びと感謝で満ち溢れた手紙を送っている。
フローベールは執筆前に、物語の重要な舞台であり故郷でもあるフランスのルーアンを歩き回り、非常に詳細に記録した取材ノートを残している。「ボヴァリー夫人」を読みながらルーアンを歩くと、風景描写がかなり正確であるのに驚く。エンマが逢瀬を重ねていた大聖堂や彼女を破滅に追いやった薬剤師のモデルとなった家は、今日も世界中から大勢の観光客が訪れている。主人公エンマのように理想と現実のギャップに苦しむ状態は、ボヴァリスムと言われるようになった。
日本では、1916年に早稲田文学記者の中村星湖により翻訳される。早稲田大学出版部より『ボワ゛リイ夫人』として刊行されるが発禁となり、1920年に解除されて新潮社より刊行。1927年に新潮社世界文学全集に編入。なお以降の世界文学全集でも必ず入るので、19世紀フランス文学全体でもボードレール「悪の華」モーパッサン「女の一生」スタンダール「赤と黒」と並んで多く邦訳されている。
ジャン・ルノワール、ヴィンセント・ミネリ、クロード・シャブロルといった監督が映画化している。
いがらしゆみこがコミック化している。(中央公論社刊、コミック版世界の文学シリーズ)
[編集] 訳書
- 伊吹武彦訳 岩波文庫上下、筑摩書房『全集1』、河出書房新社世界文学全集
- 生島遼一訳 新潮文庫、新潮社「新潮世界文学」、学研「世界文学全集」
- 中村光夫訳 講談社、同、講談社文庫
- 菅野昭正訳 集英社、同
- 山田爵訳 中央公論社、同 新版が河出文庫
- 杉捷夫訳 筑摩書房、同
- 村上菊一郎訳 角川文庫
- 白井浩司訳 旺文社文庫
[編集] 参考文献
- 『ボヴァリー夫人を読む 恋愛・金銭・デモクラシー』 松澤和宏著 岩波セミナーブックス 2004年
- 『恋愛小説のレトリック ボヴァリー夫人を読む』 工藤庸子著 東京大学出版会 1998年
- 『果てしなき饗宴 フロベールとボヴァリー夫人』 バルガス=リョサ/工藤庸子訳 筑摩叢書 1988年
- 『ボヴァリー夫人の手紙』 工藤庸子編訳 筑摩書房 1986年
- 『ボヴァリー夫人 主題と変奏』 諏訪裕著 近代文芸社 1996年
- 『ボヴァリー夫人』 姫野カオルコ文、木村タカヒロ絵 角川書店 2003年
- 『ボヴァリー夫人』 いがらしゆみこ著 中公文庫コミック版 1997年
- 『往復書簡サンド=フロベール』 持田明子編訳 藤原書店 1998年、ジョルジュ・サンド宛ての手紙
[編集] あらすじ
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。
何の取り柄もない凡庸なシャルル・ボヴァリーが田舎で医者となり結婚するも失敗し、美人のエンマと再婚する。エンマはロマンチックな女性だが、新しい夫はロマンティシズムとはおよそ無縁な世界の人間である。ずっと夢見ていた結婚披露宴も、単なる村の愚民のどんちゃん騒ぎに終わり、彼女は失望する。そして単調な結婚生活。エンマは何とかマンネリズムから脱却しようと、ロマンス小説を読み、ピアノを弾き、絵を描くが、どれも長続きしない。
そんなある日、シャルルが侯爵のおできを治療したことで、そのお礼にと夫婦そろって城に招待される。今まで小説でしか知らなかった上級社会の生活を目の当たりにして、ますますエンマは現在の生活と夫に失望し、外に幸せを求めるようになる。そんな中で出会ったのが青年レオンであり、両思いになるも、彼もエンマも初心で想いを告白できず、レオンは去っていく。
レオンに去られた心の空虚を埋めるようにプレイボーイの貴族ロドルフと不倫関係になるが、気まぐれなロドルフとの仲は続かず、彼女は抑うつ状態になってしまう。ロドルフとの情事のことなどまったく知らないシャルルは、薬剤師オメーからいろいろな薬を取り寄せて、何とかエンマに元気になってもらおうとするものの、効果はまったく現れない。
観劇をして気分転換するようオメーに進言されたエンマがルーアンに行ってみると、大聖堂でレオンと思わず再会し、情事を重ねて元気になって帰ってくる。その後もエンマはレオン会いたさに、シャルルに嘘をつき、ルーアンに出かける。情事のためのドレスなどの費用を求め、高利貸しのルウルーから借金を重ねるが、返済に窮したあげく、ついに裁判所から差し押さえ命令が出る。これに動揺したエンマは、ルドルフやレオンに借金を頼むも、両方とも無情にエンマに別れを告げてしまう。
絶望したエンマはオメーの家の使用人に倉庫を開けさせ、そこに保存してある砒素を飲んで自殺する。


