ベトナム帰還兵

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ベトナム帰還兵(ベトナムきかんへい、英:Vietnam veteran)は、ベトナム戦争から帰還したアメリカ兵のこと。

概要[編集]

帰還兵はどの戦争にも存在する。戦争で植物状態寝たきり状態、知力喪失状態になった人、視力聴力発声能力の喪失、下半身不随、手指の切断や損傷、PTSDやその他の精神病など、戦争の後遺症により、職業・社会生活が不可能になり障害者年金で生活する人、職業・社会生活に重大な不利益があり障害者手当を受給する人など、様々な障害や不利益を受ける人もいる。帰還兵に対しては、1988年以前は内務省の退役軍人局、1989年以後はアメリカ合衆国退役軍人省が、医療費、障害者年金、障害者手当、大学や大学院の奨学金などの様々な社会保障サービスを提供する[1][2]。アメリカ合衆国では軍歴や戦闘歴は不名誉除隊(日本語表現では懲戒免職)を例外として肯定的に評価される。ただし、その手続きは煩雑かつ多くの時間を要し、またその金額も不十分なもので、多くの帰還兵は出征前の生活水準に逆戻りするか、あるいはそれ以下に転落する。

帰還兵の数と影響[編集]

帰還兵の数は戦場に投入された兵士の数の総数-戦死者-行方不明者であり、戦争の規模が大きいほど、戦争の期間が長いほど多くなる。アメリカ合衆国の歴史上最大の戦争は第二次世界大戦であり、軍の雇用者数、戦場に投入された兵士数も、他の全ての戦争と比較して突出して多い。第一次世界大戦朝鮮戦争ベトナム戦争湾岸戦争アフガニスタン戦争イラク戦争も多数の兵士を戦場に投入したので、帰還兵の多い戦争である。帰還兵の数が多いほど社会的認知や影響力や認知度も大きくなる。

ベトナム帰還兵[編集]

帰還兵はどの戦争にも必ず存在し、戦争の影響による心身の障害や病気などによる不利益も必ず存在するのに、第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、湾岸戦争の帰還兵は集合名詞として固有表現されず、ベトナム戦争の帰還兵だけが集合名詞として固有表現される(ベトナム戦争はアメリカが最初に政治的勝利を得られなかった戦争であり、また国民の多くが敗北感を感じた最初の戦争でもあり、良くも悪くも特別視される)。ベトナム帰還兵という言葉で表現される場合、戦争の影響として帰還兵が受ける様々な不利益を通じてベトナム戦争を批判する、または、戦争を遂行した大統領として、ジョンソン大統領や、ニクソン大統領を批判するための題材として利用される。ケネディ大統領が批判される事例は、派遣軍が最大時で1万6千人だったこと、および、ケネディ大統領時代にベトナムに戦闘部隊を投入したことの認知度が低いので、ジョンソン大統領やニクソン大統領と比較して少数である。

帰還兵に対する非難[編集]

戦死者はワシントンD.C.にあるメモリアルパークの慰霊碑に氏名を刻印されて慰霊される。遺体が国に戻った戦死者は、棺を星条旗で包まれてアーリントン墓地に埋葬される。どの時代のどの国や地域でも、兵士が戦場から生きて帰ったら、親子・祖父母と孫・兄弟・姉妹・配偶者・恋人・友人・地域社会の人々・職場の人々のいずれも、生きて帰ったことを喜び歓迎し、戦地での苦労をねぎらい、国家に対する貢献を讃え、政府は勲章を授与する。ただし、その歓迎ムードはごく一時的なものであり、多くの帰還兵の労苦はすぐに忘れられ、時に偏屈な厄介者として扱われる。また、戦争やそれを推進した政府や軍や議会の責任までもが、理不尽にも将兵に負わされ、非難される例も多い。

なお、帰還兵から6人が連邦上院議員に選出され、副大統領、国務長官、国防長官、などの公職に選出され、または、任命され就任している。

社会に対する負の影響[編集]

ベトナム戦争中期以後に、殺人、強姦、強盗、障害などの暴力犯罪も、窃盗などの財産犯罪も、マリファナ、コカインなどの薬物犯罪も増加傾向になったが、ベトナム戦争との因果関係は証明されていない[3]。逆にアフガニスタン戦争とイラク戦争の時代には、殺人、強姦、強盗、障害などの暴力犯罪も、窃盗などの財産犯罪も、マリファナ、コカインなどの薬物犯罪も減少傾向であるが[3]、アフガニスタン戦争とイラク戦争との因果関係は証明されていない。 ただし、長期戦の果てに政治的勝利を得られなかったベトナム戦争以降、徒労感を味わった帰還兵のPTSD問題は深刻化し、イラク戦争においては帰還兵の1/3が何らかの形でPTSDを患っている。また、帰還兵であろうとなかろうと精神疾患者に対する地域社会の受け入れ態勢の整備や偏見解消はなお不十分であり、帰還兵が故郷に就職先や居場所を見出せずに軍への再志願を繰り返す例や、精神疾患が精神障害へと悪化する例、ひいては戦場さながらの乱射事件を引き起こす例もある。

帰還兵からの著名人[編集]

帰還兵を題材にした映画[編集]

脚注[編集]

関連項目[編集]