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====1899年(明治32年)改正====
====1899年(明治32年)改正====
所得を3種類に区分し、第1種を法人所得、第2種を公社債利子所得、第3種を300円以上の個人所得とした。
所得を3種類に区分し、第1種を法人所得、第2種を公社債利子所得、第3種を300円以上の個人所得とした。


====1940年(昭和15年)改正====
====1940年(昭和15年)改正====

2008年11月12日 (水) 08:43時点における版

所得税(しょとくぜい)とは、担税力の源泉を、所得消費及び資産と区分した場合に、所得に対して課される税金のこと。

分類

所得税は広義の所得税と狭義の所得税に分類できる。

  1. 広義には、したがって、狭義の所得税のほか、国税(中央税)における法人の各事業年度の所得に対して課せられる法人税地方税における住民税事業税などもこれに含まれる。
  2. 狭義には、1月1日から12月31日までの1年間に生じた個人の所得に課税される税金(国税)をいう。この税金に係る実体法として、日本では所得税法(昭和40年3月31日法律第33号)がある。

ここでは、主に上記2.の狭義の所得税について記述する。

個人所得税
所得税は、累進税率や各種人的控除をミックスすることにより、租税の垂直的公平を保つのに有効な租税であるとされる。
現代の日本やアメリカでは、国税の税目の内最も高いウエートを占める基幹税である。所得税の徴収方式としては、確定申告で馴染み深い申告納税方式と源泉徴収方式がある。税収に占める割合は後者の方が高い。

課税対象所得の捉え方

所得税の課税対象となる所得の捉え方には、次に掲げる通りいくつかの考え方がある。今日では、次の3つの内包括的所得概念が有力であるが、一方でヨーロッパ諸国では制限的所得概念の考え方も根強く、例えばドイツフランスでは株式譲渡益が非課税とされる。また、北欧諸国では、主に包括的所得概念の非効率性に着目して、投資所得と勤労所得とを区分して前者には比例税率課税を行い、後者には累進税率を適用する二元的所得税が採用されている。

消費型所得概念(ジョン・スチュアート・ミル - アーヴィング・フィッシャー
課税所得は、所得の内、消費により効用の得られた部分とする考え方。この考え方に基づけば、所得は人の一定期間の消費の総額によって測定される。理論的には一定の有用性が認められているものの、実際にこの概念に基づく課税制度を採用している国はない。
制限的所得概念
課税所得は、反復継続する活動から得られるものに限定し、偶発的・一時的なものは課税しないとする考え方。いわゆる取得型所得概念の一つである。
包括的所得概念
課税所得は、担税力を増加させる全ての純資産の増加とする考え方。いわゆる取得型所得概念の一つである。この考え方は、制限的所得概念に比べて所得の概念を広く捉えることとなるので、所得税の再分配機能景気調整機能を充分に発揮できるという利点がある。日本はこの立場を採用している。

所得税の歴史

ここでは所得税の歴史について記述する。

世界の所得税

2005年の経済協力開発機構の統計に基づく国別の所得税の比較.[1]

日本の所得税

1887年(明治20年)導入

当初は所得税という名称は用いられず、富裕税と称し、大部分の一般国民は課税対象外であった。それというのも年間300円以上所得のある個人かつ家制度において家長とされた戸主のみに限って課税の対象としたものであり、富裕税を納税することが、いわばステータスシンボルとなっていたため「名誉税」との別名で呼ばれていたほどであった。 この富裕税は、プロイセンの制度を基準としながらも、所得の多寡を5段階に区分、わずか最低1%から最高3%の低い税率にて累進課税方式を採用していた [2]。なお、この新税の対象とされたのは、当時の全戸数(戸主の総数)の1.5%にあたる12万人が対象となり、納税額も国税収入のうちの0.8%程度であった。

この新税導入の動機としては、に対抗して海軍の増強・整備が急がれたこと、地租酒造税などに偏った租税負担のあり方が自由民権運動によって反政府側から批判されたこと、大日本帝国憲法によって設置が予定されていた衆議院衆議院に納税額による制限選挙が導入されたために大規模土地所有者(地租の納税義務者)以外の資本家に対しても選挙権を保障して政治参加を認めるための環境整備のためなどが挙げられている(この3年後である1890年に行われた日本最初の国政選挙である第1回衆議院議員総選挙においては、満25歳以上の男性で直接国税15円以上を納めている者に選挙権が付与された。

1899年(明治32年)改正

所得を3種類に区分し、第1種を法人所得、第2種を公社債利子所得、第3種を300円以上の個人所得とした。

1940年(昭和15年)改正

法人税法の制定によって従来の第1種が所得税から分離されて法人税となった。また、分類所得税と総合所得税の2本立てとなり、前者において所得種類別に異なった税率を適用するとともに勤労所得への源泉徴収制度が導入され、後者において所得合計が5,000円以上の者に10-65%の高度の累進課税をかけた。これは戦時体制の強化に伴って不労所得及び高額所得者に対して極端な重課を行い、同時に低所得者からも確実に徴収を行うことによって、税制の面から「贅沢は敵だ」「欲しがりません勝つまでは」といったスローガンを国民各層に定着させる意図があったとも言われている。

1947年(昭和22年)改正

申告納税の導入によって、所得税の一本化(総合所得合算申告納税制度)が図られる。

所得税の納税義務者

所得税の課税標準

日本の所得税は、課税標準として、総所得金額・退職所得金額・山林所得金額の3つを設けている。これは、総合所得税課税を基本としつつ、退職所得及び山林所得については分離所得税課税を実現するものである。

所得の種類

非課税所得

所得

以下、所得税法を「法」と表記する。

これらの内、利子所得、配当所得および不動産所得は資産性所得であり、給与所得、退職所得は勤労性所得である。事業所得および山林所得は、資産性所得と勤労性所得が結合したものといわれる。資産性所得と勤労性所得は、ともに恒常性所得に該当する。さらに、譲渡所得および一時所得は、臨時所得に該当する。そして雑所得は、これら9種類の所得のいずれにも該当しない所得をいう。

高所得者層優遇論

昨今、日本では定率減税廃止など中所得者への増税が進んでいる。所得税の最高税率は1986年までは70%であったが、一旦37%まで下がり、2007年度では40%(課税標準1800万円以上)になっている。

所得税の利点

  • 累進課税を導入すれば、富裕層から多額の税を徴収することができ、所得の再配分が行われる。
  • 申告することによって税金への関心を高め、ひいては政治への関心を高める。

所得税の欠点

  • 累進課税を導入した場合、制度や税金の計算が複雑である。
  • 節税脱税が行いやすく、源泉徴収される給与所得者は申告納税をする自営業者に対して不公平感を抱きやすい(「クロヨン」「トーゴーサンピン」)。

所得控除

詳細は確定申告

税率

税額控除

  • 配当控除
  • 外国税額控除

所得税の最高税率の推移

  • 1986年   70.0%
  • 1987年   60.0%
  • 1989年   50.0%
  • 1999年   37.0%
  • 2007年   40.0%

所得税の税率の推移

  
1974年~1984年~1987年~1988年~1989年~1995年~1999年~2007年~
60万円以下 10% 50万円以下 10.5% 150万円以下 10.5% 300万円以下 10% 300万円以下 10% 330万円以下 10% 330万円以下 10% 195万円以下  5%
60万円超    12% 50万円超      12% 150万円超      12% 300万円超    20% 300万円超    20% 900   〃        20% 330万円超    20% 195万円超    10%
120   〃      14% 120   〃        14% 200   〃         16% 600   〃        30% 600   〃        30% 1800   〃       30% 900   〃        30% 330   〃       20%
180   〃      16% 200   〃        17% 300   〃         20% 1000   〃      40%1000   〃      40% 3000   〃       40% 1800   〃      37% 695   〃       23%
240   〃      18% 300   〃        21% 500   〃         25% 2000   〃      50% 2000   〃      50% 3000万円超    50%   900   〃       33%
300   〃      21% 400   〃        25% 600   〃         30% 5000   〃      60%       1800   〃     40%
400   〃      24% 600   〃        30% 800   〃         35%          
500   〃      27% 800   〃        35% 1000   〃        40%          
600   〃      30% 1000   〃       40% 1200   〃        45%          
700   〃      34% 1200   〃       45% 1500   〃        50%          
800   〃      38% 1500   〃       50% 3000   〃        55%          
1000   〃    42% 2000   〃       55% 5000   〃        60%          
1200   〃    46% 3000   〃       60%            
1500   〃    50% 5000   〃       65%            
2000   〃    55% 8000   〃       70%            
3000   〃    60%              
4000   〃    65%              
6000   〃    70%              
8000   〃    75%              

税収の推移

財務省の統計を参照(単位:100万円)

  • 平成14('02)年度 源泉分 12,249,159 申告分2,563,068 計14,812,227
  • 平成13('01)年度 源泉分 15,030,134 申告分2,776,378 計17,806,512
  • 平成12('00)年度 源泉分 15,878,457 申告分2,910,448 計18,788,905
  • 平成11('99)年度 源泉分 12,618,587 申告分2,828,243 計15,446,830
  • 平成10('98)年度 源泉分 13,765,760 申告分3,230,352 計16,996,112
  • 平成9('97)年度 源泉分 15,402,987 申告分3,779,748 計19,182,735

脚注

  1. ^ OECD Tax Database”. Organisation for Economic Co-operation and Development. 2007年1月30日閲覧。
  2. ^ 新税導入の際に、当初は低い税率で、あるいは取り扱う資金規模の大きい者のみを対象とすることによって反対意見を封殺して新税成立に持ち込み、後に税率や納税義務者の範囲を順次拡大していく手法は消費税導入の際にも手本とされた。

関連項目

参考文献

  • 安部忠 『所得税廃止論 税制改革の読み方』 光文社、1994年。ISBN 4-334-01292-2