コンテンツにスキップ

Ε

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ギリシア文字
Αα アルファ Νν ニュー
Ββ ベータ Ξξ クサイ
Γγ ガンマ Οο オミクロン
Δδ デルタ Ππ パイ
Εε エプシロン Ρρ ロー
Ζζ ゼータ Σσς シグマ
Ηη イータ Ττ タウ
Θθ シータ Υυ ウプシロン
Ιι イオタ Φφ ファイ
Κκ カッパ Χχ カイ
Λλ ラムダ Ψψ プサイ
Μμ ミュー Ωω オメガ
使われなくなった文字

()
ディガンマ サン
ヘータ ショー
ギリシアの数字
スティグマ
()
サンピ

()
コッパ

Ε, ε(エプシロン、ギリシア語: έψιλονギリシア語ラテン翻字: epsilon)は、ギリシア文字の第5字母であり、母音[e]を表す。数価としては5を表す。ラテンアルファベットEキリル文字Е, Є, Ѐ, Ё, Э はこの文字を起源とする。

本来の発音に近いカタカナ表記は「エプシロン」であるが、日本における一部の分野あるいは業界の慣習ではラテンアルファベットの E(イー)につられて「イプシロン」と表記・呼称されることがある。しかし「イプシロン」は現代ギリシア語では Υ, υ を指すため、文脈によって判断できない場合は混乱を招く可能性がある。英語の発音は英国英語と米国英語でいくつかの違いがあるが、日本語で無理やりカタカナ表記するならば「プスィロン」「エプサイロン」[1]や「プサラン」「エプサイラン」[2]のように発音される(太字部分に強勢アクセントがある)。

起源[編集]

フェニキア文字 𐤄 (ヘー)に由来する。フェニキア文字では無声声門摩擦音[h]を表す文字だったが、ギリシア文字では母音[e]を表す文字に転用された[3]。古くは短母音以外に長母音もこの文字で表されたが、後に狭い[eː ]ειで、広い[ɛː ]ηで表されるようになった[4]

文字名称は古くはエー ( εἶ ) であり、これはセム語名ヘーに由来するか、または単純に母音[e]を伸ばしたものと考えられる[5]。2世紀ごろに二重母音αιが同音の[e]に変化し、ビザンチン時代の文法学者が両者の区別のためにɛをエプシロン(ἒ ψιλόν、単なるエ)と呼んだのが現代の名称の由来である[6]

記号としての用法[編集]

数学や科学分野などで、小文字の「ε」が記号として使われることがある。大文字の「Ε」はアルファベットのEとほとんど区別がつかないため、一般的に使われることはない。

商品名・固有名等[編集]

符号位置[編集]

大文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 小文字 Unicode JIS X 0213 文字参照 備考
Ε U+0395 1-6-5 Ε
Ε
Ε
ε U+03B5 1-6-37 ε
ε
ε
Έ U+0388 - Έ
Έ
έ U+03AD - έ
έ

脚注[編集]

  1. ^ 西脇順三郎全集: 文学論 1-2. 1971:315.
  2. ^ epsilonの意味・使い方・読み方|英辞郎 on the WEB
  3. ^ Allen (1987) p.53
  4. ^ Allen (1987) pp.70-75,90
  5. ^ Allen (1987) p.169
  6. ^ Allen (1987) pp.172-173

参考文献[編集]

  • W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558