自然リンパ球

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自然リンパ球 (Innate lymphoid cells, ILCs) とはリンパ球系に属する自然免疫細胞であるが、抗体特異的な応答はせず、B細胞、およびT細胞受容体を持たない.[1] この細胞群は様々な生理的機能を持っており、あるものはヘルパーT細胞類似である一方、細胞傷害性のナチュラルキラー細胞(NK細胞)も含む。従って、これらは免疫系において恒常性維持や炎症反応に重要な役割を持っており、異常な場合にはアレルギー自己免疫疾患のような免疫疾患を引き起こす[1]

分類[編集]

自然リンパ球は産生するサイトカイン、およびその発生と機能を制御する転写因子により分類される。いずれの系列においても、新しく発見された細胞の分類には最終分化した細胞であるか、分化途中のものであるかを決定することが重要である[2] 。

既存の自然リンパ球を3つのグループに分けることが提案されている[3]

グループ1[編集]

グループ1に属するILCはインターフェロンγおよび TNFに代表される 1型サイトカイン群を産生し、NK細胞およびILC1を含む。

  • ILC1は弱い細胞傷害性を持つ細胞で、ILC3に類似しており、それらから誘導されうる。

グループ2[編集]

グループ2に属するIL-4, IL-5, IL-9, IL-13のような2型サイトカイン群を産生する。

ILC2 (ナチュラルヘルパー細胞、nuocytes, 自然2型ヘルパー細胞などとも呼ばれる[4] ) は寄生虫に対する2型サイトカイン応答に決定的な役割を示す。また、アレルギー性の肺炎症への関与が示唆されている。ILC2は特徴的な表面マーカーおよびケモカイン受容体を持っており、リンパ球の特定臓器への分配に関わる。発生時、これらの細胞に必要である転写因子(RORα、およびGATA3) の活性化に IL-7 が必要である。ILC2は肺におけるTh2抗原への応答に必須であるが、全身性のTh2抗原応答には必要ではない[5]

グループ3[編集]

グループ3に属するILCは IL-17A または IL-22 を産生する能力により特徴付けられる。ILC3、およびリンパ組織誘導細胞 (lymphoid tissue-inducer (LTi) cells)を含む。

  • ILC3 は IL-22 を産生し、NKp46 (an NK cell activating receptor) を発現するリンパ球集団である。にも関わらず、ILC3 は NK細胞と異なり、転写因子RORγを必要とし、細胞傷害性因子を持たず (perforin, granzymes and death receptors)、 IFNγ および TNF を産生しない。主として粘膜組織に見られ、特に消化器に見られる。
  • リンパ組織誘導細胞 (LTi細胞)リンパ系の発生に必要な分子群を発現するILCの一群である。これらは、胚発生中のリンパ系の発生に必須であり、出産後もリンパ系の構造維持に必要である。さらに、T細胞の免疫記憶の維持にも関わっている[6]

発生[編集]

リンパ球性共通前駆細胞 (CLP) は与えられるシグナルに応じてT細胞B細胞、そしてILCを含む様々な細胞に分化することが出来る。NK細胞を除き、すべてのILCは生存のためにIL-7シグナルが必要である。リプレッサーID2はB細胞、およびT細胞分化に拮抗し、ID2依存性前駆体へと分化させる。この前駆体はさらに系統特異的な転写因子により分化する。ILCの異なるグループは共通の前駆細胞を持つことが明らかとなっている [7]。 この共通前駆細胞への初めの分化に Notchシグナリングが必要である可能性が示唆されているが、ILCの発生は完全には明らかになっていない [8]。 ILC3はILC1の前駆体である可能性がある [9]

参考文献[編集]

  1. ^ a b Walker, Jennifer A.; Jillian L. Barlow; Andrew N. J. McKenzie (February 2013).
  2. ^ Lanier, Lewis L. (25 January 2013).
  3. ^ Spits, H. et al.
  4. ^ Neill, Daniel R; See Heng Wong, Agustin Bellosi, Robin J Flynn, Maria Daly, Theresa K A Langford, Christine Bucks, Colleen M Kane, Padraic G Fallon, Richard Pannell, Helen E Jolin, Andrew N J McKenzie (2010-04-29).
  5. ^ Gold, Matthew J; Antignano, Frann; et al.
  6. ^ Withers, David R; Fabrina M Gaspal, Emma C Mackley, Clare L Marriott, Ewan A Ross, Guillaume E Desanti, Natalie A Roberts, Andrea J White, Adriana Flores-Langarica, Fiona M McConnell, Graham Anderson, Peter J L Lane (2012-09-01).
  7. ^ Walker, Jennifer A.; Jillian L. Barlow; Andrew N. J. McKenzie (February 2013). “Innate lymphoid cells — how did we miss them?”. Nature Reviews Immunology 13 (2): 75–87. doi:10.1038/nri3349. ISSN 1474-1733. http://www.nature.com/nri/journal/v13/n2/abs/nri3349.html 2013年8月3日閲覧。. 
  8. ^ Leavy, Olive (25 January 2013). “Innate-like lymphocytes: Will the real ILC1 please stand up?”. Nature Reviews Immunology 13 (2): 67–67. doi:10.1038/nri3397. 
  9. ^ Spits, Hergen; Cupedo, Tom (23 April 2012). “Innate Lymphoid Cells: Emerging Insights in Development, Lineage Relationships, and Function”. Annual Review of Immunology 30 (1): 647–675. doi:10.1146/annurev-immunol-020711-075053. 

関連項目[編集]