狛犬 (将棋)

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狛犬(こまいぬ)は[1]将棋の一つ。本将棋にはなく、大大将棋摩訶大大将棋泰将棋大局将棋に存在する。

遺跡発掘時の出土墨書木札に、けものへんを除いた俗称の「しろいぬ」として盲虎と共に記載されており、鎌倉末期から南北朝時代にかけてより存在していたことが示唆されている。天竺大将棋より上位の将棋で初めて現れる駒としては、出現年代が飛びぬけて早い[2]

大大将棋・泰将棋[編集]

西戎成駒。成ると大象[3]


元の駒 動き 成駒 動き
狛犬(こまいぬ)
       
       
       

       
       
       
全方向に以下の動きができる[4]
  • ■に行ける。
  • ■に行き、元の位置に戻る(じっと)。■に敵駒が在ればそれをとることができる(居食い)。
  • ■に行き、さらにその直線上にある□に行ける。■、□に敵駒が在ればそれをすべてとることができる。
  • ■に行き、さらにその直線上にある□に行き、■に戻れる。■、□に敵駒が在ればすべてとることができる。
  • ■に味方駒がある場合、その直線上にある□に飛び越えて行ける。
  • ■に行き、さらにその直線上にある□に行き、さらにその直線上にある◆に行ける。■、□、◆に敵駒が在ればそれをすべてとることができる。
  • ■に味方駒がある場合、その直線上にある□に飛び越えて行け、さらにその直線上にある◆に行ける。□、◆に敵駒が在ればすべてとることができる。
  • ■に味方駒があり、さらにその直線上にある□にも味方駒がある場合、その直線上にある◆に飛び越えて行ける。
大象(たいぞう)[5]
   
   

   
   
縦横と斜め後ろに何マスでも動け、斜め前に2マス動ける。飛び越えては行けない[6]

摩訶大大将棋[編集]

成ると金将

元の駒 動き 成駒 動き
狛犬(こまいぬ)
       
       
       

       
       
       
全方向に以下の動きができる。
  • ■に行ける。
  • ■に行き、元の位置に戻る(じっと)。■に敵駒が在ればそれをとることができる(居食い)。
  • ■に行き、さらにその直線上にある□に行ける。■、□に敵駒が在ればそれをすべてとることができる。
  • ■に行き、さらにその直線上にある□に行き、■に戻れる。■、□に敵駒が在ればすべてとることができる。
  • ■に味方駒がある場合、その直線上にある□に飛び越えて行ける。
  • ■に行き、さらにその直線上にある□に行き、さらにその直線上にある◆に行ける。■、□、◆に敵駒が在ればそれをすべてとることができる。
  • ■に味方駒がある場合、その直線上にある□に飛び越えて行け、さらにその直線上にある◆に行ける。□、◆に敵駒が在ればすべてとることができる。
  • ■に味方駒があり、さらにその直線上にある□にも味方駒がある場合、その直線上にある◆に飛び越えて行ける。
金将(きんしょう)
     
   
 
 
       
         
縦横と斜め前に1マス動ける。

大局将棋[編集]

西戎吼犬成駒。成ると大象

元の駒 動き 成駒 動き
狛犬(こまいぬ)
           
           
           
           

           
           
           
           
全方向に何マスでも動ける。この時飛び越えては行けない。また、全方向に3マス先へ飛び越えて行ける。 大象(たいぞう)
       
       
    3    
3
3
    3 3 3    
       
       
斜め前に3マス動ける。この時飛び越えては行けない。また、縦横と斜め後ろに駒を3個まで飛び越えて何マスでも動ける。

その他[編集]

関西将棋会館の対局室「水無瀬の間」には「狛犬」の飾り駒が置かれており、テレビやインターネットで公式戦の中継が放映される際、背景に映ることが多い[7] [8]

脚注[編集]

  1. ^ 象棋六種之図式』では「はけん」と読みが振られている。
  2. ^ 石井進・大三輪龍彦編『よみがえる中世《3》武士の都鎌倉』(平凡社、1989年)。「文字のある生活」のP221右下写真。
  3. ^ 象戯図式』と『諸象戯図式』には、成駒についての記述が欠落している。
  4. ^ 象戯図式』『諸象戯図式』『象棋六種之図式』では、全方向に3マスまで動けるとなっており(象棋六種之図式は前方のみ2マス)、他の駒を飛び越えたり、戻ったりする動きは記述されていない。
  5. ^ 象棋六種之図式』では、「だいざう」(だいぞう)と読みが振られている。
  6. ^ 象棋六種之図式』では、縦横と斜め後ろには3個まで駒を飛び越えて何マスでも動け、斜め前に2マス動けるとなっている。
  7. ^ 関西の「将棋世界」に行きたくなる?関西将棋会館に山口女流1級が潜入し、将棋道場や対局室などを隅々までご案内します!日本将棋連盟公式HP「将棋コラム」 2018年6月20日
  8. ^ 将棋第77期名人戦A級順位戦 羽生善治竜王-稲葉陽八段 第18局の1 毎日新聞 2018年10月30日

参考文献[編集]

関連項目[編集]