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公共図書館

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公共図書館(こうきょうとしょかん)とは、不特定多数の一般公衆の利用に供することを目的として設立、運営されている図書館のこと。図書館と呼ばれる社会施設の間でも、地域の住民にとってもっとも身近な存在であり、地域の人々に読書をはじめとする情報サービスを提供することにより、人々が知識と情報を得たり、レクリエーションを享受することを助けることを目的としている。

近代的な図書館のもつ社会的使命を一般公衆すべてに対して行う公共図書館は、近代国家にとって不可欠の社会施設とみなされていて、世界のほとんどの国、数多くの町に設置されている。多くの場合、公共の機関や組織によって運営されており、日本では大半の公共図書館は地方公共団体が設置主体であるが市役所などと異なり土曜日日曜日でも開館しているところが多くその代わりに月曜日若しくは、火曜日を休館日とするところが多い。なお、祝日は地域や図書館によって開館しているところと休館しているところがある。また、年末年始は休館するところが多く、それ以外に、蔵書を整理、確認するために年に一度、数日か一週間以上特別整理休館になる場合がある。

定義

「公共図書館」という名称は英語の public library に対応しており、文字通りパブリック(公共)に開かれた図書館という意味である。ユネスコの『公共図書館宣言』によれば、公共図書館は利用者が年齢、性別、国籍、身分などの社会的条件を問わず等しくサービスを行い、地域において人々が知識と情報を得るためのセンターであるとされる。

日本においては、1950年制定の図書館法第2条において、図書等の資料を収集し、一般公衆の利用に供しその教養、調査研究、レクリエーションに資することを目的とする公立(都道府県または市町村が設置)および私立(日本赤十字社または民法上の公益法人が設置)の施設という定義が行われており、これが日本の公共図書館を定義づけていると理解されている。

しかし、図書館法では「公共図書館」という語は用いられておらず、第2条も単に同法上において「図書館」と呼ばれる施設について定義しているに過ぎない。従って、「公共図書館とは何か」を法的に厳密に定める根拠は存在しない。日本においては現実には私立の図書館は特定の人々のみをサービスの対象としている専門図書館が大半であるので、単に公共図書館といった場合、図書館法上の図書館の中でも公立図書館のみを限定的に指す例がしばしばみられる。

サービス

伝統的には、主に書籍雑誌新聞などの逐次刊行物を収集・所蔵し利用者に対して提供しているが、近年ではビデオテープカセットテープCDDVDなども提供されるようになっている。中にはインターネットの端末を利用者の自由な利用に供する公共図書館もあり、地域において公共に開かれた情報拠点となっている。

公共図書館の図書館サービスは無料を原則としており、利用者は図書館の利用代金は、複写郵送にかかる実費の負担を除き、課されることはない。しかしニューヨーク公共図書館など世界の一部の公共図書館では、有料でビジネス支援などの高度なサービスを行っている場合もある。日本では、図書館法により公立図書館(公立の公共図書館)は利用に代価を徴収することを禁じられているが、私立図書館(私立の公共図書館)はその限りではなく、法律の規定の上では利用料を設定することも可能である。

資料の提供は、館内での閲覧にとどまらず、館外への貸出まで行っていることがほとんどである。また利用者が資料に直に接して自由に利用できるようにするため、資料を閲覧スペース内に設けた書架に配置する開架式が一般的である。しかし調査研究の機能を重視し、閉架式で一般利用者に対する貸出を行わない公共図書館も存在しないわけではない。

公共図書館が資料を貸出などによって無料で利用できることに対しては、本来その資料が読者によって購入されることにより、商業的に利益を得ることができたはずである著作権者出版者の権利を侵害しているとみなされることがある。このため、ヨーロッパを中心にいくつかの国では、国などの公的な機関が権利者に代償金を交付する公貸権制度が設定されている。

歴史

知識の集積である図書を収めた図書館を、単なる書物の収蔵庫としてだけではなく、学ぼうとする意欲のある公衆に公開することを行った例は、古く古代ギリシア古代ローマなど人類の歴史の比較的早い時期からみられる。古代における公共施設としての公開図書館を例外として、古い時代の多くの公開図書館は、学者や政治家などの蔵書家が私的コレクションを篤志により一時的に公衆の利用に開放したものがほとんどであった。日本においても石上宅嗣の「芸亭(うんてい)」など、図書館のはしりとみなされる文庫はそうした性格をもつ図書館であったということができる。

16世紀から18世紀頃のイギリスフランスアメリカなどではこうした篤志家による一般公開図書館の規模、数量、存続期間などが拡大し、また貸出など近代的な図書館サービスも行われるようになって、恒常的な公共図書館への道が開かれた。また、1731年にアメリカのベンジャミン・フランクリンらが設立したフィラデルフィア図書館会社を端緒として、図書館会社によって運営される会員制図書館が流行し、英米を中心に市民の読書に対する欲求を満たすための図書館が誕生していった。19世紀に入ると各地で市民の不特定多数をサービスの対象とする公立の図書館が設立され、公共図書館は博物館などと並んで、近代国家に不可欠の社会施設としての地位を確立する。

欧米における図書館の発展は、開国後の日本にもいち早く伝えられ、明治の初年には各地で新聞縦覧所、集書院などの名称をもつ施設が設立されて、新聞などの情報メディアを公衆に公開する試みが行われた。

明治期中期以降には公衆を利用の対象とする図書館は「通俗図書館」などの名称をもって呼ばれ、その設立は主に都道府県や市町村よりも、地域の教師などの教育関係者や、教育に関心をもつ有力者によって構成された「教育会」と呼ばれる半官半民の団体や、あるいは個人の篤志家が設置母体となって推進された。明治後期以降は図書館に関する法規や制度が整備され、大正期から昭和初期にかけては公立図書館の設立が進む。

しかし順調に発展を続けてきた日本の公共図書館は、太平洋戦争による財政難、被災などにより大きな打撃を受け、数多くの図書館が閉鎖や縮小を余儀なくされた。戦後の復興期には自動車による移動図書館(ブックモービル)が各地の公立図書館によって運用され、図書館が身近に存在しない地域にサービスを広げるきっかけになった。また、戦前の図書館が国民の思想善導、教育といった統制的な性格を強く持っていったことが反省され、一般公衆に等しくサービスを行う公共図書館の概念が1950年制定の図書館法を通じて導入された。

1960年代以降、高度経済成長を経て公立図書館の新設が相次いだ。また各地の公立図書館では公民館小学校などに併設した分館の設置が進められ、より住民に身近な地域の図書館が目指された。この結果公共図書館は量的に充実し、現在ではすべての都道府県、多くの市町村に公共図書館が設置されるに至っている。サービスについてみると、戦後の図書館は貸出サービスの拡大が顕著であり、多くの人々を読書に親しませる拠点としての役割を果たすようになった。

代表的な公共図書館

日本の公共図書館

公立

北海道・東北

関東

北陸・甲信越

東海

近畿

中国

四国

九州・沖縄

私立

世界の公共図書館

外部リンク

『中小都市における公共図書館の運営』(略称:中小レポート)とは1963年に日本図書館協会から出版されたレポートである
日本の公共図書館に大きな転機をうながしたと言われている。

目的

中小公共図書館は公共図書館の中でも中核をなす存在であり、故に住民に直接的に関るべき中小図書館の運営基準について、新たな活路を見出そうという目的で作成された。 中小レポート以前の図書館は閲覧主体であり、教育の場としての図書館であったため、一般市民には疎遠であった。その現状を憂い、貸出し中心の図書館への転換を推進しようと提起されたものである。