死亡遊戯で飯を食う。

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死亡遊戯で飯を食う。
ジャンル デスゲーム[1]
小説
著者 鵜飼有志
イラスト ねこめたる
出版社 KADOKAWA
レーベル MF文庫J
刊行期間 2022年11月25日 -
巻数 既刊3巻(2023年4月25日現在)
漫画
原作・原案など
  • 鵜飼有志(原作)
  • ねこめたる(キャラクター原案)
作画 万歳寿大宴会
出版社 KADOKAWA
掲載誌 月刊コンプエース
発表号 2023年6月号 -
発表期間 2023年4月26日 -
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル漫画
ポータル ライトノベル漫画

死亡遊戯で飯を食う。』(しぼうゆうぎでめしをくう)は、鵜飼有志による日本ライトノベルイラストはねこめたるが担当している。MF文庫JKADOKAWA)より2022年11月から刊行されている。

デスゲームの賞金で生活しながら、デスゲームでの連勝を目指す主人公・幽鬼の物語[1]

万歳寿大宴会によるコミカライズが『月刊コンプエース』(KADOKAWA)にて2023年6月号から連載中[2]

あらすじ[編集]

第1巻
ゴーストハウス(28回目)
幽鬼にとって28回目のゲーム。メイド服を着用した6人のプレイヤーによる洋館での脱出ゲームであり、幽鬼以外のプレイヤーはほぼ初心者。幽鬼は偏ったゲームバランスを訝しみ、経験者として初めての引率に苦労しながらも他の5人と脱出を目指す。
キャンドルウッズ(9回目)
幽鬼にとって9回目のゲーム。森林を模したエリア内での30人の〈切り株〉と300人のうさぎによる鬼ごっこで、鬼である〈切り株〉は制限時間内にそれぞれが5人のうさぎを殺害すること、うさぎは制限時間まで生き残ることでゲームクリアとなる。幽鬼は師匠の白士とともにうさぎとして参加するが、プレイヤーの1人である殺人鬼伽羅が、他プレイヤーの虐殺を始める。
ライフタイムジョブ
キャンドルウッズ終了後、当ゲームは過去最大の参加人数と過去最低の生還率を記録したゲームとして知られるようになる。幽鬼は伽羅との戦いで生き残るために叫んだでまかせを機に、伽羅に敗北した白士に代わり、ゲームでの99連勝を自分の目標に決める。
第2巻
スクラップビル(10回目)
幽鬼にとって10回目のゲーム。キャンドルウッズから3か月の間を置いて幽鬼が挑んだのは、時限爆弾が仕掛けられた廃ビルからの脱出ゲームだった。ゲームに隠された要素に気づいていた幽鬼は、自分以外の4人のプレイヤーが顔見知りの状況で、リーダーの御城と衝突しながらも、危険を顧みずに他のプレイヤーを助けていき、最終的には自分が格上であることを御城に知らしめる。
ゴールデンバス(30回目)
幽鬼にとって30回目のゲーム。幽鬼はゴーストハウスで死亡したプレイヤー金子の父親から、ゲームの運営を壊滅させるための手伝いを依頼される。三十の壁を前にして不調が続く幽鬼は明確な返事ができないまま、銭湯からの脱出ゲームに挑む。脱出のためのアイテムである下足札の数には限りがあり、プレイヤーは出口付近の玄関で札を持った他のプレイヤーを待ち伏せしている最多人数のチームと、出遅れて露天風呂を拠点とするチームに分かれていた。幽鬼が露天風呂のチームに合流する一方、玄関のチームのリーダーとなっていたのは、幽鬼へのリベンジを目標とし、すでに30回以上のゲームをクリアしていた御城だった。
クリムゾンレーキ
ゴールデンバスをクリアし三十の壁を乗り越えた幽鬼は、自宅へ向かう車の中で専属のエージェントと言葉を交わす。ゲーム開始前、幽鬼は誤って会場への送迎時に服用する睡眠薬だけでなく、金子の父から受け取った発信機も飲み込んでいた。エージェントはそのことへの咎めではなく、運営からプレイヤーへの期待とその障害の排除を約束する言葉を送る。
第3巻
ワンファインデイ(40回目)
幽鬼にとって40回目のゲーム。キャンドルウッズから約1年半後、ゲームの業界は伽羅の殺戮によって受けたダメージから回復しつつあった。幽鬼は遊園地内で武器を持った着ぐるみの処刑人相手に一定期間生き残るゲームを難なくクリアし、ゴールデンバス後に施された義指の定期メンテナンスのために訪れた職人のもとで、自分と同じくキャンドルウッズを生き残ったプレイヤー藍里と再会する。
クラウディビーチ(44回目)
幽鬼にとって44回目のゲーム。クローズドサークルを意図した孤島での8人のプレイヤーによる一週間のゲームで、事前にひとりだけルール説明を受けていた犯人役は3人のプレイヤーの殺害、他の7人はゲーム期間内の生存をクリア条件として設定されていた。幽鬼と藍里は被害者たちの惨殺死体から、伽羅の弟子が犯人役だと予想するが、犯人役の正体は白士の元弟子の1人永世だった。ゲーム終盤、幽鬼は相弟子の永世と直接対決する。
リーブ・ザ・フロントライン
白士がキャンドルウッズで生き残っていたことを彼女の知り合いのプレイヤー古詠から教えてもらった幽鬼は、クラウディビーチ後に白士の行きつけのバーで白士と再会する。

登場人物[編集]

主人公[編集]

幽鬼ユウキ
本作の主人公[2]。17歳[2]。幽霊のような風貌が特徴のプレイヤー[3]。当初は強い動機を持たないままゲームへの参加を繰り返していたが[4]、キャンドルウッズ後は生きる理由として99回のゲームクリアを目指すようになった[5]。ゲームでは生き残りの戦略として、可能な限り利他的なプレイスタイルをとる[6]。本名は反町 友樹そりまち ゆうき[7]
鵜飼は幽鬼について、自分の一部分の要素を極端に広げたキャラクターだと述べた[8]
二語十は幽鬼について、思考への理解がおよばず感情移入できないが、ある意味では圧倒的なヴィランを見ているような感じであり、過去を描くエピソードで幽鬼がそうなった理由が出てきてほしいという思いと、一方で背景が何もないのも敵キャラとして見た場合は魅力的だという思いがあることを述べた[8]

ゴーストハウスのプレイヤー[編集]

金子キンコ
金髪をツインテールにした華奢で小柄なプレイヤー[9]。必要以上に責任感が強く、親が作った借金を返済するためにゲームに参加した[10]
青井アオイ
内気で声の小さい青髪のプレイヤー[11]。ゲームへの参加理由については、金を得る方法がこれ以外にないからだと語った[12]
黒糖コクトー
アンダーグラウンドな雰囲気のプレイヤー[13]。ゲームに参加するのはゴーストハウスが2回目であり[13]、幽鬼以外では唯一の経験者[14]。普通の労働を馬鹿らしいこととして、手っ取り早く生活費を得るために参加した[15]
桃乃モモノ
肉感的な身体が特徴のピンク髪のプレイヤー[16]。自分の意思ではなく、運営側の人間に騙されてゲームに参加させられた[16]
鵜飼は本作で動かしていて楽しいキャラクターとして桃乃を挙げた[17]
紅野ベニヤ
王子様を連想させる長身で赤いショートヘアのプレイヤー[18]。自分が作った負債を返済するためにゲームに参加した[18]

キャンドルウッズのプレイヤー[編集]

白士ハクシ
幽鬼の師匠で、95回のゲームクリアを達成した最古参のプレイヤー[19]。身体には運営の関与しない独自の改造を施しており、全身を破壊されても死なない[20]。本名は白津川 真実しらつがわ まなみ[7]
生きるための目標を欲してゲームでの99連勝を目指していたが[21]、回数を重ねる中で肉体的な限界に近づいていき、96回目のゲームとなったキャンドルウッズで伽羅に敗北し、幽鬼が自分の後を継ぐ旨を宣言したことで引退を決めた[22]
墨家スミヤカ
オラついた容貌と酒やタバコで掠れた声を持つ、デスゲームの常連で幽鬼の知り合いのプレイヤー[23]。29回目のゲームとなるキャンドルウッズではうさぎとして参加した[24]
伽羅キャラ
伽羅色の髪が特徴の殺人鬼のプレイヤー[25]。自分が参加するゲームでは、弟子にした萌黄を除くプレイヤー全員を殺害してきた[26]。防弾目的で身体の至るところに鎧を埋め込んでいる[27]
10回目のゲームであるキャンドルウッズではうさぎとして参加するが、うさぎの着用するタイトなバニースーツよりも〈切り株〉のジャンパースカートを欲し、〈切り株〉を殺害して奪う際に手こずったため、八つ当たりとしてプレイヤーの虐殺を行なった[28]
鵜飼は本作で特に好きなビジュアルのキャラクターとして伽羅を挙げた。ねこめたるには髪色以外ははっきりした要望を出さず、自分もあまりイメージしていなかったという[17]
萌黄モエギ
なりふり構わない強者になることを悲願とするプレイヤー[29]。伽羅の弟子[30]
3回目のゲームとなるキャンドルウッズでは、〈切り株〉の中で唯一の経験者として、伽羅の指導を真似て他の〈切り株〉たちを恐怖で統率してゲームに臨んだ。
藍里アイリ
藍色の瞳が特徴のプレイヤー[31]。髪はキャンドルウッズ時点ではショートカットだったが、観客受けが良くなり賞金が増えやすくなるという助言を受けて伸ばし始めた[32]。本名は一瀬 藍里ひとせ あいり[7]
初めてのゲームであるキャンドルウッズでは〈切り株〉として参加し[31]、数少ない生存者の1人となった[7]。その後も他にこれだと思えるものもなく参加し続け、プレイ回数は幽鬼と再会した時点で30回を超えている[33]
二語十は本作で好きなキャラクターとして藍里を挙げ、第1巻の原稿の読後にビジュアルを見て、ある意味すごく平凡であり、得体の知れない素朴さやそういった矛盾を含めて良いキャラクターだと評した[17]

スクラップビルのプレイヤー[編集]

御城ミシロ
金髪を縦ロールにしたお嬢様風のプレイヤー[34]。優れた統率力を自負しており、ゲームではプレイヤーのまとめ役を担う[35]。スクラップビル後は失った右腕を義手で補い[36]、幽鬼へのリベンジを目的にゲームを続けていた[37]。弟子には幽鬼のことを何度も話しており、自分が失敗した場合は代わりに幽鬼を打ち負かすよう命じている[38]
言葉コトハ
眼鏡をかけた図書委員のような雰囲気のプレイヤー[39]。知識面で優れている[39]。ゲームで賞金を貯めて世捨て人になることを目的としている[40]
智恵チエ
茶髪をサイドテールにしたプレイヤー[41]。要領のよさそうな雰囲気で、器用貧乏と自評する[41]
毛糸ケイト
ひょろりとした体躯のプレイヤー[41]。強いプレイヤーにへつらうことで生き残ろうとするプレイスタイルをとる[42]

ゴールデンバスのプレイヤー[編集]

御城
吾妻アズマ
少年のような見た目と言動のプレイヤー[43]。周囲に馴染めなかった不登校児で、他者と関わる機会の少ないゲームに自分の意志で参加している[44]
狸狐リコ
小動物っぽいプレイヤー[45]。目的もなく参加した最初のゲームで身体の半分を失ったが、御城に見出されて彼女の弟子になった[46]。重いパンチを放つことができる義手と、生身より速く動くことができる義手を使用する[47]

クラウディビーチのプレイヤー[編集]

真熊マグマ
鍛えられた屈強な肉体を持つ、ゲームの常連で幽鬼の知り合いのプレイヤー[48]。個人の能力を高めることで生き残りを目指すプレイスタイルをとり、他のプレイヤーと不和を起こすことも少なくない[49]。43回目のゲームであるクラウディビーチでも[50]、犯人役の存在が発覚してからは単独行動をとる。
藍里
永世エッセイ
ふわふわした綿菓子のような髪を持つ、学者然としたゲームの常連のプレイヤー[51]。高い学習意欲と能力の持ち主で、最高の教材として白士に弟子入りし、彼女と同様の肉体改造を行なっている[52]。幽鬼とは顔見知りだが、相弟子であることは古詠から教えられるまで互いに知らなかった[53]
50回目のゲームであるクラウディビーチではプレイヤーのまとめ役を担うが、実は犯人役の正体だった。
日澄ヒズミ
小学生くらいの見た目をした、ふわふわした雰囲気のプレイヤー[54]。他のプレイヤーからは伽羅の弟子だとみなされているが[55]、藍里から伽羅について尋ねられた際には激昂して襲い掛かり、同一視されることを耐えがたく思っている様子を見せた[56]
古詠コヨミ
28歳だが年寄りのような雰囲気の古参のプレイヤー[57]。白士とは知り合いで、彼女から幽鬼や永世のことを教えられていた。死の気配を察知することを得意としており、キャンドルウッズの招待を受けた際には直感で断っていた[58]。20回目のゲームとなったクラウディビーチ後に引退を決意する[59]
海雲モズク
おどおどした特徴のないプレイヤー[60]。電気系の学部を2年目に中退した経歴を持つ[61]。10回目のゲームであるクラウディビーチでは[60]、8人の中でプレイ回数が最も少ないために萎縮するが、一方で犯人役の襲撃に備えた独自の対策を行う。
密羽ミツバ
マイペースで協調性に欠けるプレイヤー[62]。30回目のゲームであるクラウディビーチでもその姿勢を崩さず、一人で海で遊んでいる[63]。御城の元弟子であり[64]、幽鬼のことも教えられていたが、御城に代わって幽鬼を殺す気はなく[65]、御城や他の弟子と違い熱中できるものを持たないままゲームを続けている[66]

作中設定[編集]

防腐処理
デスゲームを鑑賞する人への配慮として、プレイヤーの肉体に施される処理[67]。空気に触れた血液が白い綿のような物質に変化するようになるほか、体臭がなくなり、遺体になっても腐敗しなくなる[67]
三十の壁
プレイ回数を重ねるほど生還率が高くなるはずのデスゲームにおいて、30回付近になると生還率が急に落ちる現象[68]。運営がゲームの難易度を操作しているわけではないらしく、白士からは呪いのようなものと評されている[69]

作風・制作背景[編集]

デスゲームのプレイヤーの衣装は毎回異なる。これは人狼ゲームを題材とした新都社の漫画『汝は人狼なりや?』が元ネタとなっている[8]

読者層については、鵜飼自身が高校生くらいまで本を読めていなかったため、同様の読者がいることを念頭に置いているという[17]

鵜飼によると、応募作の投稿時代は『探偵はもう、死んでいる。』や『スパイ教室』の隆盛から、それらはライトノベルの文法を用いてそれ以外のジャンルの話を展開していると解釈し、自分が書けるジャンルとしてデスゲームものに決め、それがトレンドだと思って執筆していたという[17]

評価[編集]

MF文庫Jライトノベル新人賞での評価[編集]

本作は第18回MF文庫Jライトノベル新人賞にて優秀賞を受賞した。審査員の1人であるさがら総によると、審査員2人が最高評価、もう2人が最低評価をつけて賛否が割れたという。最高点をつけたさがらは、最低評価もむべなるかなという感想とともに、叩いて丸めるのではなく尖りに尖らせて読者をどれだけ深く刺すことができるかで勝負すべき作品だと話した[70]

各巻での解説[編集]

探偵はもう、死んでいる。』の著者である二語十は、新人賞の審査会で本作が人を選ぶ作品であり賛否両論とされたことに言及し、そういったフレーズを用いて売り出される小説がたまにあること、それらのフレーズが作品のクオリティへの世間の批判を封じるための免罪符になっていないか、より多くの読者を楽しませる努力を怠っていないかという疑問を呈した上で、本作は多くの読者を楽しませようという意図を最大限に感じたと述べた。デスゲームものによく見られる過剰にグロテクスな表現に必ずしも頼るわけではなく、読者の想像に任せたり防腐処理の設定を生かしたりして読者の生理的嫌悪を抑えている点や、デスゲームの参加者によるコスプレがライトノベルとしてビジュアルを意識した作りになっている点などを評価した上で、本作が世間から受ける評価はやはり賛否両論であろうこと、評価が割れる大きな理由は主人公である幽鬼を受け入れられるかどうかであることを述べた[71]

スパイ教室』の著者である竹町は、従来のデスゲームもののお約束をことごとく無視した怪作だと評した。主人公について、共感できるような切実な理由がないことを述べ、前半部分の変更案を挙げた上で、そちらの方がつまらないものになっていると自評し、破茶滅茶な箇所を変更すると本作の魅力が消えてしまう、その滅茶苦茶さをわかろうとするのではなくただ堪能すればいいと評した。後半については絶賛というより激怒みたいな感想を抱いたと述べた上で、そうでなくてはつまらない、新人賞作品に求められるのは型破りで常識離れしたパワーであり、本作には唯一無二の読後感を抱かせる力があると述べた[72]

ライアー・ライアー』の著者である久追遥希は、デスゲームものである本作が新人賞で優秀賞を受賞したと聞いた際に、本作には何かしらの捻りがあるのだろうと予想したが、実際はストレートに人が死ぬゲームを題材にしており、万人受けしないテーマだと理解した上で飛び道具を用いず読者を楽しませようとする一面があると評した。また、主人公である幽鬼以外のキャラクターが巻を跨いで活躍することがない点について、幽鬼以外の推しキャラが発生しにくい構造だが、だからこそ「どうせ生還するキャラクター」ではなく「いつ命を散らしてもおかしくないプレイヤー」として認識せざるを得ないため、最後まで物語に緊張感を持たせていると述べた[73]

義妹生活』や『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?』などの著者である三河ごーすとは本作の第1巻を読んだ時点では、従来のデスゲーム作品と微妙にズレているという感想を抱いたという。第2巻の読後、その理由は本作がデスゲームを題材にしながら徹底的に日常的な課題を扱っているからだと述べた[74]

あの夏が飽和する。』の著者であるカンザキイオリは、本作がただのデスゲームものではなく、自分の意志でゲームに参加する登場人物たちは、命を弄ばれる側でありながらむしろ支配して弄んでいるようだと述べたほか、ゲームが場所や内容を変えて何度も続いているため、ゲームごとにジャンルも若干変わっていくと述べた。また本作の重心にあるのはさながら青春のような登場人物たちの感情のぶつかり合いと、それによって生じる熱い展開だと評した。防腐処理の設定が死のイメージを抑えてそこまでグロテスクに感じさせず、熱い展開を浮かび上がらせており、幽鬼とそれを取り巻く登場人物たちはただ生き残るために蹴落とす関係ではなく、プライドと感情に則ってバトル漫画のような殺し合いに惹き込まれたという[75]

『恋に至る病』の著者である斜線堂有紀は、本作を「極めて変則的な特殊設定ミステリ」と呼び、幽鬼の突飛な設定や個性豊かなプレイヤーたちの一方で、ルールで読者を導くフェアなミステリだと評した。また、本作の登場人物たちは繰り返しゲームに参加していることによって何度も同じ場所に居合わせ、共通認識を増やしているため、過去の事件(ゲーム)の情報も巧妙な伏線として機能し、ロングスパンで事件を描くことを可能にしており、「最新刊こそが最も面白い」というルールがあると述べた[76]

『一瞬を生きる君を、僕は永遠に忘れない。』の著者である冬野夜空は、どこまでいっても小説は娯楽で売れることが正義であり、執筆にあたってさまざまな打算が生まれるとした上で、本作ではそれらの打算を全て殺していると述べ、その理由は書き手が自分の思う面白いものを書くためであり、枠にはまらない本作は、ある意味で誰にも予想できず、どんな作品よりも無限大の可能性を秘めていると評した[77]

その他の評価[編集]

書評家のタニグチリウイチは、本作について、参加者が死ぬデスゲームを見て喜ぶ視聴者がいて、そのおかげで出る賞金によって食べていける参加者の少女たちの壊れた心理に触れられる作品、ダークさが虚ろな笑いを誘う作品と紹介し、連勝したいからという理由で命を賭け、勝つために命を奪う幽鬼のヒロイン像は挑戦的であると述べた。また、とにかくヤバいという感想を持ち、血まみれにならない工夫がなされているため、アニメになってもビジュアル的にはレーティングをクリアできそうなのが面白いが、死の場面を繰り返し見せられるヤバさは残り、連続する死に感覚が麻痺して命はばらまかれてこそ輝くものだと思えるところにもヤバさがあると述べた。主人公が不条理なゲームのシステムを破壊するために挑むような正義感ではなく、99連勝を達成したいという我欲を原動力としていることを挙げ、それゆえに正義の軸が存在しない世界観を浴びせられ、誰に気持ちを寄せて読むか迷った末の境地を考えると恐ろしくなるが、感情よりも利益を優先しなければ生き残れない今の社会で生きる人に沿っているものなのだとしたら、本作は最適だと評した[78][79][80]

ライターの太田祥暉は、デスゲームを連戦していく作品は、デスゲームもの特有の緊迫感とは別の軸が必要になるものであり、本作におけるそれはドライな少女が一歩引いた立場からデスゲームを俯瞰して勝ち進んでいく視点だと述べた。また、評論家の宇野常寛が理不尽な状況下でも攻略して生きていくことを主眼とした作品群を「サヴァイブ系」と呼称したことを紹介した上で、本作について、生き延びる術は探すが一人で勝ち進んでいこうとするのではなく、他プレイヤーと協調し、暴力的衝動にのめり込むわけでもないが、一つの矜持があると述べ、デスゲームもので新たな緊迫感を示すことに成功していると評した[1]

ラノベニュースオンラインアワード2022年11月刊」の投票アンケートでは、本作の第1巻が「総合部門」と「新作総合部門」で選出された[81]

既刊一覧[編集]

  • 鵜飼有志(著)・ねこめたる(イラスト)『死亡遊戯で飯を食う。』KADOKAWAMF文庫J〉、既刊3巻(2023年4月25日現在)
    1. 2022年11月25日初版発行(同日発売[82])、ISBN 978-4-04-681937-6
    2. 2023年1月25日初版発行(同日発売[83])、ISBN 978-4-04-682109-6
    3. 2023年4月25日初版発行(同日発売[84])、ISBN 978-4-04-682405-9

関連企画[編集]

第1巻の発売前には「幽鬼へのインタビュー」がTwitterの動画版とカクヨムのテキスト版で1か月かけて連載された。幽鬼の声は冥鳴ひまり(VOICEVOX)が担当した[85]

他にも本作の紹介動画が公開され、第1巻の発売後には「他プレイヤーから見た幽鬼」がTwitterの動画版とカクヨムのテキスト版で連載された[86]。幽鬼[87]、紅野[88]、伽羅[89]の声はありナ、金子[90]、萌黄[91]の声はおまめ、青井[92]、藍里[93]の声はむゆぬ、黒糖[94]、白士[95]の声はふるせ、桃乃[96]、墨家[97]の声はayuぱんだが担当した。

第2巻の発売時には中島由貴がナレーションを務めるPVが公開された[98][99]

第3巻の紙書籍の帯には、中島由貴が幽鬼の声を担当するボイスドラマ「幽鬼、恋人シチュのボイスを収録する」を視聴できるコードが付属した[100]

出典[編集]

  1. ^ a b c 太田祥暉(TARKUS) (2022年12月6日). “『死亡遊戯で飯を食う。』書評。これは不条理と理不尽あふれる世界で生き残るための処方箋【第18回MF文庫Jライトノベル新人賞《優秀賞》】”. 電撃オンライン. KADOKAWA. 2023年1月28日閲覧。
  2. ^ a b c “デスゲームが生きがい! 参加28回目、目指せ99勝「死亡遊戯で飯を食う。」新連載”. コミックナタリー (ナターシャ). (2023年4月26日). https://natalie.mu/comic/news/522350 2023年4月26日閲覧。 
  3. ^ 小説1巻, p. 187.
  4. ^ 小説1巻, pp. 136–137.
  5. ^ 小説1巻, pp. 236–250.
  6. ^ 小説1巻, pp. 25–26, 94.
  7. ^ a b c d 小説1巻, p. 234.
  8. ^ a b c 二語十; 鵜飼有志(インタビュー)「同時発売記念! 『探偵はもう、死んでいる。』著者・二語十&『死亡遊戯で飯を食う。』著者・鵜飼有志Wインタビュー」『ダ・ヴィンチWeb』、KADOKAWA、2023年1月31日https://ddnavi.com/interview/1079956/a/2023年2月8日閲覧 
  9. ^ 小説1巻, p. 31.
  10. ^ 小説1巻, pp. 31–32.
  11. ^ 小説1巻, pp. 36–37.
  12. ^ 小説1巻, p. 37.
  13. ^ a b 小説1巻, p. 32.
  14. ^ 小説1巻, p. 50.
  15. ^ 小説1巻, pp. 32–33.
  16. ^ a b 小説1巻, p. 34.
  17. ^ a b c d e 二語十; 鵜飼有志(インタビュー)「同時発売記念! 『探偵はもう、死んでいる。』著者・二語十&『死亡遊戯で飯を食う。』著者・鵜飼有志Wインタビュー」『MF文庫Jオフィシャルウェブサイト』、KADOKAWA、2023年2月4日https://mfbunkoj.jp/blog/new/entry-10439.html2023年2月8日閲覧 
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  99. ^ “『死亡遊戯で飯を食う。』のコミカライズが決定 殺人ゲームで日銭を稼ぐプロデスゲーマーの物語”. ラノベニュースオンライン (Days). (2023年2月3日). https://ln-news.com/articles/116035 2023年2月4日閲覧。 
  100. ^ shibouyugi_の2023年4月21日のツイート2023年5月4日閲覧。

参考文献[編集]

  • 鵜飼有志『死亡遊戯で飯を食う。』KADOKAWA〈MF文庫J〉、2022年11月25日。ISBN 978-4-04-681937-6 
  • 鵜飼有志『死亡遊戯で飯を食う。2』KADOKAWA〈MF文庫J〉、2023年1月25日。ISBN 978-4-04-682109-6 
  • 鵜飼有志『死亡遊戯で飯を食う。3』KADOKAWA〈MF文庫J〉、2023年4月25日。ISBN 978-4-04-682405-9 

外部リンク[編集]