機能不全家族

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家庭崩壊から転送)
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機能不全家族(きのうふぜんかぞく、: Dysfunctional Family)とは、家庭内に対立不法行為身体的虐待性的虐待心理的虐待ネグレクト等が恒常的に存在する家庭を指す。機能不全家庭(きのうふぜんかてい)とも称され、その状態を家庭崩壊(かていほうかい)、もしくは家族崩壊(かぞくほうかい)と言われている(英語では family breakdown と表記されている[1])。

概要[編集]

機能不全家族とは、「子育て」「団欒」「地域との関わり」といった、一般的に家庭に存在すべきとされる機能が、健全に機能していない家庭の問題を指す。そしてこの機能不全家族で指摘される問題は、家庭内での不健全な事象よりも、その機能不全家族の中で育った子供への悪影響を問題として指摘する場合が多い。つまり、機能不全家族内で育った子供は、機能不全な環境や考え方が当たり前であるかの様に認識して成長するケースが多く、また幼少期の重要な人格形成において愛情を得る機会が非常に乏しい事などにより、自己愛・自尊心、他者への共感、他者の苦しみに対する理解等に欠けた人間にもなりやすい。こうして、機能不全家族の中から「社会と健全な関係を築くことができない大人が輩出されてしまう」という結果が生じることになる。しかし、機能不全家族に生まれ育った者が全て必ず社会不適応な人間になるとは限らない。

機能不全家族となる要因としては、代表的なものとして、家族構成員のアルコール依存虐待(子供への暴言や威圧的態度も含まれる)、共依存などが挙げられる。更に、このような機能不全的な家庭となっている場合は、その家庭を構成する親、または祖父母などが、機能不全家族で育った経歴がある可能性も高い。

この機能不全家族において最も被害者となるのは、自らに生活力が無いため、その家庭から脱出することができない子供である。生活能力に乏しい子供は、このような不幸な状況から逃れることができず、歪んだ思想・観念を全身に受けながら生活しなければならない。そして、子供としての時期に学ぶべき社会規範や愛情を学ぶことができず、「親の奴隷」のような生活を強いられ、歪んだ思考を身につける事が多い。結果として、子供社会での適合ができにくく、様々な問題を引き起こす場合がある。周囲の児童が何故自由奔放に振る舞えるかが理解できず、他の児童の目から見れば非常におとなしかったり、他者とは異なる価値観や思考・行動パターンが原因でいじめの対象にもされやすい。

親から虐待を受けた子供は、幸運にも家庭から脱出できた場合、年老いた親を殊更に冷遇したり、または暴力的支配におよんだりなどして、「親への復讐」を始めるケースも見られる。酷い場合には、自分の親と同世代の老人全てに対して理由も無く憎悪や敵対心を抱くこともあり、「老人虐待」といった別の問題を惹き起こすことにもなる。

このような家庭問題(家族問題)の中で育った子供が、育った環境の不健全さに気づいた場合、過去に学んだ不健全な生活習慣からの脱却に向けて、莫大なエネルギーを費やして、回復の努力をしなければならないことが多い。しかしながら、機能不全家族の一番の問題点としては「(1)機能不全家族の中で育った子供が、育った環境の不健全さに気づかない場合に、自己の配偶者としても同様の歪んだ価値観をもったパートナーを選んでしまうこと」や「(2)親は無条件に正しく、全てを子供の原因だと決め付けて子供を泣き寝入りさせること」などが非常に多い。

凶悪犯罪などで犯人の精神鑑定を行ったり、生い立ちを探っている際に犯人の家庭や育ての親の思考、家庭教育が非常に歪んだものであることが発覚するケースが多い。しかし、個人情報・プライバシーの保護という名目や、「親は無条件に正しい」という風潮が原因で、家庭環境のこうした側面はほとんど報道されないことが多い。

主要原因[編集]

機能不全家族は不健康な家族文化、歪んだ家族システムを持つ家庭であり、その背景となる原因はさまざまである。

機能不全家族を生み出す家庭内の主要な原因としては、アルコール依存症ギャンブル依存症薬物依存症、親の自殺、親の死亡、親の浮気、両親の離婚、親の再婚、親からの見捨てられ行為(ネグレクト)、精神的な児童虐待、肉体的な児童虐待、性的な児童虐待(児童性的虐待)、兄弟姉妹間での処遇格差、家庭不和、家庭内の暴力サラ金地獄、生活困窮、生活苦を伴う家族の病気(難病介護)、障害、難病を持つ子中心の生活、望まれない出生、不遇な里子体験などがある[1]。また、親が宗教にのめり込む場合も機能不全家族に陥ることがある[2][3]

精神科医の廣瀬久益は「家庭内に問題のある子供は、大人同士の諍いなど未成熟な幼年者には理解できないものばかり見せつけられて感受性のアンテナが対人関係にばかり向いてしまい、自分の気持ちと向き合う機会が減る。そういった子供は20代前半頃までは、豊かな社会性で友人間の仲裁役を行うなどリーダーシップを取ることができるが、誰もが社会性を身につけ他人ばかり気にしていられない大人世代になると、自分の気持ちに対する感受性の弱さから感情調整や自己信頼能力などの不安定さが問題となる」というモデルで説明をしている[4]

家庭内の特徴[編集]

機能不全家族で育った者は、その家庭内での経験のため、共通の傾向、行動パターンが見受けられる。

スティーブン・ファーマーによると、機能不全家庭は家庭内にいくつかの兆候が見られる[5]

  • 拒絶
  • 矛盾
  • 家族への無共感
  • 家族間の境界線の欠如
  • 役割の置換
  • 社会からの孤立
  • 曖昧なメッセージ
  • 極端な論争・対立

またDan Neuharthも、機能不全家庭について説明する。彼は機能不全の要因として、健全でない親の8つの兆候を示している[6]

  • 条件付きの愛情
  • 非尊重
  • 発言の抑圧
  • 感情の強制
  • 嘲笑
  • 過大なしつけ
  • 内面の否定
  • 社会に対する機能不全、または社会からの孤立

彼はさらに、機能不全家庭を引き起こす8つの親のパターンについても説明している[7]

  • 窒息(子のアイデンティティーの侵害)
  • 利用
  • 虐待
  • 混乱
  • 完全主義
  • カルト信仰
  • 剥奪(子の欲するものを奪う)
  • 精神的な幼稚(虐待を排除しない)

インターネット掲示板などで、こういった親のことを「毒親」と呼ぶことがある(語源はスーザン・フォワード著「毒になる親」から)。

関連項目[編集]

対策

出典[編集]

  1. ^ 大越崇 『アダルトチャイルド物語』 星和書店 1996年
  2. ^ 幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題”. livedoor ニュース (2017年2月15日). 2017年11月3日閲覧。
  3. ^ 児童性的虐待:オーストラリア連合教会、過去40年で賠償金約20億円”. クリスチャントゥデイ (2017年3月21日). 2017年11月3日閲覧。
  4. ^ アダルトチルドレン(1/2) 新宿オーピー廣瀬クリニック - YouTube
  5. ^ Farmer, S.: "Adult Children of Abusive Parents", pgs. 19-34. Ballantine Books, 1989,
  6. ^ Neuharth, D.: "If You Had Controlling Parents: How to Make Peace With Your Past and Take Your Place In the World", pgs. 4-5 Quill Books, 2002
  7. ^ Neuharth, D.: "If You Had Controlling Parents: Making Peace With Your Past and Taking Your Place In the World", pgs. 14-15, Quill Books, 2002

参考文献[編集]

  • 西尾和美『機能不全家族―「親」になりきれない親たち』講談社、2005年。