フリント (ミシガン州)

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ミシガン州内の位置

フリント: Flint)は、アメリカ合衆国ミシガン州の都市。ジェネシー郡郡庁所在地である[1]。人口は8万1252人(2020年)[2]デトロイトの北西100キロメートルに位置している。

ゼネラルモーターズの創業の地であり、かつて同社の企業城下町として繁栄した。しかしGMの工場閉鎖に伴って市の経済は破綻し、治安悪化や人口減少・社会基盤の崩壊など、様々の社会問題を抱える、典型的な「ラストベルト」の街である。

地理[編集]

フリントはデトロイト衛星都市で、フリント丘の北東に展開している。市域はフリント川 (Flint River) 流域の低地で、南及び東側づたいをゆるやかに起伏し、北西が平地となっている。西に隣接するフリント・チャーター郡区は、同市からは独立した自治体である。

市の総面積は88.2 km2 (34.1 mi2) である。このうち87.1 km2 (33.6 mi2) が陸地で1.1 km2 (0.4 mi2) が水地域である。総面積の1.26%が水地域となっている[3]

統計[編集]

人口動態[編集]

1998年の人口は131,000人であったが、2000年現在の国勢調査では人口124,943人と、人口が減少しつつある[4]人口密度は1,434.5/km2 (3,714.9/mi2) である。636.8/km2 (1,649.1/mi2) の平均的な密度に55,464軒の住宅が建っている。

人種構成は、白人41.39%、アフリカン・アメリカン53.27%、先住民0.64%、アジア0.44%、太平洋諸島系0.02%、その他の人種1.11%、及び混血3.14%である。人口の2.99%はヒスパニックまたはラテン系である。

住民は30.6%が18歳未満の未成年、18歳以上24歳以下が10.3%、25歳以上44歳以下が29.4%、45歳以上64歳以下が19.2%、及び65歳以上が10.5%である。中央値年齢は31歳である。女性100人ごとに対して男性は88.6人である。18歳以上の女性100人ごとに対して男性は83.1人である。

世帯数は48,744世帯、及び30,270家族が居住する。世帯ごとの平均的な収入は28,015米ドルであり、家族ごとの平均的な収入は31,424米ドルである。男性は34,009米ドルに対して女性は24,237米ドルの平均的な収入がある。この都市の一人当たりの収入 (per capita income) は15,733米ドルである。人口の26.4%及び家族の22.9% は貧困線以下である。全人口のうち18歳未満の37.4%及び65歳以上の13.4%は貧困線以下の生活を送っている。

治安[編集]

市の財政破綻に伴う貧困層と失業者の増大、警察の予算や人員の不足、市街地の荒廃などが重なり、治安状態は全米で最悪のレベルまで悪化している。FBIによれば、2011年の1000人当たりの暴力犯罪率は23.4%で、全米で最も危険な都市の一つとされた(殺人52件、失業率18.9%)[5]


社会基盤[編集]

教育[編集]

ミシガン大学フリント校アナーバー市内に本部キャンパスを持つミシガン大学のサテライト・キャンパスである。元 GMI と知られる、ケタリング大学は高い評価を得た工学系大学である。Mott Community College はフリント内での主要なコミュニティカレッジである。

交通機関[編集]

フリント市はビショップ国際空港及び多数のバス路線によってサービスされている。Flint Mass Transportation Authority はこの都市及び郡のためにローカルバス・サービスを提供している。

水道水汚染問題[編集]

従来、フリント市はデトロイト水道下水局を通じ、ヒューロン湖の水を水源として取水していたが、同局と財政破綻状態のフリント市の管財人との支払額をめぐる交渉が決裂した結果、給水停止を通告された。やむなくフリント市は、市内を流れるフリント川から取水して、2014年4月から市内へ給水を始めた[6]。しかしフリント川の水質に問題があったため、多くが20世紀初期に敷設された老朽化した水道管が腐食し、水道水が錆で茶色く変色したり、異臭がするなどの苦情が急増した。さらに水道管のが水に溶け出し、地区によっては水道水から基準値の数十倍の鉛が検出されるようになった[7][8]

現在、同市では6歳から12歳の児童1万人以上が汚染された水道水を使用しており、血中の鉛濃度が上昇したり、皮膚病の症状が現れるなど市民に健康被害が広がっている。飲料水は全国からの寄付により、ペットボトル詰めのミネラルウォーターが無料配布されているが、水道管の更新などの抜本的対策は、財源不足のためまったく目途が立っていない。現在、行政に対する複数の訴訟が進行中で、知事などの責任追及に発展している。また同市に黒人貧困層の多いことから、行政の無策は人種偏見によるものだったとして、事態は人種差別問題に発展する様相を見せている[9][10][11]

姉妹都市[編集]

1980年代に本市は愛知県刈谷市に姉妹都市提携を呼びかけたが、実現しなかった。

出身者[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Find a County, National Association of Counties, http://www.naco.org/Counties/Pages/FindACounty.aspx 2011年6月7日閲覧。 
  2. ^ Quickfacts.census.gov”. 2023年12月7日閲覧。
  3. ^ アメリカ合衆国統計局の資料に基く
  4. ^ American FactFinder, United States Census Bureau, http://factfinder.census.gov 2008年1月31日閲覧。 
  5. ^ The Most Dangerous Cities in America247wallst
  6. ^ “City switch to Flint River water slated to happen Friday”. The Flint Journal. (2014年4月24日). http://www.mlive.com/news/flint/index.ssf/2014/04/hold_switch_to_flint_river_wat.html 
  7. ^ Engineering’s Marc Edwards heads to Flint as part of study into unprecedented corrosion problem”. Virginia Tech. 2015年12月30日閲覧。
  8. ^ State of emergency declared in Flint, Michigan over poisoned water supply”. World Socialist Web Site. 2015年12月30日閲覧。
  9. ^ Wang, Yanan (2015年12月15日). “In Flint, Mich., there’s so much lead in children’s blood that a state of emergency is declared” (英語). The Washington Post. ISSN 0190-8286. https://www.washingtonpost.com/news/morning-mix/wp/2015/12/15/toxic-water-soaring-lead-levels-in-childrens-blood-create-state-of-emergency-in-flint-mich/ 2015年12月15日閲覧。 
  10. ^ Daniel Bethencourt, After Flint water crisis, families file lawsuit, Detroit Free Press (November 13, 2015).
  11. ^ Director Dan Wyant resigns after task force blasts MDEQ over Flint water crisis The Flint Journal via MLive.com, December 29, 2015

関連項目[編集]

外部リンク[編集]