フェラーリ・F50

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フェラーリ・F50
概要
製造国 イタリアの旗 イタリア
販売期間 1995年 - 1997年
デザイン ピニンファリーナ
ボディ
乗車定員 2人
ボディタイプ 2ドア クーペ/タルガトップ
駆動方式 MR
パワートレイン
エンジン Tipo 040型改 4,698cc V型12気筒DOHC
最高出力 382kW(520PS)/8,500rpm
最大トルク 471Nm(48kgm)/6,500rpm
変速機 6速MT
前後:ダブルウィッシュボーン
前後:ダブルウィッシュボーン
車両寸法
ホイールベース 2,580mm
全長 4,480mm
全幅 1,986mm
全高 1,120mm
車両重量 1,230kg(乾燥重量)
1,350kg
系譜
先代 F40
後継 エンツォフェラーリ
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F50(伊:effecinquanta/エッフェ チンクワンタ)は、イタリアの自動車メーカーフェラーリが創設50周年を記念して製作したスポーツカーである。

概要[編集]

F40の後継車種として1995年に発売された。288GTOを祖とするスペチアーレモデルの系譜としては3代目となる。開発コンセプトに掲げられたのは「公道を走るF1」。エンツォ・フェラーリの息子、ピエロ・ラルディ・フェラーリの「F1のエンジンを積んだロードカーを創る」というシンプルなアイデアをもとに、ダラーラで製造されたカーボンコンポジット製のセンターモノコックにF1用エンジンをストレスマウント化(剛結・ボディへ直にボルト止め)し、F1マシンそのままの高剛性な車体構成を市販車として初めて採用した。しかし、その構造ゆえに振動や騒音が激しく、運転時の快適性という点においては後継車種のエンツォ・フェラーリに劣る。

エンジン

エンジンは1992年のF1マシンであるF92Aに搭載された自然吸気 3.5 L V型12気筒 DOHC 5バルブエンジンの鋳鉄ブロックを流用し、排気量を4.7 Lに拡大している[1]。元々はF1用のためピーキーで扱いにくい高回転型のエンジンだったが、排気量を拡大することで公道でも扱いやすいエンジンとしている。トランスミッションはF1では7速セミATが組み合わされていたが、F50ではごく一般的な6速MTとなっている。

前後のサスペンションもF1の影響を受けたプッシュロッド式。タイヤはグッドイヤーの「GSフィオラノ・イーグルF1」が設定された。

インテリア

車体は屋根部分を取り外しバルケッタ(オープン)とすることができる。ただし、ルーフの脱着には工場での作業を要するため、バルケッタの時には急な雨をしのぐため簡易的なソフトトップが備わる。室内は素材が剥き出しだったF40とは異なり、内張りが施されるなどしてスパルタンな印象は薄い。これは、当時のフェラーリ社長であったルカ・ディ・モンテゼーモロの「フェラーリは日常的に使える車でなければいけない」という方針によるものだが、当初のコンセプトからするとちぐはぐなものになった。

発表時期が近いこともあり、マクラーレン・F1とライバル視されることもあるが、両者の直接比較は試されなかった模様。F50発表の1995年のジュネーヴ・モーターショーではフェラーリ側から「マクラーレンよりは遅い」という発言があった[2]が、フェラーリによるとF50は性能を追求した車ではないという。

生産台数は349台で、新車価格は日本円で5,000万円。実際に発売されたのはフェラーリの創業50周年より2年ほど早かった。これは、当時ヨーロッパで施行予定の新しい排気ガス規制に適合させることが難しかったため、それまでに予定した台数を全て売り切ることで規制に間に合わせようとしたといわれている。2021年現在ではその希少性ゆえにプレミアが付いている。

なお、競技用モデルの「F50 GT」(後述)が開発中止となったため、F50がモータースポーツの場に姿を見せることはなかったが、F3マカオグランプリの前座である「スーパーカーレース」では、ほぼノーマルながらF50がマカオ市街地のグランプリコースを走行する姿を見ることができた。

F50 GT[編集]

F50 GT

それまでBPRグローバル・エンデュランスGTシリーズ(FIA-GT選手権の前身となったGTカーによる耐久レースシリーズ)およびル・マン24時間レースF40でエントリーしていたフェラーリであったが、1996年シリーズからF40の後継車種として投入すべく、F50 GTの開発が進められた。開発はフェラーリ本社ではなく、レーシングカーコンストラクターとして知られるダラーラが担当した。

市販車では着脱可能なデタッチャブルトップであったが、GTでは完全なクローズドボディとされ、ルーフ後端部からテールエンドに至るカウルはなだらかな形状に改められている。フロントスポイラーやサイドステップ、リアディフューザー、リアウィングといった空力パーツは、この車両のために新規設計されたものである。エンジンカウルの随所には放熱用のダクトが設けられている。

シャシーやボディパネルは、市販車同様のカーボンファイバーコンポジットモノコックを採用。これにより、主なシャシー素材としてチューブラーフレームを用い、カーボン素材を補助材として使用したF40よりもはるかに高いシャシー剛性を実現している。

エンジンは市販車のユニットをベースに、当時のFIA-GTおよびル・マン24時間レースのGT1クラス規定に沿ったチューニングが施されている。レブリミットは約10,000 rpmという高回転型エンジンとなった。

F50 GTは3台が製作されたが、1996年シーズン間際になってフェラーリが突如開発を中止したため、製作された試作車は全車売却という末路を辿ることになった。第1号車はアメリカ、第2号車は日本、第3号車はドイツにそれぞれ売却され、「モータースポーツ等競技車輌として使用しないこと」という条項が記載された誓約書にサインがなされた上で、コレクターの手に渡っている。

参考文献[編集]

二玄社刊『CG選集 フェラーリ2』ISBN 4-544-09195-0 2000年 307-327頁。

脚注[編集]

  1. ^ "期待を込めて". Ferrari.com. 2013年2月27日閲覧。
  2. ^ カーグラフィックTV』第499回 テレビ朝日1995年4月1日放送分

関連項目[編集]