ヒメマス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
ベニザケ > ヒメマス
ヒメマス
Himemasu.JPG
十和田湖のヒメマス
保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: サケ目 Salmoniformes
: サケ科 Salmonidae
亜科 : サケ亜科 Salmoninae
: タイヘイヨウサケ属
Oncorhynchus
: ヒメマス(ベニザケ
O. nerka
学名
Oncorhynchus nerka
Walbaum, 1792
和名
ヒメマス(姫鱒)
英名
Kokanee

ヒメマス(姫鱒、Oncorhynchus nerka)は、サケ目サケ科淡水魚の一種で、湖沼残留型(陸封型)のものを指す(降海型はベニザケという)。1904年(明治42年)、北海道庁水産課職員により命名された。北海道ではアイヌ語で「薄い魚」を意味するカパチェプ(kapacep)のうちの魚を意味するチェプ(cep)が訛った「チップ」の名でも呼ばれている。

分布[編集]

自然分布はアメリカ合衆国カナダカムチャツカ半島、北海道の阿寒湖チミケップ湖を原産とする[1]ニュージーランドには、移植により定着した。

移植と放流[編集]

日本での養殖は、1893年北海道職員の村信吉が阿寒湖のシリコマベツ川から千歳の孵化場へ発眼卵を輸送し行ったのが最初とされている[2]。日本での移植は1894年阿寒湖から支笏湖への移植が最初の例で[3][4][5]、移植成功後は支笏湖が種卵供給湖として重要な位置を占めたが、稚魚期の耐酸性が低いため[6]pH4程度の酸性の強い(pHの低い)水域への移植には失敗している[5][6]

また、青森県十和田湖(1902年[7])への本種の移植には和井内貞行が尽力した。1906年支笏湖から栃木県の中禅寺湖(1906年[8])、神奈川県の芦ノ湖、山梨県の西湖本栖湖長野県青木湖などに移入され生息している[1]

形態と生態[編集]

貧栄養状態の10℃から13℃程度の低温を好む[5]。全長は栄養状態と水温で変わるが1年目に16cm程度まで[9]、性成熟する頃には最大で50cm前後まで成長する。餌は動物プランクトンボスミナ類、ミジンコ類やユスリカ幼虫、ワカサギなどの小魚。但し、ヒメマスが棲息する湖へワカサギを放流した場合、餌の競合を起こしヒメマス資源が減少する傾向があるほか、他のサケ科魚類を放流した場合はサケ科魚類に食害され、ヒメマス増殖が妨げられることもある[5]

ベニザケ同様に孵化後3年から5年程度で成熟し、9月下旬から11月上旬にかけて湖岸や流入河川の砂礫に産卵する。中禅寺湖[2]、洞爺湖のヒメマス1年魚は降海型ベニザケと同様にスモルト化し、海水適応能は5月に最も高まる[10]が、実際に降海するのは6月から7月に最も活発で、降海個体の平均体長は15cmから18cm程度[4]。ただし、成熟までの期間は栄養状態により変動し[11]、9年の例もある。

利用[編集]

調理されたヒメマスの燻製

魚肉は紅色で美味。マス・サケ類で一番美味とも言われているが、食味の低下が早いとされる。他のサケ科魚類と同様に塩焼き刺身フライで食べる。また、甘露煮燻製として加工される。釣りの対象魚としても人気がある。

漁業[編集]

ヒメマスは釣りの対象として人気がある。

生息する各湖で餌釣りを行うことができる。また、ヒメマス独特の仕掛けを使ったヒメトロなどのレイクトローリングで狙うこともできる。生息する各湖では漁業共同組合による遊漁期間や捕獲上限が設定されていることが多く、それ以外の期間に漁を行うことや産卵のために遡上した個体の採取、漁獲を禁じている。

自治体の魚[編集]

  • 市の魚

保全状態評価[編集]

近縁種[編集]

近縁種として、西湖に生息しているクニマス (Onchorhynchus nerka kawamurae) がいる。本来の原産地であった田沢湖では、太平洋戦争開戦前、発電所建造のために強酸性の玉川の水を引き込んだことで絶滅したが、それ以前に西湖に移入された受精卵から孵化した稚魚の末裔が、今も西湖に生息している。ただし、西湖での生存が公式に確認されたのは2010年のことで、それまでの約70年間、クニマスは地球上から絶滅したものと考えられていた。

ギャラリー[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b ヒメマス 国立環境研究所 侵入生物DB
  2. ^ a b 支笏湖と中禅寺湖に分布するヒメマスのスモルト化 (PDF) さけ・ます資源管理センター技術情報 No.170, 2004
  3. ^ 北海道内のヒメマスの移殖社団法人 日本水産資源保護協会 (PDF)
  4. ^ a b 徳井利信:支笏湖におけるヒメマスの年齢と成長 水産増殖 Vol.36 (1988-1989) No.2 P137-143
  5. ^ a b c d 徳井利信:ヒメマスの研究(V)日本におけるヒメマスの移殖 北海道さけ・ますふ化場研究報告(18),1964,p.73-90 (PDF)
  6. ^ a b サケ科魚類の発眼卵と稚魚の耐酸性評価 養殖研究所研究報告 21号 p.39-45(1992-03)
  7. ^ 徳井利信:十和田湖の湖水型サクラマス (Oncorhynchus masou) について 水産増殖 Vol.10 (1962) No.2 P133-136
  8. ^ 中禅寺湖産ヒメマスの再生産関係 水産増殖 Vol.47 (1999) No.2 P229-234
  9. ^ 徳井利信:倶多楽湖のヒメマスについて二, 三の知見 水産増殖 Vol.33 (1985-1986) No.2 P100-102
  10. ^ 洞爺湖産ベニザケの海水適応能 (PDF)
  11. ^ 徳井利信:カナダ, ニコラ湖のヒメマスについて一知見 陸水学雑誌 Vol.36 (1975) No.4 P157-159

参考文献[編集]

外部リンク[編集]