コンテンツにスキップ

ヒタキ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒタキ族から転送)
ヒタキ科
キビタキ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : スズメ亜目 Passeri
小目 : スズメ小目 Passerida
上科 : ヒタキ上科 Muscicapoidea
: ヒタキ科 Muscicapidae Fleming1822
学名
Muscicapidae
シノニム

Muscicapinae

和名
ヒタキ
英名
Chats
Flycatchers
亜科

ヒタキ科(ヒタキか、学名 Muscicapidae)は、鳥類スズメ目の科である。

ヒタキ(鶲)と総称されてきたが[1]、100種以上がツグミ科から移され、その中にはコマドリ類・シキチョウ類・ルリチョウ類などもいる。英語では、従来ヒタキ科に含まれていた種を flycatchers、ツグミ科から移された種を chats と区別するが、これらは自然分類ではない。

特徴

[編集]

旧大陸オーストラリア区の中低緯度に生息する。

(くちばし)は横に扁平で、基部が太く剛毛が生えている。

森林に住む。枝の上に止まり、飛ぶ虫に向かって飛び上がり空中で捕食し、元の枝に戻る「ヒタキ型」給餌をする。

系統と分類

[編集]

系統樹は Sangster et al. (2010)[2]; Zuccon & Ericson (2010)[3]より。1–12 は Zuccon & Ericson による仮の系統名である。

ヒタキ科 s.S&A

ツグミ科 Turdidae

ヒタキ科
ヒタキ亜科
 1 

ムジヒタキ属 Alethe

 2 

ヒタキ族 Muscicapini

 3 

シキチョウ族 Copsychini

 4 

アオヒタキ亜科 Niltavinae

 5 

ヨーロッパコマドリ亜科 Erithacinae

ノビタキ亜科
 6 

マミジロミツリンヒタキ属など

 7 

コマドリ属など

 8 

サヨナキドリ属など

 9 

ルリビタキ属など

 10 

ルリチョウ属など

 11 

キビタキ属など

 12 

サバクヒタキ属など

ヒタキ科はツグミ科と姉妹群であり、これら2科でヒタキ上科の大半を占める。ヒタキ科の中での系統位置が不明なムラサキツグミ Grandalaイワトビヒタキ Pinarornis はツグミ科だとする説もある。

ヒタキ科は従来はヒタキ亜科 Muscicapinae とノビタキ亜科 Saxicolinae に分けられ、英語ではそれぞれ flycatcherschats と総称されてきた(日本語では明確な呼び分けはない)。ヒタキ亜科は伝統的なヒタキ科で、ノビタキ亜科は Sibley & Ahlquist (1990) によりツグミ科から移された亜科だった。しかしそれらは多系統であり、Sangster et al. により4亜科に再編された。おおよそ、旧ヒタキ亜科は現在のヒタキ族・アオヒタキ亜科・ノビタキ亜科の一部 (Clade 2, 4, 6, 11)、旧ノビタキ亜科は現在のシキチョウ族・ヨーロッパコマドリ亜科・ノビタキ亜科の大半 (Clade 1, 3, 5, 7, 8, 9, 12) にあたる。

ヒタキ亜科には2つの族が含まれる。Sangster et al.ムジヒタキ属 Alethe を仮にシキチョウ族に含めたが、Zuccon & Ericson はヒタキ亜科の基底で分岐したとしている。

ノビタキ亜科はヒタキ科最大の亜科で、族は設けられていないが、Zuccon & Ericson は7つの系統に分けている(Sangster et al. は部分的に異なる9つの系統に分けている)。

歴史

[編集]

Hartert (1910) は拡大されたヒタキ科 Muscicapidae を提唱した。ヒタキ科にはヒタキ亜科・ツグミ亜科など10前後の亜科が置かれ、それらは Amadon (1957) や Wetmore (1960) により個別の科となった。ただし当時は、ヒタキ科には flycatchers のみがあり、chats はツグミ科ノビタキ亜科 Saxicolinae とされていた。なお、ツグミ類 (thrushes) はツグミ科ツグミ亜科 Turdinae とされていた。

Sibley & Ahlquist (1990) は、ノビタキ亜科はツグミ亜科よりもヒタキ科に近縁だと考え、それらをヒタキ亜科の族とした。ツグミ亜科もヒタキ科に含め、拡大したヒタキ科を次のように分類した。

  • ツグミ亜科/ツグミ科 Turdinae (thrush) ≒ 現在のツグミ科
  • ヒタキ亜科/ヒタキ科 Muscicapinae ≒ 現在のヒタキ科
    • ノビタキ族/ノビタキ亜科 Saxicolini (chats)
    • ヒタキ族/ヒタキ亜科 Muscicapini (flycatchers) ≒ 以前のヒタキ科

のちに、彼らの亜科は科、族は亜科として扱われた。つまり結局、ノビタキ亜科がツグミ科からヒタキ科に移されたことになる。ただしムジヒタキ類 (alethes, 現在のムジヒタキ属 Aletheマミジロムジヒタキ属 Pseudalethe)・コバネヒタキ類 (shortwings, 現在のシロボシコバネヒタキ Heteroxenicusコバネヒタキ属 Brachypteryxセレベスコバネヒタキ Heinrichia) は彼らによりノビタキ類からツグミ類に移され、ツグミ科にとどまった。

しかしこれらの亜科は多系統であり、Beresford (2003) や Voelker & Spellman (2004) により修正され、Sangster et al. (2010)[2]により4亜科に再編された。ヒタキ科の範囲も変更され、Sibley & Ahlquist (1990) がノビタキ類からツグミ類に移した属はヒタキ科に戻され、さらに、伝統的にツグミ亜科に含まれていたルリチョウ属 Myophonusイソヒヨドリ属 Monticola もノビタキ亜科に移された。

属と種

[編集]

種は国際鳥類学会議 (IOC)[4]による。属は Sangster et al. (2010)[2](一部は Zuccon & Ericson (2010)[3])に基づき以下の修正をした。

科の範囲と亜科分類は Sangster et al. によるが、部分的に Zuccon & Ericson の系統に基づいた修正がある。また近年ツグミヒタキ属 Cossypha から分割された2つの単型属はツグミヒタキ属と同じヨーロッパコマドリ亜科に置いた。

46属317種。

ヒタキ亜科 Muscicapinae

[編集]

8属65種。

アオヒタキ亜科 Niltavinae

[編集]

5属44種。

オオルリ

ヨーロッパコマドリ亜科 Erithacinae

[編集]

10属36種。

ノビタキ亜科 Saxicolinae

[編集]

18属168種。

亜科不明

[編集]

4属4種。

出典

[編集]