ネグリト

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ネグリトの人々(1905年マレーシアにて撮影)
ボートをこぐネグリト(1899年フィリピンにて撮影)
二人のネグリト(1875年

ネグリト (Negrito) とは東南アジアに住む身長が小柄な少数民族を指し、これらの地域にマレー系民族が広がる前の先住民族であると考えられている。ニューギニア島の西部[1]アンダマン諸島大アンダマン人Aka-BeaAkar-BaleA-PucikwarAka-KolOko-JuwoiAka-KedeAka-JeruAka-BoAka-KoraAka-Cari)、Jangilジャラワ族オンゲ族センチネル族の14の民族、マレー半島と東スマトラセマン族英語版タイマニ族英語版フィリピンアエタ族アティ族バタク族英語版ママンワ族英語版などの民族が含まれる。ネグリートともいう。

概要[編集]

身長は低く、諸民族の中でも最も小さな人々であり「大洋州ピグミー」とも呼ばれる。オーストラロイドに属し、暗い褐色の皮膚を持ち、巻毛と突を持つ。地にすみ単純な採集狩猟を行い、移動焼畑を行う場合もある採集狩猟民である。フィリピンのアエタなどは火を使用するが、アンダマン諸島民は火を使わない。セマンは木の皮を叩いてやわらかくして衣服を作り、洞窟や木の葉で覆った家に住んでいたと記録されている。

ネグリトという言葉はスペイン語で「小柄で黒い人」という意味であり、当初スペイン人航海者たちはネグリト人の肌の黒さからアフリカ人(アフリカ黒人)の一種かもしれないと考えていた。マレー語ではオラン・アスリ(orang asli)、すなわち「もとからいた人」と言う。フィリピンでは、現在のマレー系の民族が舟で到来する前の先住民とされ、パナイ島の伝説ではボルネオ島から渡ったマレー人たちがネグリト系のアエタの民から土地の権利を買ったとされている。

ネグリトの人々は他の民族と比較して最も純粋なミトコンドリアDNA遺伝子プールを持つ[要出典]とされ、彼らのミトコンドリアDNAは遺伝的浮動の研究の基礎となっている。

言語[編集]

ニューギニア島やアンダマン諸島のネグリトは固有の言語を持つが、マレー半島やフィリピンのネグリトは周辺諸族(非ネグリトのモンゴロイド)と同様のものを話す。これは過去のある時点で固有の言語を喪失したものと考えられている。

ネグリトの言語が含まれる諸語・語族

遺伝子[編集]

ネグリトは人種的にはほぼオーストラロイドであるが、遺伝子は一部モンゴロイド由来のものが混じっており、一様ではない。[要出典]

アンダマン人[編集]

アンダマン人は母語とする言語系統から大アンダマン人オンガン人センチネル族に大別できるが、このうち調査がされている大アンダマン人とオンガン人では、Y染色体ハプログループがで大きく異なっていることが知られている。大アンダマン人は出アフリカ後「南ルート」[4]をとったハプログループF*、K*L、P*、および「北ルート」のオーストロアジア系O2aがほぼ100%であるが、オンガン人(ジャラワ族オンゲ族)はパラグループD*がほぼ100%を占める[5]。パラグループD*は出アフリカ後「北ルート」でイラン→アルタイ山脈→チベット→ビルマ→アンダマン諸島という経路をたどってきたと考えられる[6][7]が、他にも諸説ある。

なお、アンダマン人のミトコンドリアDNAハプログループは大アンダマン人、オンガン人とも、出アフリカ後「南ルート」で到達したと考えられる[8]M31、M32のみが観察される。[5][9]

アエタ族[編集]

アエタはY染色体ハプログループK2b1-P378が60%の高頻度みられる[10]。(このタイプはニューギニア多いハプログループMやSと祖を同じくするものである。)また、ハプログループP (mtDNA)が40%[11]見られる。これらのタイプは、出アフリカ後インドを経由して「南回り」で到達したオーストラロイドの系統である。

セマン等[編集]

オーストロアジア語族を話すセマン等は他のオーストロアジア系民族と同様、ハプログループO1b1 (Y染色体)がよく見られるが、周囲の民族に比較してハプログループC (Y染色体)(おそらく南ルート系のハプログループC1b)が高い頻度で見られる[12]

脚注[編集]

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  1. ^ https://digitalcommons.wayne.edu/cgi/viewcontent.cgi?referer=https://www.google.co.jp&httpsredir=1&article=2061&context=humbiol
  2. ^ http://www.ovta.or.jp/info/oceania/papuanewguinea/index.html
  3. ^ https://digitalcommons.wayne.edu/cgi/viewcontent.cgi?referer=https://www.google.co.jp&httpsredir=1&article=2061&context=humbiol
  4. ^ 崎谷満『DNA・考古・言語の学際研究が示す新・日本列島史』(勉誠出版 2009年)
  5. ^ a b Kumarasamy Thangaraj, Lalji Singh, Alla G. Reddy, V.Raghavendra Rao, Subhash C. Sehgal, Peter A. Underhill, Melanie Pierson, Ian G. Frame, Erika Hagelberg(2003);Genetic Affinities of the Andaman Islanders, a Vanishing Human Population ;Current Biology Volume 13, Issue 2, 21 January 2003, Pages 86–93 doi:10.1016/S0960-9822(02)01336-2
  6. ^ Shi H, Zhong H, Peng Y et al. (2008). "Y chromosome evidence of earliest modern human settlement in East Asia and multiple origins of Tibetan and Japanese populations". BMC Biol. 6: 45. doi:10.1186/1741-7007-6-45. PMC 2605740. PMID 18959782.
  7. ^ 崎谷満『ヒト癌ウイルスと日本人のDNA』(勉誠出版 2011年)
  8. ^ 崎谷満『DNA・考古・言語の学際研究が示す新・日本列島史』(勉誠出版 2009年)
  9. ^ Kumarasamy Thangaraj, Gyaneshwer Chaubey, Toomas Kivisild, Alla G. Reddy, Vijay Kumar Singh, Avinash A. Rasalkar, Lalji Singh1(2005);Reconstructing the Origin of Andaman Islanders ;Science13 May 2005: Vol. 308 no. 5724 p. 996 DOI: 10.1126/science.1109987
  10. ^ Karafet TM, Mendez FL, Sudoyo H, Lansing JS, Hammer MF (June 2014). "Improved phylogenetic resolution and rapid diversification of Y-chromosome haplogroup K-M526 in Southeast Asia". Eur J Hum Genet. 23: 369–373. doi:10.1038/ejhg.2014.106. PMC 4326703 Freely accessible. PMID 24896152.
  11. ^ Delfin F. et al 2013. Complete mtDNA genomes of Filipino ethnolinguistic groups: a melting pot of recent and ancient lineages in the Asia-Pacific region. Eur J Hum Genet. 2013 Jun 12. doi: 10.1038/ejhg.2013.122.
  12. ^ 走向遠東的兩個現代人種 Archived 7 October 2009 at the Wayback Machine.

参考文献[編集]

  • "DNA Study Yields Clues on Early Human's First Migration" New York Times, May 13, 2005 p. A7.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]