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サクラ亜科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サクラ亜科
サクラ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : サクラ亜科 Amygdaloideae
シノニム
  • Prunoideae
  • Pyroideae
  • Spiraeoideae
  • Maloideae
  • Lyonothamnoideae
  • Kerroideae
  • Coleogynoideae
  • Dichotomanthoideae
[2]

サクラ亜科(サクラあか、Amygdaloideae)は、バラ科の亜科である。より直訳的にモモ亜科とも。

また、シノニムPrunoideae もサクラ亜科(あるいはスモモ亜科)と訳されることがあるが、現在はほとんど使われない亜科名である。なお、サクラ属 (Cerasus)、スモモ属 (Prunus)、モモ属 (Amygdalus) は非常に近縁ないし同一属なので、これらの名を冠した亜科名は学説を問わず同一亜科のシノニムである。

Schulze-Menz (1964) などによる古典的なサクラ亜科は実際は単系統ではなく、系統上の位置はリンゴ亜科 Maloideae(あるいはナシ亜科 Pyroideae)やシモツケ亜科 Spiraeoideae などと混在していた。それらは現在は統合されている。その新しい亜科の名は当初シモツケ亜科とされた[2]が、Spiraeoideae Arn. (1832) より Amygdalaceae Marquis (1820) が先行していたことから、サクラ亜科(モモ亜科)Amygdaloideae が使われるようになった[3]

特徴

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すべて木本で、サクラモモウメスモモアーモンドなど、果樹あるいは花卉として重要な種類を含む。

系統と分類

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Potter et al. (2007) による[2]。ただし、彼らによる Osmaronieae をヤナギザクラ連 Exochordeae とした[1]

バラ科

バラ亜科 Rosoideae 【薔】

チョウノスケソウ亜科 Dryadoideae 【薔】

サクラ亜科

Lyonothamnus 【L】

ネイリア連 Neillieae 【下】

モモ連(サクラ連) Amygdaleae 【桜】

ヤナギザクラ連 Exochordeae (Osmaronieae) 【桜】

ヤマブキ連 Kerrieae 【L】

ホザキナナカマド連 Sorbarieae 【下】

シモツケ連 Spiraeeae 【下】

ギレニア属 Gillenia 【下】

ナシ連 Pyreae (リンゴ連 Maleae) 【林】

また、古典的亜科分類の例として、Schulze-Menz (1964) による亜科を付記した[2]。ただし連未満の数属の異同は無視した(それらは古典分類の間でも一定しなかった)。古典的亜科の略記はそれぞれ以下のとおり。

  • 【薔】: バラ亜科 Rosoideae
  • 【L】: Lyonothamnoideae(この亜科の分類は特に一定しなかった)
  • 【桜】: サクラ亜科(スモモ亜科) Prunoideae
  • 【下】: シモツケ亜科 Spiraeoideae
  • 【林】: リンゴ亜科 Maloideae(ナシ亜科 Pyroideae

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サクラ属(狭義のサクラ属)とスモモ属(広義のサクラ属)

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サクラ類をサクラ属(Cerasus、ケラスス)に分類するか、スモモ属(Prunus、プルヌス)に分類するか国や時代で相違があり、現在では両方の分類が使われている。ロシア中国、1992年以降の日本ではヤマザクラセイヨウミザクラなどサクラのみ100種をサクラ属(Cerasus)として分類するのが主流である(狭義のサクラ属)。一方で西欧北米では各種サクラとスモモモモウメウワミズザクラなど約400種を一括してスモモ属Prunus)として分類するのが主流である(広義のサクラ属)。これは比較的サクラ類の多いロシアや中国ではサクラ類を独立した属として分類していたのに対し、伝統的にサクラ類の少ない西欧と北米ではサクラ類をスモモやモモやウメなどと一括して分類していたためである。日本の科学は西欧や北米の基準に合わせる事が多かったため従来はサクラ類をスモモ属(Prunus)としていたが、1992年の東京大学大場秀章の論文発表以降は、実態に合ったサクラ属(Cerasus)表記が主流である[4]。なお、この「種」とは分類学上の種(species)のことで野生に自生する種のみを指し、種(species)の雑種や種(species)の下位分類の変種(variety)や、全く異なる分類体系となる野生種から開発された栽培品種(cultivar)は種(species)の数に含めないことに留意する必要がある[5]

基底的な連未定属

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ネイリア連

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モモ連(サクラ連)

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  • スモモ属 Prunus
  • サクラ属 Cerasus
  • アンズ属 Armeniaca
  • モモ属 Amygdalus
  • ウワミズザクラ属 Padus
  • バクチノキ属 Lauro-cerasus
  • ニワウメ属 Lithocerasus
  • Pygeum
  • Maddenia

ヤナギザクラ連

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ヤマブキ連

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ホザキナナカマド連

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シモツケ連

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ナシ連に近縁な連未定属

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ナシ連(リンゴ連)

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ナシ(豊水)
ビワ
タチバナモドキ

絶滅属

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脚注

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  1. ^ a b Reveal, J.L. (2010), “Validation of Exochordeae (Rosaceae)”, J. Bot. Res. Inst. Texas 4 (1): 215 
  2. ^ a b c d Potter, D.; Eriksson, T.; Evans, R.C.; Oh, S.H.; Smedmark, J.E.E.; Morgan, D.R.; Kerr, M.; Robertson, K.R.; Arsenault, M.P.; Dickinson, T.A.; Campbell, C.S. (2007), “Phylogeny and classification of Rosaceae”, Plant Systematics and Evolution 266 (1–2): 5–43, doi:10.1007/s00606-007-0539-9, http://biology.umaine.edu/Amelanchier/Rosaceae_2007.pdf 
  3. ^ McNeill, J.; Barrie, F.R.; Buck, W.R.; Demoulin, V.; Greuter, W.; Hawksworth, D.L.; Herendeen, P.S.; Knapp, S.; Marhold, K.; Prado, J.; Reine, W.F.P.h.V.; Smith, G.F.; Wiersema, J.H.; Turland, N.J. (2012). International Code of Nomenclature for algae, fungi, and plants (Melbourne Code) adopted by the Eighteenth International Botanical Congress Melbourne, Australia, July 2011. Regnum Vegetabile 154. A.R.G. Gantner Verlag KG. ISBN 978-3-87429-425-6. http://www.iapt-taxon.org/nomen/main.php?page=art19  Article 19.5, ex. 5
  4. ^ 勝木俊雄『桜』p16 - p18、岩波新書、2015年、ISBN 978-4004315346
  5. ^ 勝木俊雄『桜』p24 - p32、岩波新書、2015年、ISBN 978-4004315346
  6. ^ Wolfe, J.A.; Wehr, W.C. (1988). “Rosaceous Chamaebatiaria-like foliage from the Paleogene of western North America”. Aliso 12 (1): 177?200. http://pubs.er.usgs.gov/publication/70014287.