オスカー・フォン・ロイエンタール

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オスカー・フォン・ロイエンタールOskar von Reuenthal)は、銀河英雄伝説の登場人物。

概要[編集]

ローエングラム陣営の主要提督の一人。ローエングラム朝銀河帝国では統帥本部総長となり、後に新領土(ノイエ・ラント)総督も勤めるが、最後はローエングラム王朝に叛する道を辿る。

時系列上の初登場は、コミック版の惑星(カプチェランカ)上での白兵戦とされている。ラインハルトとの関連では、ヴァンフリート星域会戦後に軍務省でウォルフガング・ミッターマイヤーとともにラインハルト・フォン・ローエングラムジークフリード・キルヒアイスの姿を見かけた時が最初。

乗艦はトリスタン。副官はレッケンドルフ。主な幕僚はハンス・エドアルド・ベルゲングリューン/ディッタースドルフ/ゾンネンフェルス/シュラー/バルトハウザーら。また、新領土総督時代に軍事査閲副総監としてリッチェル、新たに配属された分艦隊司令官としてヘルムート・レンネンカンプの指揮下にあったアルフレット・グリルパルツァーブルーノ・フォン・クナップシュタインがいる。このほかアニメ版97話にトリスタンの艦長が登場している。

略歴[編集]

帝国暦458年10月26日(道原かつみのコミック版より)、下級貴族の父親とマールバッハ伯爵家の3女レオノラとの間に生まれた。生後まもなく母親が自殺し、息子を逆恨みした父親から育児を半ば放棄される。16歳で士官学校に入学。任官後数々の功績を挙げるが、女性関係のトラブルから私的決闘を行って相手を負傷させ、降格処分(大尉から中尉)を受けた事がある。そのため、後に知り合った一年後輩のミッターマイヤーと同階級となり、戦闘上のパートナーとして共に昇進していく。

ローエングラム陣営への参加は、門閥貴族に謀殺されそうになったミッターマイヤー救出のため、ラインハルトに助力を求めた事がきっかけ。それ以来ラインハルトに(相克しつつ)忠誠を誓い、第4次ティアマト会戦(及びその前哨戦の惑星レグニッツァ上空の戦い)を初め、様々な武勲を立てていく。その後、帝国軍上層部の思惑と門閥貴族の策謀により同487年初頭のアスターテ会戦には参加出来なかったが、同会戦で元帥に昇進したラインハルトに再び呼集され、中将・艦隊司令官として元帥府に登用される。

同年のアムリッツァ会戦に至る同盟軍の帝国領侵攻に対する迎撃で武勲を挙げ、ミッターマイヤーと共に大将に昇進。翌488年のリップシュタット戦役ではミッターマイヤーとの共同作戦でレンテンベルク要塞を陥落させる等の功績を挙げて上級大将に昇進。同489~490年のラグナロック作戦ではイゼルローン方面の総指揮官として要塞を奪回、更に同盟領に侵攻した後はヒルデガルド・フォン・マリーンドルフの提案でミッターマイヤーとともに同盟首都星ハイネセンを無条件降伏させる。

新帝国暦1年(帝国暦490年)、ローエングラム王朝成立時に元帥に昇進。統帥本部総長に任じられる。翌年、第2次ラグナロック作戦で同盟が消滅して帝国新領土となり、これと前後して、ロイエンタールに恨みを抱いたハイドリッヒ・ラングの策謀で叛逆の疑いありとして一時拘束されたが、ラインハルトとの友誼が失われる事は無かった。回廊の戦い後に新領土の総督に任じられる。

だがその後、地球教の策謀がきっかけとなり叛乱を起こし、第2次ランテマリオ会戦でミッターマイヤー及びフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトアウグスト・ザムエル・ワーレンと戦う。エルネスト・メックリンガーの艦隊がイゼルローン方面より侵入したため二正面作戦を避けるために撤退するが、その途中でグリルパルツァーの裏切りが発生、死に至る負傷をしたが治療を拒み、ハイネセンに戻った。新帝国歴2年(宇宙歴800年)12月16日、新領土総督府オフィスにて死去。33歳でヤン・ウェンリーと生没年が同じであった。死の直前に、ラインハルトを侮蔑する発言をしたヨブ・トリューニヒトを殺害したが「(この行為が)後の歴史の展開に大きな影響を与えた」との論議を、同盟側・帝国側双方に呼んだ。

能力[編集]

無二の親友であるミッターマイヤーとともに「帝国軍の双璧」と称されている。自ら白兵戦に臨んで戦斧をふるう勇敢さを見せる反面、不利と見れば戦術的勝利に固執せず速やかに撤退する面も見られる(その際の撤退戦術は本来非常に困難なものだが、ワーレン曰く「戦術の教科書以上」の隙のない撤退を何度も成功させている)。そのため、メックリンガーは智勇の均衡が最も取れていると評した(ロイエンタールの均衡に比べたら、ヤンは智に、ラインハルトやミッターマイヤーは勇に傾倒しているという評である)。また単純な武人ではなく、政略的な面でも優れている。新領土総督を拝命した際は、ヤンの追悼集会を行う、公務員の綱紀粛正を徹底するなど極めて短い間ではあるが為政者としても優れた能力を示した。

回廊の戦いでは自ら攻略作戦を上申して機雷源の突破に成功してヤン艦隊を撹乱し、さらに叛乱後の第2次ランテマリオ作戦では、一時は黒色槍騎兵艦隊を壊滅寸前に追い込み、ミッターマイヤー率いる帝国軍本隊と互角に渡り合い、バイエルライン率いる分艦隊を壊滅寸前まで追いんでいる。なお、この戦いはミッターマイヤーが優勢だったが、ミッターマイヤー自身は「それは自分にビッテンフェルトとワーレンという味方がいたから」と主張している。

白兵戦技にも優れており、リップシュタット戦役中のレンテンベルク要塞攻略戦ではミッターマイヤーと共にオフレッサー装甲擲弾兵総監との戦いを指揮する。後にラグナロック作戦では、ワルター・フォン・シェーンコップとも装甲服なしで互角の一騎討ちを行う。

為政者の能力としては、本人が自分の性質を「乱世の雄」であると考えているのに対し、ユリアン・ミンツの意見では対照的に「守成の人」であり、統治能力は優れているが創造性には欠ける、建国済みの国家を維持する能力はあるが、新たな国を建てる能力はラインハルトと比較して劣るとして、「銀河帝国の3代目辺りの皇帝としては理想的な人物」と評価している。帝国軍の将兵からの人気は皇帝ラインハルトを除けば一番はミッターマイヤーで、ロイエンタールはそれにわずかに及ばないとされている。

人柄[編集]

身長184cmの相当な美男子。頭髪は黒に近いブラウン。左右の瞳の色が違う「金銀妖瞳(ヘテロクロミア)」の持ち主(右目が黒で左目が青。なお両親の目の色は二人とも青で母親の愛人は黒。息子のフェリックス・ミッターマイヤーは青)。

漁色家として知られるが、実際には幼少期に母に殺されかけた(愛人と同じ色をした瞳をナイフで刳り抜かれそうになり母は自殺、父からはなじられて育つ)トラウマから強い女性不信・どこか歪んだ感性を抱えている。そのせいか女性側から一方的に迫られ、関係を持っては捨てる事を繰り返し、それがもとで決闘騒ぎを起こした事もある。周囲から批判的な目で見られる事も少なくないが、酔った本人の独白から真相を知ったミッターマイヤーだけは同情的な思いを抱いている。女性に関しては、ミッターマイヤーと酒の席で口論になった挙句、殴り合いになったようである[1]。ただし、上記のように常に女性側から身をゆだねた上での話であり、しかも一度に一人の女性との交際と別離しか行われていないため、捨てられた女性側からは「短期間でも彼を占有できた」との意識もあり意外に恨まれてはいない。

父は下級貴族であったが、投資に成功して莫大な財産を築き、その財産を種に没落した名門貴族の女性を妻に迎える。しかしその結婚は上記のような悲劇で終わり、兄弟親戚もなく家庭的には恵まれていない。その父の遺した財産で、万事質素なラインハルトよりもよほど王侯貴族らしい生活をしていたと言われる。ただし私生活は贅沢であっても、厳しい軍隊生活にも平気で耐えていたため、決して他の兵士たちから恨まれる事は無かったという。

優れた軍人ではあったが、その自らの軍事的な才能ですら冷めた目で評価していたような面もあり、勝敗や優劣は相対的なものであり、当事者間の関係だけでなく周囲の条件や環境によって変わるものであると、達観していた。ラインハルトが強い敵を求めていたのに対し、ロイエンタール自身はそのような志向とは無縁であった。例えば回廊の戦いにおいては、喪中のイゼルローン要塞を討つのを潔しとせず撤兵を決めたラインハルトに対して、むしろヤン亡き今こそ攻撃すべきという立場であった[2]

一方でラインハルトに対しては浅からぬ忠誠心と尊敬の念を有していた。現状に不満を持ちながらもゴールデンバウム王朝打倒など思いもしなかった自分に対し、その心理的障壁をあっさり乗り越えたラインハルトを自嘲と共に敬服していた。配下の提督の中で「マイン・カイザー(我が皇帝)」をもっとも美しく発音したとされる。

地球教の策謀により叛乱へと追いつめられるが、他人の罠によって叛乱を起こしたという事実を自ら認められず、また無実の自分が皇帝に頭を下げ釈明するという屈辱を甘受できず、自らの意思によりあえて叛乱を起こした[3]。一旦叛乱を決意すると、覇気と昂揚感に満たされ、それゆえに戦いの前、ミッターマイヤーや腹心の部下ベルゲングリューンが必死で説得したものの、止めることはできなかった。それでいてなお叛いたラインハルトへの敬意、干戈を交えたミッターマイヤーへの友情は代わらず、その複雑な心情を理解しえなかったヨブ・トリューニヒトがラインハルトを侮辱する発言を行った時、激昂して射殺している。

死に臨んで発した言葉は、「我が皇帝(マイン・カイザー)、ミッターマイヤー、ジーク、死」である。これが何を意図して発した言葉であるかに関しては諸説あり、遺言を聞いた当時の従卒も「聞き取れる言葉のみを記録し、意味不明の言葉は書き止めていない」としたため、真相は不明である。後世、このうち「ジーク」について、単に「勝利」とするか、「死」とあわせて「ジーク・カイザー、たとえ死すとも」とするか、或いは「ジークフリード・キルヒアイスが死んでから」かで議論が分かれたが、前述の従卒はこの手の議論には一切参加しなかった。

家族[編集]

リップシュタット戦役終盤においてロイエンタールがリヒテンラーデの拘禁/処刑にあたった。その一族の女性の一人であるエルフリーデ・フォン・コールラウシュとの間に男児がおり、彼の死後はミッターマイヤーに引き取られた(フェリックス・ミッターマイヤー)。死の直前エルフリーデが赤子とともに現れるが、一族の恨みを晴らす機会を勧められたにも拘らず赤子を残しそのまま去っている。

なお、エルフリーデについてはその後一切登場しないが、翌年の混乱のさなかに、ドミニク・サン・ピエールが逮捕され、オーベルシュタインがドミニクにエルフリーデの行方を尋問した。ドミニクは少し驚いたような表情で軍務尚書を見返し、知らないとだけ答えた。「オーベルシュタインはそれ以上追及しようとしなかった」と、帝国の公式記録には事実だけが記されているという。

演じた人物[編集]

アニメ
若本規夫
ロイエンタールを演じるにあたっては「野心や欲望のエネルギーマグマを抑えながら状況説明をするセリフの多い部分に苦労した」と語った。
舞台

脚注[編集]

  1. ^ 原作での表記より。2人とも泥酔状態だったためか、翌朝には殴りあった事はおろか口論した事すら忘れてしまい、しかも周りにいた人々も沈黙してしまったので、このような曖昧な表記となった。朝になっても身体のあちこちが痛かったというから、かなり激しいものであったとされる。
  2. ^ もっとも直接反対意見を述べたのではなく、 ミッターマイヤーとの会話で「ヤン存命中の(採るべき)戦略が死後においてもそうとは限らない」と婉曲に述べただけである。かつ、ミッターマイヤーとの会話の段階で、自分のほうが折れるべきと取り下げており、直接の意見具申は行っていない。
  3. ^ 本人曰く「叛逆者になるのは、一向に構わん。だが、叛逆者に仕立て上げられるのは、ごめん被りたいものだ」

関連項目[編集]