イオンモール須坂

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イオンモール須坂
店舗概要
所在地 長野県須坂市大字福島字内田[1][2]
開業日 2025年令和7年)秋[1][2]
土地所有者 イオンモール株式会社
施設所有者 イオンモール株式会社
施設管理者 イオンモール株式会社
設計者 鹿島建設
施工者 鹿島建設[4][5]
敷地面積 約167,000[1][2] m²
延床面積 約91,000[1][2] m²
駐車台数 約3700[1][2]
商圏人口 約80万人[3]
最寄駅 須坂駅[注 1]
最寄IC 須坂長野東インターチェンジ
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イオンモール須坂(イオンモールすざか)[注 2]は、長野県須坂市大字福島字内田地区で開業予定のショッピングモールである。2025年(令和7年)の秋に開業予定[1][2]

概要[編集]

須坂市中心部から南東に約3km、長野市中心部からは東に約8kmに位置する[1][2][3]北信地方全域及び東信地方西部からの幅広い集客が期待できる立地としている[3]

2021年9月に出店を発表[3]。当初は2024年春に開業を予定したが、建築資材の高騰や建設現場での人手不足の影響を受け[6]2023年8月のプレスリリースにて2025年秋に開業が延期された[1]

鉄骨造・地上3階、一部4階建てを建設[1][2]。イオン直営を除く売り場面積は約6万3千平方メートルで[1][2]イオンモール佐久平イオンモール松本を抜いて県内最大規模となる見込み。

イオンモール須坂を『地域共創』と掲げ、「地域資産や魅力を再発見し、地域と連携し文化や資源を磨き発信する場、そして多世代で楽しめる憩いの場を、地域の皆さまと共創する」としている[2]

名称を巡っては、須坂市・市議会・商議所は『イオンモール須坂』とするよう、イオンモールに要望書を提出した[7][8]

沿革[編集]

  • 2015年7月 - 須坂市、須坂市議会に土地コンサルタント会社「長工」(三重県)からインター須坂流通産業団地西側の農地を商業施設に開発・計画する構想の説明を受ける[9]
  • 2019年9月 - 長工が長野県へ申請していた地域経済牽引事業計画がイオンモール予定地を含む須坂長野東IC周辺地区の開発計画(物流関連産業施設用地と観光集客施設用地)20日付で承認された[10]
  • 2021年6月 - 長工がイオンモール予定地を含む「観光集客施設用地」の造成工事を発注・着手[11]
  • 2021年9月 - イオンモールが出店を正式に発表。2024年春開業を予定した[3]
  • 2023年3月 - 造成工事が完了し、イオンモールに土地を引き渡す[12]。2024年春に開業予定のイオンモール須坂について長工は「開発規模が大きいため、建築資材の高騰などによる影響が大きく、社内で開業時期も含めた事業全体の調整を進めているとの報告をいただいている」とした[12]
  • 2023年8月 - イオンモールが詳細の計画を発表。当初2024年春開業としていたが開業時期が2025年秋に延期された[1]
  • 2024年3月 - イオンモールが着工を発表[2]。後日、起工式を挙行[13]。                           

出店までの経緯[編集]

2015年7月に須坂市、須坂市議会に土地コンサルタント会社「長工」からインター須坂流通産業団地西側の農地を商業施設に開発したいと計画する構想の説明を受けた[9]千曲川に近いことから、災害時は避難できる広域防災拠点型商業施設を提案[9]。提案書『スザカモールプロジェクト~次世代型商業施設・広域防災拠点の取り組み』によると、対象は長野・北信地域の住民60万人強と観光客。イオンモールの賛同を得ていて[9]、イオンモールが出店を検討していた。しかし、予定地はほとんどが農地のため、開発が厳しく規制されていた。長工の田中康雄会長[注 3]は「北信にあつい思いがある。防災拠点と商業施設を融合したまちづくりの提案で、農地法などクリアしないとならない課題は重々分かっているが、可能性がないことはないと思っている」と述べた[9]。同年8月、出席者から見解を求められた須坂市の三木正夫市長は、長工の説明で構想は広域防災拠点型商業施設とされることから「千曲川沿岸にとっては大切な施設になると思う」とし、施設内容については「聞いた限りでは農業、商業、観光、交流などにメリットがあると思う。ただ、市民の一部には市中心部などの商店に影響するのではとの意見もある」と述べた[14]。その後、三木市長は立場を明らかにしなかったが、協議会3回目の会合にて三木市長は「今後、できるだけ早い時期に結論を出したい」とした[15]

同年12月、三木市長は須坂市議会一般質問にて「立地に向けて積極的な支援をしていく」と表明した[16]。今後、建設実現に向けて、市として計画地の用途変更手続きなどに取り組むという[16]。一方で、「土地利用に関する規制が非常に厳しい。これらをクリアしなければならない」との認識も示した[16]。判断に至った理由について、市が設置した協議会や市内外からの意見、各種アンケート結果のほか、県商圏調査で須坂市は衣料品や文化品の市内での購入率が低く、また、市民意識調査で商業活性化に対する満足度が低かったことなどを踏まえて「広く消費者視点から考えると大型商業施設に対する賛成の度合いが高い」と述べた[16]。また、最近は各地の大型商業施設で、地元商店がテナントに入る割合が高くなってきていることなどから「大型商業施設と地元の共創の時代になってきている」とし、加えて、農産物直売所開設による農業振興や、観光拠点などとして、北信広域にとってもプラスになるとした[16]。一般質問後の報道陣の取材に対し、三木市長は地元商店への影響について「影響がないということはないと思うが、今残っている商店は努力して厳しい競争を生き残った店」とし、佐久の岩村田商店街を例に「大型商業施設ができて空き店舗が増えたが、その後努力して元気になった。モデルケースだと思う。大事なのは商業者自身が消費者のニーズを捉え、工夫していくことだと思う」と述べた[16]。三木市長の表明を受けて、須坂商工会議所会頭は「計画実現に向けた大きな一歩。商議所として賛成、反対の段階ではなく、大型商業施設と地元が共存共栄できるように、どうすればいいか検討していきたい」と話し、市商店会連合会会長は、大型商業施設や人口減少などを見据えて「本質的に須坂が変わらなければ。そのためのまちづくりをしていかなければならない。まちづくりを考えるスタート」と話した[16]

2016年2月に市庁内にプロジェクトチームを発足させ、今後、立地を可能にするための土地の用途変更などに向けて、国や県と具体的な調整に入るとした[17]。須坂市議会3月定例会代表質問と一般質問にて、三木市長、市まちづくり推進部長は計画地は市街化調整区域、農用地で規制が厳しいとし、「(立地可能な市街化区域への編入などの見通しは)不透明。手続きは数年かかる」と述べた[17]。立地に向けて最大の課題は「計画地が市街化調整区域で、なおかつ農業振興地域農用地のため、農振除外及び農地転用の調整をした上で、市街化区域への編入が必要。平成21年度に農地法が改正されて以降、特に大型商業施設の立地は難しくなっている」と述べた[17]。市議の「須坂市と同じ条件の下で大型商業施設の立地が成立した所はあるのか」の質問に、市まちづくり推進部長は「農用地から除外、転用し、開発許可を得て行った事例は把握していない」と答えた[17]

2019年5月、信濃毎日新聞が須坂長野東インター北側にイオンモール出店構想の取材に対し、イオンモールは「全国に多くある出店候補地の一つ」とした[18]。 その後、土地利用調整計画の同意を得たことで、地域経済牽引事業計画が承認され、農振法の農用地区域からの除外や、農地法の農地転用が可能になった。都市計画法でも市街化調整区域として規制されているが市は「地区計画」を策定することでクリアできると見込んだ[19]。須坂市まちづくり課によると、大型商業施設と流通団地計画地の対象地権者は200人程度という。これまで市が大規模開発計画地の全地権者約250人に行った意向調査では、回答のあった地権者の9割以上が開発に協力すると答えている[19]

千曲市のイオンモール誘致[編集]

2016年5月に、イオンモールが千曲市にも出店を検討していることが報じられた[20]。話が表面化したのは2015年9月ごろ[21]。須坂市の開発予定地では敷地面積が14.3haだったのに対し、千曲市の構想では20ha規模[20]。計画が検討されている場所は、上信越道長野道が交わる更埴JCTの南側。近くに上信越道のスマートICを設け、県内外の広範囲から集客を図る[20]。イオンモール広報部は取材に「全国でいろいろな物件を探索している関係上、(自社が各方面に)話などを聞いているかもしれないが、現状で決定している事項はない」とした[20]。千曲市の岡田昭雄市長(当時)は「大型商業施設の進出計画があるとは聞いている。地方創生につながるので関心を持ってみている」と話した[20]

同年6月、須坂市は30日の市議会全員協議会で、千曲市で持ち上がっている大型商業施設建設構想に関連した質問が相次ぎ、出席した長工の田中会長は「今のところ(イオンモールにとって須坂市と千曲市)両方が候補地。最終的には先に開発許可を得た方になると思う」との見解を示し、「現状からすると須坂市の方が、開発のスピードがこのままうまくいけば早いとみている」と述べた[22]。中沢正直副市長は「いつまでに開発許可を得られるかは断言できないが、得られるようにスピード感を持って進める」と話した[22]

しかし、話は須坂市より具体化せず2021年3月、千曲市議会3月定例会で、市が屋代地区で進めている開発計画について出店候補地の一つとしていたイオンモールの誘致交渉を中止し、誘致を断念したことを表明した[23]小川修一市長は計画地の今後について「大型商業施設を核とした開発を見直す」、「幅広い産業や文化」を集積し「新たなまちづくりに全力で取り組む」と述べた[23]。信濃毎日新聞の取材に対し、イオンモールは「特段コメントすることはない」とした[23]

長野市のイオンモール出店反対騒動[編集]

2004年に長野市で郊外の南長野にイオンモール(当時はイオンショッピングセンター)が進出する計画が浮上[24][25][26]長野オリンピックスタジアムに隣接する農業振興地域を開発し、敷地面積は19ha、店舗面積も7haと全国的にも例を見ない最大規模であった[24]。イオンモール出店計画が明らかになってから1年後に反対運動は長野商店会連合会や長野商工会議所にも広がり、長野商店会連合会では大型店問題特別委員会を設置[24]。イオンモールの計画は商業発展のみならず、都市機能を危うくすると1万5000人分の反対署名を集め、2005年10月、陳情書とともに鷲澤正一市長(当時)に提出した[24]。長野商工会議所は地権者、商業者、建設業者、消費者、雇用者などあらゆる立場からの問題点を指摘したパンフレット1万部を配布した[24]。翌年2月7日、鷲澤市長が臨時記者会見を開き、イオンの出店をストップさせ、「出店は困難」との見解を示した[24]。「農業振興と環境保全を図る市の計画と合致しない」「地域経済に与えるマイナスの影響が広範囲に及ぶ」として[24][27][28][26]、また都市計画法など「まちづくり三法」の見直しで、大型店の郊外への出店規制を強化する当時の国の動向も踏まえて判断した[26]。同時に、人口減少や高齢化といった社会状況などを勘案し、市街化区域の郊外への拡大を抑制して、それまでの開発型から保全型への土地利用の転換を図る方針も示し[26]、「大型店の出店は当面、既存市街地を中心とした出店に限定することが望ましい」と判断[24]。市は農地の用途変更を認めず、出店手続きを進めない方針を明らかにし、長野市へのイオンモール出店計画は白紙となった。

その後、2015年に須坂市へのイオンモールの出店計画が明らかになった際、長野商工会議所と長野市商工会、長野、篠ノ井、松代の商店会連合会は、加藤久雄市長(当時)に長野市の既存商業やまちづくりに悪影響が出るとして、計画の撤回に向けて働きかけるよう求める要望書を提出[26][25]。その理由として、長野市内の消費者がイオンモールに流れる点や、地元の中小・零細小売店が減少する点、パートやアルバイトの雇用のみが増えるだけで定住人口は増加しない点などをあげた[25]。対して加藤市長は「重く受け止める」と答えた。買い物難民や中心市街地の空洞化を招きかねないなどとした上で、「計画地は優良農地なので国、県、須坂市がどう判断するか。みなさんの意見を聞いて須坂市に話したい。広域でどういうまちづくりがいいのかという観点から考えていく必要もある」と話した[26]。しかし、計画は覆らず須坂市にイオンモールが出店することが決定した。2023年4月、荻原健司市長は定例記者会見で「(同市の事業者が悪影響を受けないよう)早急に対策に取り組んでいく」と語り、市内の店舗の紹介などを行い、イオンモール須坂の来店客が長野市内を回遊する施策に取り組むとした[29]

アクセス[編集]

備考[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 屋代線廃線までは井上駅が最寄り駅であった。須坂駅からイオンモールを結ぶ路線バスが運行される予定。
  2. ^ 2024年4月時点では仮称である。
  3. ^ 長野県長野工業高校出身。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k 「(仮称)イオンモール須坂」 計画概要について”. イオンモール. 2024年4月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k ~地域とともに共創する場をめざして~「(仮称)イオンモール須坂」 建築着工について”. イオンモール. 2024年4月1日閲覧。
  3. ^ a b c d e 「(仮称)イオンモール須坂」 の出店について”. イオンモール. 2024年4月1日閲覧。
  4. ^ イオンモール須坂 施工は鹿島建設が/来年秋開店予定 – 長野経済新聞社”. 長野経済新聞. 2024年4月1日閲覧。
  5. ^ (仮称)イオンモール須坂の起工式祝辞・市民の安全安心を守る、須坂市消費生活・特殊詐欺被害防止センター”. 須坂市・市長のコラム. 2024年4月1日閲覧。
  6. ^ イオンモール須坂、25年秋に開業 資材高騰で遅れ - 日本経済新聞”. 日本経済新聞. 2024年4月1日閲覧。
  7. ^ 須坂新聞WEBサイト 「イオンモール須坂」を熱望~須坂市・市議会・商議所がイオンに要望書を提出”. 須坂新聞. 2024年4月1日閲覧。
  8. ^ 名称は「イオンモール須坂」に、市などが要望書 IC北側に計画の大型店巡り|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト”. 信濃毎日新聞. 2024年4月1日閲覧。
  9. ^ a b c d e 須坂新聞WEBサイト 防災拠点と大型商業施設、業者が市議会に構想説明”. 須坂新聞. 2024年4月1日閲覧。
  10. ^ 須坂新聞WEBサイト 【インター周辺地区の開発】イオンモールなどの進出計画承認~来秋の造成着工めざす”. 須坂新聞. 2024年4月1日閲覧。
  11. ^ 須坂新聞WEBサイト 【インター周辺地区開発】北信の新たなにぎわい拠点計画中”. 須坂新聞. 2024年4月1日閲覧。
  12. ^ a b 須坂新聞WEBサイト 【イオンモール】資材の高騰影響で開業時期など調整”. 須坂新聞. 2024年4月1日閲覧。
  13. ^ 「地域全体のプラスとなるような施設に」長野県須坂市のイオンモールで起工式”. SBC信越放送. 2024年4月1日閲覧。
  14. ^ 須坂新聞WEBサイト 井上の大型商業施設建設計画(1)~三木須坂市長が市民会議で見解(2015.08.08)”. 須坂新聞. 2024年4月1日閲覧。
  15. ^ 須坂新聞WEBサイト 「できるだけ早い時期に結論」大型商業施設計画”. 須坂新聞. 2024年4月2日閲覧。
  16. ^ a b c d e f g 須坂新聞WEBサイト 大型商業商業施設の「支援」表明~三木須坂市長が一般質問で答弁”. 須坂新聞. 2024年4月2日閲覧。
  17. ^ a b c d 須坂新聞WEBサイト 大型商業施設計画土地調整「不透明、数年かかる」”. 須坂新聞. 2024年4月2日閲覧。
  18. ^ 須坂 コストコ出店構想 IC北側 ルートインホテルも”. 信濃毎日新聞. 2019年5月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月1日閲覧。
  19. ^ a b 須坂新聞WEBサイト 【須坂市】土地利用調整計画が同意~大規模開発計画地の西側部分”. 須坂新聞. 2024年4月1日閲覧。
  20. ^ a b c d e 千曲市に大型商業施設出店検討 イオンモール”. 信濃毎日新聞. 2016年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月3日閲覧。
  21. ^ 長野)土地区画整理の準備会発足 千曲市:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞. 2017年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月1日閲覧。
  22. ^ a b 須坂新聞WEBサイト 【流通団地と産業団地計画】スピード感持ち開発許可目指す”. 須坂新聞. 2024年4月3日閲覧。
  23. ^ a b c 千曲市「大型商業施設誘致見直し」 市長、交渉中止を表明|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト”. 信濃毎日新聞. 2024年4月3日閲覧。
  24. ^ a b c d e f g h イオンなど4店舗 出店を阻止 長野市「商業環境形成指針」を適用”. 全国商工団体連合会. 2024年4月1日閲覧。
  25. ^ a b c 須坂長野東IC北側の商業施設計画撤回を 商議所などが要望 - 産経ニュース”. 産経新聞. 2024年4月1日閲覧。
  26. ^ a b c d e f 須坂新聞WEBサイト 井上の大型商業施設建設計画(2)~長野市で商業団体が加藤長野市長に”. 須坂新聞. 2024年4月2日閲覧。
  27. ^ 西川立一/流通ジャーナリスト、マーケティングプランナー、ラディック代表取締役. “長野市が市内イオンモール出店に反対→隣の市に出店され危機感表明「客流れる」”. ビジネスジャーナル/Business Journal | ビジネスの本音に迫る. 2024年3月28日閲覧。
  28. ^ イオン出店を拒否/経済・農業・環境に悪影響/長野市”. しんぶん赤旗. 2024年4月1日閲覧。
  29. ^ 長野・荻原市長「早急に対策」 須坂市の商業施設出店に - 日本経済新聞”. 日本経済新聞. 2024年4月1日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]