アインシュタインテンソル

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微分幾何学において、アインシュタインテンソル(Einstein tensor)(アルベルト・アインシュタインの名前に因んでいて、逆トレースリッチテンソルとしても知られている)は、擬リーマン多様体曲率を表現することに使われる。一般相対論において、アインシュタインテンソルは、エネルギーと整合性を持つような方法で、時空の曲率を記述する重力アインシュタイン方程式の中で発生する。

定義[編集]

アインシュタインテンソル は、擬リーマン多様体上に定義されたランク 2 のテンソルであり、添字のない記法では、

として定義される。ここに リッチテンソルであり、計量テンソルであり、スカラー曲率である。成分を持つ形で表すと、上記方程式は、

のようになる。

アインシュタインテンソルは、対称であり、

となり、ストレス・エネルギーテンソルは、発散がなく、

である。

明示的な形[編集]

リッチテンソル計量テンソルへ依存しているので、アインシュタインテンソルは直接、計量テンソルで定義することができる。しかしながら、この表現は複雑で、教科書を引用するだけである。この表現の複雑さは、クリストッフェル記号のことばでリッチテンソルの公式を使い示すことができる。

ここに、クロネッカーのテンソルでクリスとフェル記号 は、

と定義される。

キャンセレーションの前に、この公式は、 個の個別な項となる。キャンセレーションはこの数をいくらかは小さくする。

一点の近くの局所慣性座標系の特殊な場合には、計量テンソルの一階微分が 0 となり、アインシュタインテンソルの成分による表示はかなり単純化される。

ここに、鍵括弧は伝統的に括弧付き添字上で反対称性を表す。つまり

である。

トレース[編集]

アインシュタインテンソルのトレースは、計量テンソル をその定義の中に持つ方程式を縮約(contract)することにより計算される。(任意符号の) 次元では、

である。

物理学での 4次元(3空間次元、1時間次元)の特別な場合はアインシュタインテンソルのトレース は、 の負の部分、リッチテンソルのトレースとして与えられる。このようにアインシュタインテンソルのもうひとつの別の名前は、逆トレースリッチテンソル(trace-reversed Ricci tensor)である。

一般相対論の中での使用[編集]

アインシュタインテンソルは、(宇宙項のない)アインシュタイン方程式を次の正確な形に書き表すことを可能とする。

ここに幾何単位系で(つまり、c = G = 1 とする)、

である。

アインシュタインテンソルの明示的な形により、アインシュタインテンソルは、計量テンソルの非線型函数であるが、計量の 2階の偏微分では線型である。対称なランク 2 のテンソルとして、アインシュタインテンソルは 4次元空間内の10 個の独立成分を持つ。このことから、アインシュタイン場の方程式は、計量テンソルの 10 個変数の準線型英語版(quasilinear)の 2階の偏微分方程式である。

ビアンキ恒等式は、アインシュタインテンソルの助けで容易に次のようにも表現できる。

ビアンキ恒等式は、自動的に曲がった時空の中のストレス・エネルギーテンソルの共変に保存することを保証する。つまり、

アインシュタイテンソルの物理学的な意味は、この等式により非常に重要であることがわかる。キリングベクトル 上で縮約された密度化ストレステンソルの項では、通常の保存則は、

である。

一意性[編集]

デーヴィッド・ラヴロック英語版(David Lovelock)は、4次元微分可能多様体では、アインシュタイテンソルは単にテンソル的で 発散のない函数であり、高々、一階か二階の偏微分であることを示した。[1] [2] [3] [4]

しかしながら、アインシュタイン方程式は、

  1. ニュートン・ポアソンの重力方程式英語版(Newton-Poisson gravitational equation)と似ていて、一般化した方程式である。
  2. すべての座標系へ適用でき、
  3. 任意の計量テンソルに対しエネルギー運動量テンソルの局所共変性が保存されることを保証する。

の 3つの条件を満たす方程式であるばかりでない[5]アインシュタイン・カルタン理論英語版(Einstein–Cartan theory)などのように、上の条件をも満たす、これに代わる理論が多く提案されている。

参照項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ Lovelock, D. (1971). “The Einstein Tensor and Its Generalizations”. Journal of Mathematical Physics 12 (3): 498–502. Bibcode 1971JMP....12..498L. doi:10.1063/1.1665613. オリジナルの2013年2月24日時点によるアーカイブ。. https://archive.is/20130224020351/http://jmp.aip.org/resource/1/jmapaq/v12/i3/p498_s1?isAuthorized=nof. 
  2. ^ Lovelock, D. (1969). “The uniqueness of the Einstein field equations in a four-dimensional space”. Archive for Rational Mechanics and Analysis 33 (1): 54–70. Bibcode 1969ArRMA..33...54L. doi:10.1007/BF00248156. http://link.springer.com/article/10.1007%2FBF00248156?LI=true. 
  3. ^ Farhoudi, M. (2009). “Lovelock Tensor as Generalized Einstein Tensor”. General Relativity and Gravitation 41 (1): 17–29. http://arxiv.org/abs/gr-qc/9510060. 
  4. ^ Rindler, Wolfgang (2001). Relativity: Special, General, and Cosmological. Oxford University Press. p. 299. ISBN 0-19-850836-0. 
  5. ^ Schutz, Bernard (May 31, 2009). A First Course in General Relativity (2 ed.). Cambridge University Press. p. 185. ISBN 0-521-88705-4.