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アインシュタインの縮約記法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学の分野である線形代数、特にテンソルの計算において、アインシュタインの縮約記法(アインシュタインのしゅくやくきほう、: Einstein summation convention)とは、上下に同じ添字がついているときはの記号を省略できるという規約である。

アインシュタインの記法(アインシュタインのきほう、: Einstein notation)、アインシュタインの規約(アインシュタインのきやく、: Einstein convention)、総和規約[1]添字 (index) の和の記法、などと呼ばれる。

この縮約記法はテンソルを用いた計算、例えばリーマン多様体におけるリッチ計算英語版を簡便にするのに役立ち、その応用分野である特殊および一般相対性理論でも役立つ。

この記法が有用なのは、(後述する添字の付け方の規約を併用した場合)、上下に同じ添字がついているときその添字に対する和(縮約)は座標変換によらないという点である[2]

アインシュタインが 1916 年に用いた[3]。アインシュタインはこの記法を自分の「数学における最大の発見」と(冗談めかして)言ったという[4]

概要

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アインシュタインの縮約記法は

といった数式において、上付きの添字と下付きの添字で同一の記号が登場する(この例では双方ともこの条件に該当)ときは和の記号を省略し

と表記するという規約である。

同じ添字であっても上付き同士、下付き同士の場合は和を省略できない。例えば

では2つのはいずれも上付きなのでとは書けるがとは書けない。

この縮約記法を採用すると、数式に登場する添字(「指標」とも呼ばれる)の中には実は和を取っているものとそうでないものが混在する事になる。前者を擬標(またはダミーの添字、dummy index)、後者を自由標(またはフリーの添字、free index)と呼ぶ。

上付き、下付きに関する規約

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本節ではテンソル計算や多様体論でどの添字を上付き、下付きにするかの規約を説明する。これらの規約はアインシュタインの縮約記法を用いる上での前提条件として用いられる。

ベクトルの添字

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をベクトル空間とし、をその双対空間とするとき、

の元を書き表すときは

のようにベクトルの添字を下付き、係数の添字を上付きに表す規約である。一方の元を書き表すときは逆に

のようにベクトルの添字を上付き、係数の添字を下付きにする規約である。

なお、(が有限次元ベクトル空間であれば)二重に双対を取った自身と等しいので、のうちどちらを「もとの空間」、どちらを「双対空間」とするかはその場の議論で着目しているのがどちらの空間であるかによる。

テンソルの添字

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のテンソル積の添字は、ベクトルの規約に準じる。例えばの元に対しては、

のようには下付き、は上付き、係数と上下を反転した位置に添字をつける。

多様体論における添字

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多様体論では多様体の局所座標はのように上付きで添字をつける規約である。このようにしておくと、余接ベクトル

のように上に添字がくるため前述した双対空間のベクトルの添字を上につける規約と合致する。それに対し接ベクトル

のように記載されるが、添字が分母側についているので、これを「下にある添字」と解釈すれば前述した双対ではない空間のベクトルの添字を下につける規約と合致する。

相対性理論における添字

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特殊相対性理論ではベクトル、双対ベクトルの基底部分を略して単にと記述し、これらをそれぞれ反変ベクトル、共変ベクトルと呼ぶ。この言葉使いにしたがえば、「反変ベクトルは上付き、共変ベクトルは下付き」となる。

一般相対性理論でも同様に、多様体の接ベクトル、余接ベクトルを略してと記述し、それぞれ反変ベクトル、共変ベクトルと呼ぶので、やはり「反変ベクトルは上付き、共変ベクトルは下付き」となる。

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4 次元空間における2つのベクトル aμbμ (μ = 1, 2, 3, 4) の内積を、縮約記法では、aμ bμ と記す。これは、具体的には

を意味する。

計量 (metric) が gμν (μ, ν = 0, 1, 2, 3) として表される曲がった時空において、ベクトルの内積は

と書かれる。最後の式は 4 次元の場合の縮約を、和の形で書いたものである。

特に特殊相対性理論場の量子論で標準的に用いられるミンコフスキー空間での内積は、計量が ημν = diag(1, 1, 1, 1) であることを前提として

が成り立つ。(宇宙論などでは、符号を逆に取る流儀もある)

出典

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  1. James B. Hartle; 牧野伸義 訳『重力』(上)日本評論社、2016年、161-163頁。ISBN 978-4-535-78779-7
  2. 深谷賢治『解析力学と微分形式』岩波書店、2004年。ISBN 4-00-006884-9
  3. Einstein, Albert (1916). “The Foundation of the General Theory of Relativity” (PDF). Annalen der Physik. オリジナルの2007年7月22日時点におけるアーカイブ。 2006年9月3日閲覧。.
  4. ダニエル・フライシュ 著、河辺哲次 訳『物理のためのベクトルとテンソル』岩波書店、2013年、139頁。ISBN 978-4-00-005965-7

関連項目

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