いつくしま (巡視船)

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いつくしま
基本情報
建造所 三菱重工業下関造船所[1][2]
運用者  海上保安庁
船種 大型巡視船(練習船)
前級 こじま (3,000トン型)
建造費 約120億円[3]
母港 呉港(予定)[2]
船歴
計画 令和2年度第3次補正[1][2]
進水 2023年7月4日[1]
就役 2024年7月予定[1][2]
要目
総トン数 約5,500トン[2]
全長 約134メートル[2]
約16.3メートル[2]
主機 ディーゼルエンジン×2基[2]
推進 スクリュープロペラ×2軸[2]
速力 約20ノット以上[2]
兵装
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いつくしま」(JCG Itsukushima, PL-23)は、海上保安庁巡視船海上保安大学校の5代目の練習船を兼務することから予算上は「大型練習船」とも称され[4]、海上保安庁の新造練習船としては史上最大である[1][2]。総事業費は約120億円[3]

来歴[編集]

1993年の「こじま」の竣工以降、同船は呉海上保安部(第六管区)の巡視船としての救難業務とともに、海上保安大学校の練習船としての業務に供されてきた[5]。一方、海上保安庁は2016年より人材の確保・育成や教育訓練施設の拡充など業務基盤の強化を図っており[1]、幹部職員を増員するため、海上保安大学校でも本科学生・特修科研修生ともに定員を増やすとともに、令和3年(2021年)度からは一般大学卒業者を対象とした「初任科課程」も新設されている[3]。このため、「こじま」の乗船実習環境では学生・研修生の増加に的確に対応することが困難となっていた[1]

このことから、2022年12月16日に閣議決定された「海上保安能力強化に関する方針」に基づき、増加する学生・研修生への対応と効率的な乗船実習を実現するために建造されることになったのが本船である[1]

設計[編集]

設計面では、みやこ型(3,500トン型PL)を大型化したような長船首楼船型が採択された[1]。「こじま」と比べると、船体の大型化に伴って乗船可能な実習生は約60名から約100名へと増加している[2]

効率的に乗船実習を実施できるように各種区画が追加されたことで、前・後部上構ともに大型化している[1]。前部上構には、通常の航海船橋(上段)に加えて実習船橋(下段)が設けられている[1]。この実習船橋には実際の航海計器も設置され、操船権を切り替えることが可能になっており、両船橋で同時に航海当直実習の実施が可能になるとともに、実習船橋において、船内火災等の緊急時の対応や事案対応を想定した実践的な訓練が実施可能となっている[1]

一方、後部上構には多人数の授業や訓練に対応できる学生教室および多目的室が設けられており、多目的室はレセプション・スペースも兼務して、遠洋航海における各寄港地での国際交流にも活用が可能になる[1]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 宇田川 2023.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n 海人社 2023, p. 50.
  3. ^ a b c 深水 2023.
  4. ^ 海上保安庁 2021, p. 5.
  5. ^ 海人社 2023, p. 54.

参考文献[編集]

  • 宇田川大造「PL (海上保安庁船艇の全容)」『世界の艦船』第1005号、海人社、138-141頁、2023年11月。CRID 1520016217210916480 
  • 海上保安庁『令和3年度 海上保安庁関係予算概要』2021年https://www.mlit.go.jp/page/content/001383007.pdf 
  • 海人社 編「警備救難業務用船 (海上保安庁船艇の全容)」『世界の艦船』第1005号、海人社、39-90頁、2023年11月。CRID 1520860642141041280 
  • 深水千翔「「多くの学生を一挙に教育」海上保安庁25年ぶり新練習船が誕生 “離島警備”想定のマンモス仕様!」『乗りものニュース』、メディア・ヴァーグ、2023年8月4日https://trafficnews.jp/post/127299