やはぎ型巡視船

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やはぎ型巡視船
基本情報
艦種 350トン型PS→PM
就役期間 1956年 - 2000年
前級 てしお
次級 まつうら型
要目
常備排水量 377トン
総トン数 316トン
全長 50.3 m
最大幅 7.3 m
深さ 4.1 m
吃水 2.16 m
主機 池貝鉄工6MSB31S
ディーゼルエンジン×2基
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 1400馬力
速力 15.5ノット
航続距離 3,700海里
乗員 44名(最大搭載人員)
兵装 20mm単装機銃×1基
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やはぎ型巡視船(やはぎがたじゅんしせん、英語: Yahagi-class patrol vessel)は、海上保安庁が運用していた巡視船の船級。分類上はPS型(1968年にPMに種別変更)、公称船型は改350トン型[1][2]

来歴[編集]

海上保安庁では、創設直後に整備されたPSである270トン型について、荒天時の動揺が問題となっていた。このため、昭和29年度計画で建造された「てしお」では横揺れ周期の延長によって是正を図ったが、期待したほどの効果を得られなかった。このことから、別のアプローチでの横揺性能改善を図り、昭和30年度計画より建造を開始したのが本型である[3]

設計[編集]

本型では、横メタセンタ高さ(GM値)は従前どおりに戻される一方、船体横断面の湾曲部曲率を小さくすることで横揺れに対する抵抗を大きくしたうえ、船幅も大きくした。これにより、横揺れは相当に軽減された。また、重心降下のために「てしお」で復活した木甲板は再度廃止され、それに代わって「デックス・オ・テックス」による塗装が行われた。3 - 6番船は北方配備が予定されていたことから、水線付近の外板を全長にわたって本格的耐氷外板(船首尾部は14mm、中央部で8mm)としたほか、居住区防滴対策として天井及び側壁にポリスチロール発泡体を、床面にはバーミック・ビチュメントを施行した[1]

主機関はとかち型以来の、池貝鉄工製6MSB31Sディーゼルエンジンが踏襲された[4]。なお、機関区画については従来は主機室・補機室の2区画式であったのに対し、本型では保守の便を考え、両者を統合した1区画式に改めた[1]

兵装としては、従来のPSと同様に60口径40mm単装機関砲を予定したが、実際には供給不足のために20mm単装機銃を搭載していた[2][5]

同型船一覧[編集]

計画年度 # 船名 建造所 竣工 解役
昭和30年 PS-54
→ PM-54
やはぎ 新潟鐵工所 1956年
(昭和31年)
7月31日
1982年
(昭和57年)
1月18日
昭和31年 PS-55
→ PM-55
すみだ 1957年
(昭和32年)
6月30日
1983年
(昭和58年)
2月10日
昭和32年 PS-56
→ PM-56
ちとせ 1958年
(昭和33年)
4月30日
1983年
(昭和58年)
2月15日
昭和33年 PS-57
→ PM-57
そらち 1959年
(昭和34年)
3月31日
1984年
(昭和59年)
8月2日
昭和34年 PS-58
→ PM-58
ゆうばり 1960年
(昭和35年)
3月15日
1985年
(昭和60年)
10月29日
昭和35年 PS-59
→ PM-59
ほろない 1961年
(昭和36年)
2月4日
1986年
(昭和61年)
10月23日
琉球警察
救難艇として
建造
PM-69 おきなわ
→ みささ(1988年 - )
臼杵鉄工所 1970年
(昭和45年)
10月1日
1971年
(昭和46年)
9月25日
琉球海上保安庁へ編入)
1972年
(昭和47年)
5月15日
(海上保安庁へ編入)
2000年
(平成12年)
5月18日

出典[編集]

  1. ^ a b c 徳永陽一郎、大塚至毅『海上保安庁 船艇と航空 (交通ブックス205)』成山堂書店、1995年、72-74頁。ISBN 4-425-77041-2 
  2. ^ a b 「海上保安庁全船艇史」『世界の艦船』第613号、海人社、2003年7月、74頁、NAID 40005855317 
  3. ^ 真山良文「海上保安庁船艇史」『世界の艦船』第538号、海人社、1998年5月、90-99頁。 
  4. ^ 佐藤一也「4サイクルディーゼル機関の技術系統化調査」『国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第12集』2008年3月。 
  5. ^ 中名生正己「巡視船 武装の歩み(下)」『世界の艦船』第825号、海人社、2015年11月、168-173頁。