びざん型巡視船 (2代)
びざん型巡視船 (2代) | |
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PS08「かりば」 |
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基本情報 | |
艦種 | 180トン型PS |
就役期間 | 1994年 - 現在 |
前級 | みはし型 |
次級 | つるぎ型 (高速特殊警備船) しもじ型 (規制能力強化型) |
要目 | |
総トン数 | 197トン |
全長 | 46.0 m |
最大幅 | 7.5 m |
深さ | 4.1 m |
吃水 | 1.65 m |
主機 | ディーゼルエンジン×3基 |
推進器 | スクリュープロペラ×2軸 ウォータージェット推進器×1基 |
出力 | 9,400 hp/7,000 kW |
速力 | 35ノット |
乗員 | 15名 |
兵装 | JM61-RFS 20mm多銃身機銃×1門 |
搭載艇 | 5.4m型複合艇 |
FCS | RFS射撃指揮装置 (20mm機銃用) |
レーダー | 航海用×1基 |
光学機器 | 赤外線捜索監視装置 (RFS兼用) |
びざん型巡視船(びざんがたじゅんしせん、英語: Bizan-class patrol vessel)は、海上保安庁の巡視船の船級。分類上はPS型、公称船型は180トン型[1][2]。ネームシップが配置替えに伴って改名したことから、びざん型→ばんな型→らいざん型と変遷してきた[3]。
設計[編集]
海上保安庁は、昭和62年度から平成元年度にかけて、高速力と外洋行動能力を両立させた新型巡視船として、180トン型PS 4隻を建造した。しかし同型では、計画段階では全長46メートルとされていたものの、諸般の事情により、全長43メートルに短縮して建造されていた[4]。本型は、同型をもとに全長を46メートルに延長し、清水や食料の搭載量を増すことで、連続行動時間の延長と居住性の向上を図った改良型である[3]。
このような経緯から、主機関は当初、同型のものを踏襲して、SEMT ピルスティク製(富士ディーゼル、後に新潟鐵工所によりライセンス生産)の4サイクル高速ディーゼルエンジンを3基搭載しており、V型16気筒型の16PA4V-200VGA(単機出力3,500馬力)を両舷に配してスクリュープロペラ各1軸(計2軸)を、V型12気筒型の12PA4V-200VGA(単機出力2,400馬力)を中央機として低速用ウォータージェット推進機1基を駆動する方式とされていた[5]。
その後、新日韓漁業協定を受けて平成10年度で建造された7番船「みずき」は「捕捉機能強化型」と称され、防弾性や装備の強化に伴う重量増を補うため、中央機を両舷機と同機種として出力を増強した。そして平成14年度の8番船「こうや」以降は、推進器をウォータージェット2基に変更するとともに、舵を廃止、船幅を30センチ広げるなど、事実上の改型となっている[3]。
装備[編集]
当初は1番船は非武装、2~6番船は機側操作の13mm単装機銃(ブローニングM2重機関銃)を搭載していたが、竣工後、全船で赤外線捜索監視装置との連接によって目標追尾型遠隔操縦機能(RFS)を備えたJM61-RFS 20mm多銃身機銃に換装されており、平成14年度計画船以降は当初からこれを搭載して建造されている[3]。
また捕捉機能強化型では暗視装置や高圧放水銃を装備しており、これは平成14年度計画以降の建造船でも踏襲された[3]。
同型船[編集]
本来は巡視船艇の船名は転属に伴って改名されるが、九州南西海域工作船事件に従事した7番船のみずきはその功績から例外として転属後もその名を留めている。なお、みずきは2010年の尖閣諸島中国漁船衝突事件にも従事しており、2012年7月には魚釣島の領海を侵犯した台湾の海岸巡防署の巡視船と衝突している[6]。
「のばる」は、2016年4月8日、21時ごろ、夜間のパトロールを終えて平良港へ入港する際、下崎北防波堤の西側に衝突した。乗組員15名のうち3名が骨折などの重傷、残り12名も軽傷を負った[7]。船首を大破し航行不能となった「のばる」は、翌9日に曳航により港内に移動された後、係船されていたが、その後、2016年9月に深田サルベージの新日丸に曳航され、三菱重工業下関造船所へ入渠した。2017年2月下旬に修理完了し3月に再配備された。
また、日本政府はフィリピン沿岸警備隊に同型をモデルシップとする40m級多目的対応船(Parola級巡視船)10隻を供与する。
計画年度 | # | 船名 | 建造所 | 起工 | 進水 | 竣工 | 所属 | 退役・備考 |
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平成4年 | PS-06 | びざん → ばんな → らいざん |
三菱重工業下関工場 | 1993年4月6日 | 1993年11月15日 | 1994年1月31日 | 徳島(旧小松島)(第五管区) → 石垣(第十一管区) → 福岡(第七管区) |
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平成4年 補正 |
PS-05 | かむい | 日立造船神奈川工場 | 1993年4月12日 | 根室(第一管区) → 江差(第一管区) |
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平成5年 第1次補正 |
PS-07 | あしたか | 三井造船玉野事業所 | 1993年12月9日 | 1994年6月24日 | 1994年9月30日 | 横須賀(第三管区) | |
平成5年 第3次補正 |
PS-08 | くらま → かりば |
三菱重工業下関工場 | 1994年9月21日 | 1995年5月25日 | 1995年8月29日 | 隠岐(第八管区) → 江差(第一管区) → 根室(第一管区) |
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平成7年 | PS-09 | あらせ | 1996年4月9日 | 1996年10月4日 | 1997年1月29日 | 宿毛(第五管区) | ||
PS-10 | さんべ | 日立造船神奈川工場 | 1996年10月22日 | 隠岐(第八管区) | ||||
平成10年 第3次補正 |
PS-11 | みずき | 三井造船玉野事業所 | 1999年3月16日 | 2000年4月28日 | 2000年6月9日 | 福岡(第七管区) → 石垣(第十一管区) |
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平成14年 | PS-12 | こうや | ユニバーサル造船京浜事業所 | 2003年3月24日 | 2003年11月19日 | 2004年3月18日 | 田辺(第五管区) | |
平成19年 | PS-13 | つくば | 三菱重工業下関造船所 | 2007年12月4日 | 2008年7月8日 | 2009年3月4日 | 銚子(第三管区) | |
PS-14 | あかぎ | 2007年12月4日 | 2008年10月21日 | 茨城(第三管区) | ||||
平成21年 | PS-15 | びざん | 2010年4月26日 | 2010年8月6日 | 2011年4月26日 | 徳島(第五管区) | ||
PS-16 | のばる | 2010年11月16日 | 宮古島(第十一管区) | 2016年4月8日、平良港で防波堤に衝突、船首部を大破[7] 2017年3月再配備 |
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平成21年 補正 |
PS-17 | たかちほ | 2011年4月14日 | 2011年8月24日 | 宮崎(第十管区) → 種子島(第十管区) |
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PS-18 | さんれい | 2011年4月26日 | 2011年7月6日 | 2012年3月12日 | 高知(第五管区) | |||
PS-19 | あさじ | 2011年12月1日 | 対馬(第七管区) | |||||
平成29年 | 2018年度 (平成30年)度 |
登場作品[編集]
- 『BRAVE HEARTS 海猿』
- 「びざん」が登場。大阪湾でタンカーとコンテナ船が衝突する海難事故が発生したことを受け、現場に急行し救助活動にあたる。
参考文献[編集]
- ^ 徳永陽一郎、大塚至毅 『海上保安庁 船艇と航空 (交通ブックス205)』 成山堂書店、1995年、130-131頁。ISBN 4-425-77041-2。
- ^ 「海上保安庁のすべて」、『世界の艦船』第714号、海人社、2009年11月、 21頁、 NAID 40016812500。
- ^ a b c d e 「警備救難業務用船 (海上保安庁船艇の全容)」、『世界の艦船』第800号、海人社、2014年7月、 66-67頁、 NAID 40020105550。
- ^ 海上保安庁装備技術部船舶課計画係「海上保安庁の船艇ができるまで (特集 海上保安庁)」、『世界の艦船』第628号、海人社、2004年7月、 156-159頁、 NAID 40006239106。
- ^ 佐藤一也「4サイクルディーゼル機関の技術系統化調査」、『国立科学博物館 技術の系統化調査報告 第12集』2008年3月。
- ^ 海保「みずき」と接触=領海侵入の台湾巡視船-尖閣沖、時事通信、2012年7月4日
- ^ a b “宮古で海保船衝突、15人けが 船首大破、「入港進路誤り」”. 琉球新報 (琉球新報社). (2016年4月10日) 2016年11月6日閲覧。
関連項目[編集]
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