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補助動力装置

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エアバス 318/319/320/321 で使われている補助動力装置 APIC APS3200

補助動力装置(ほじょどうりょくそうち、Auxiliary Power Unit : APU)とは、航空機の各部に圧縮空気油圧電力を供給するため、メインエンジンとは別に搭載された小型のエンジンである。メインエンジンを起動するために必要な圧縮空気の供給、また駐機中における各装置(エアコンなど)への動力の供給に用いられる。メインエンジンは単独では起動できないが、APUは自機自身のバッテリからの電力で自力で起動できるため、APUを搭載することで地上からのエネルギーの供給なしにメインエンジンの起動が可能となる。

概要

ガソリンレシプロエンジンによる APU は、1916年Pemberton-BillingP.B.31 Night Hawk Scout で初めて使われた。ガスタービンエンジンによる APU を初めて搭載したジェット旅客機1963年ボーイング727で、小さな地方空港でも地上施設に左右されず運用可能となった。

各種の軍用機民間機に APU が搭載されてきたが、その取り付け場所はさまざまであった。現代のジェット旅客機では後部に搭載されることが普通となり、多くの旅客機では尾部に APU の排気管がある。

ほとんどの場合、APU は小型のガスタービンエンジンで作動していて、圧縮空気はその内部からか圧縮機を動かすことで供給されている。最近では、ロータリーエンジンを使う研究が始まっている。ロータリーエンジンは、普通のピストンエンジンよりもパワーウェイトレシオで優れていて、タービンエンジンよりも燃費で優れている。

ETOPS 航空機に取り付けられた APU は、緊急時において停止したエンジンの代わりに電力や圧縮空気を供給しなければならないので、特に重要である。航空機の飛行中には始動できない APU もあるが、ETOPS 規格の APU はあらゆる高度で飛行中に始動できなければならない。最近の適用では、43,000ft で完全な低温曝露状態から始動できることが要求されている。APU やその発電機が使えない場合は、その航空機は ETOPS 飛行を行なうことはできず、より長いルートを取らざるを得ない。

スペースシャトルの運航では、APU はさらに重要である。航空機の APU とは違い、電力ではなく油圧を供給する。スペースシャトルには、ヒドラジンを燃料とする APU が 3台(冗長に)搭載されている。これらは、離陸上昇時と、大気圏再突入後の着陸時にしか使われない。離陸上昇時には、エンジンジンバル制御と操縦翼面に油圧を供給する。着陸時には、操縦翼面とブレーキを駆動する。APU が 1つでも動作していれば着陸は可能で、STS-9 ではコロンビアの 2つの APU から発火したが、着陸に成功した。[1]

APUは作動時に騒音や大量の排気ガスを出すので、東京国際空港成田国際空港関西国際空港では使用が制限されており、日本国内のその他の空港でも地上施設や車両から駐機中の航空機へ電気や冷暖房を供給する地上動力装置GPU)への切り替えが進められている。

構造

民間輸送機用の典型的なガスタービン APU は、主に 3つのセクションから構成されている。

  • 動力部
  • 負荷圧縮機 (Load Compressor)
  • ギアボックス

動力部はエンジンのガス生成機で、APU のすべての動力を生み出す。圧縮機は、一般にシャフトに取り付けられており、航空機のすべての空気圧を提供する。圧縮機への気流を制御する入口案内翼と、ターボ装置を安定させサージングフリーで運用させるためのサージ制御バルブの両装置も駆動する。エンジンの3番目のセクションはギアボックスで、エンジンのメインシャフトから電力用の油冷式発電機まで力を伝える。ギアボックスの内部では、燃料制御ユニットや潤滑油モジュール冷却ファンなどのエンジン付属品にも力が伝えられている。さらに、APU を始動させるためのスターターモーターがギア装置を経由して接続されている。

全てが電動化されている航空機であるボーイング787では、APU は電力だけを供給している。空気圧系統が無いのでシンプルな設計になるが、何百kWもの電力が求められるため、大きく重い発電機と独特なシステム要件が必要とされる。

航空機の APU 市場では、3つの主な会社が競合している。ユナイテッド・テクノロジーズ社(子会社のハミルトン・サンドストランド社とプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社)、ハネウェル社、クリーモフ設計局である。

APU が停止した場合には、Air Start Unit (ASU) と Ground Power Unit (GPU) の両方が必要となる。

関連項目

外部リンク