着氷性の霧
着氷性の霧(ちゃくひょうせいのきり、Freezing fog)とは、微小な過冷却の水滴が浮遊する気象現象のこと。霧の一種。着氷性霧、過冷却の霧、過冷却霧などとも言う。
過冷却の水の性質上、この霧は物体の表面に衝突すると、その衝撃で凍結し氷になる。水滴の大きさによって、さまざまな形の氷ができる。
地上に発生する霧と同様に、上空の雲にも着氷性の霧と同じ過冷却の水滴でできたものがある。このタイプの雲は比較的多く、高緯度ほど多く発生し、中低緯度でも上空の雲はこのタイプである場合が多い。
メカニズムと成因
空気が過飽和(湿度100%以上)になると、その空気に含まれる水蒸気は凝結して雲(霧)になり始め、過飽和度(100%を超えた分の湿度)が高くなるにつれてその中の水滴の密度が高くなってくる。
日常生活の中で水が0℃を下回るとすぐ凍結するのとは違い、霧ができた状態で何らかの原因によってこの空気が冷やされて0℃以下(氷点下)になると、霧の水滴は過冷却の状態になる。これは水滴が非常に微小な球形をしているためである。
水が凍結するためには、結晶化が安定して進む必要がある。そのためには、水分子が微小スケールで集まるための、核となる物質や衝撃などが必要になる。地球上の多くの大気中には、この核となる物質(凍結核)が少ない。また、衝撃の要因も少ない。
よって、気温0℃から約-42℃の範囲では、着氷性の霧が存在する。少ないといっても凍結核は存在しているため、-15℃くらいで、凍結核によって凍結する水滴が現れ始める。-32℃くらいで、凍結核無しでも自ら凍結する水滴が現れ始める。-42℃はほぼ全ての水滴が凍結する温度である。
霧の中で数滴が凍結すると、周りの水滴が蒸発・昇華して成長するライミング(riming)が起こり、凍結が進んでいく。気温が低くなるほど凍結する水滴が増え、ライミングの速度も増す。ただ、凍結が始まる15℃以下の温度でも、短時間であれば着氷性の霧は存在する。
着氷の形態
過冷却の霧は、主に水滴の大きさ、場合によっては温度により、その付着形態が変わる。
水滴が非常に小さい場合、樹氷(soft rime)となる。粒状の氷が柱状・針状・層状に積もる。霜にも似ており、やわらかく崩れやすい。白色不透明。
水滴がやや小さい場合、粗氷(hard rime)となる。樹氷より大きな粒状の氷が層状に積もったもの。樹氷よりも頑丈だが、それでも手で崩せる程度である。白色で、近づいて見ると半透明・透明である。
水滴が大きい場合、雨氷(clear ice)となる。粒同士が融合しており、表面が滑らかで非常に硬い。頑丈で、厚いと手で崩すことが難しい。無色透明。