水泳
水泳(すいえい)とは、水の中を泳ぐこと[1]である。
概説
水泳とは、水の中を(主に水面あたりを)泳ぐことである。
おそらく人類はもともと太古から河川・池・湖・海などで泳ぐことがあった。
日本では、古くは水の中を泳ぐ技術は「水術」と呼ばれ、日本では武術の1つともされた。
現在では水泳はスポーツやレクリエーションとして行われることが多い。
- レクリエーション
- 現在のレクリエーションとしての水泳の場合は池・湖・海・河川(※)、プールなど様々な水面で行われる。海で泳ぐ場合は特に海水浴といい、「健康法」の一種ともされる。
- (※)読者から死者を出さないための注意。河川は水難事故で命を落とす事例が極端に多いので要注意である。大人は河川で泳ぐことの恐ろしさを知っているのであまり河川では泳ぎたがらないものである。子供ほど安易に河川で泳ぎたがり死につながる。
- 競技
- 競技としての水泳は競泳と言う[注 1]。競泳は次第に実施方法が変化してきた。初期は、川・池・湖・海などの水面をロープ(および浮きなどを組み合わせたもの)で区切って簡易なコースをつくり行われることが一般的であった。次第に人工的なプールが普及し、競技のほとんどがプールで行われるようになってきた。プールでの競技も、初期は屋根の無いプールで行われていたが、屋根が無いと屋外の塵や枯葉などがプールに入りこんで水質が悪化してしまうので、後に屋根付きプールが普及した。さらに、水温まで適温に管理された恵まれた環境のプールで行われるようになってきた。ただし、例外としてトライアスロンの中の一部として行われる「swim」やオープンウォータースイミングなどの遠泳競技は、湖や海などで行われている。
- 水泳と健康
- 水泳は、全身の筋肉と総合的な身体能力を養える運動であり、水圧によるマッサージ効果によって全身の血行が促進されることから、健康維持に有効な運動として注目されている。また、浮力によって重力による負担が軽減されるため、ジョギングなどで起きやすいヒザなどへの故障が少ないことから、リハビリテーションとしても積極的に活用されている。運動時における熱中症の可能性がとても低いので暑いときの運動としても取り入れられている[注 2]。
- 動物と水泳
- 全ての動物は、起源をたどれば、もともとは泳ぐ動物から次第に形態を変化させてきた(進化した)ので、ほとんどの動物は生まれつき泳ぐことができると言われている。また、地球の70%が海で覆われ、陸地にも川・湖・池が多く存在していることから、動物にとって水泳は切っても切れない運動となっている。水中動物や両生類だけではなく、陸上動物や鳥類も生きていくための水や食料(魚貝類)の確保のために水辺に集まって水泳を行うし、他にも水浴、移動のための川の横断、水害からの避難などによって水泳を行うため、ほぼ全ての動物は潜在的には水泳ができるとされている。ヒトやゴリラなどの霊長類も太古から現在まで同様に生きていくための水泳は行っているが、他の動物と比較して相対的には泳ぎがあまり得意ではない、と言われることもある。アメリカ合衆国などではコーチと母親が一緒になって乳幼児をプールに浮かべて泳がせる教室もあり、吸収の速い乳幼児に水に触れさせることで簡単に泳ぎを習得させることに成功している。その時期を超えると、逆に人は訓練無しには泳げなくなってしまう(ちょうど、どんな言葉でも乳幼児の段階で教え始めると「母国語」として簡単に習得できるのに、その時期を逃すと、意識的に習得しなければならなくなってしまうようなことが起きている)。乳幼児で水泳を教えることは基本的に行われていないので、結局「泳げるようになるには訓練が必要だ」と考えられている。一方で、一度習得すると長い間泳いでいなくても忘れることはなく、最も忘れ難い運動とも言われている。
特に泳ぎが下手な人間のことを日本語では俗に「カナヅチ」という(槌参照)。
競技
「swimming」を日本語に訳す時は、「水泳」とする場合も「競泳」とする場合もある。「水泳」は基本的には水の中を泳ぐことであって「競泳」も指すが、通常の日本語の「水泳」は基本的には「水球」などまでは含んでいない。そのため、「競泳」を指して単に「水泳」と言うことは多くても、「水球」などを指して単に「水泳」と言うことはない。だが、[注 3]オリンピックや世界水泳、日本選手権で「水泳」という場合には(かなり広義の意味で)、競泳・飛込競技・水球・シンクロナイズドスイミングの4競技(種別)を指す。もっとも、これらは開会などの日程や会場が異なることや競技性の違いから、一般的に別のスポーツ競技とされる。[1] (なお、オリンピックでは「水泳」以外の競技でも、多くの競技が通常の用語の用法から離れてかなり広義の意味を持たされる形で分類される傾向がある。)
- 競泳
- 定められた距離を泳ぎきるのにかかる時間を競うものである。個人種目としては、自由形(通常はクロール、略称Fr)、平泳ぎ(略称Br)、背泳ぎ(略称BaまたはBc)、バタフライ(略称BuまたはFly)の4つの泳ぎ方(泳法)と、4つを順番に全て行う個人メドレー(略称IM)がある。団体種目としては、4人で交代に泳ぐリレーがあり、4人とも自由形で泳ぐフリーリレーと、それぞれが背泳ぎ・平泳ぎ・バタフライ・自由形の順に泳ぐメドレーリレーがある。距離も様々なものがあり、最短 25m から最長 1500m まで存在する(平泳ぎ・背泳ぎ・バタフライは最長200m)。使用されるプールには片道 50m の長水路と、片道 25m の短水路があり、公式にはそれぞれ別の記録として扱われる。泳ぐスタイルやスタート、ターン、リレーの引継ぎなどには細かい規定が定められており、違反すると失格となる。第1回オリンピックから存在し歴史が深く、世界的に競技人口が多いメジャーな競技とされている。また、オリンピックのみ遠泳の競技であるオープンウォータースイミングも競泳の中に含まれ、正式種目となっている。競泳を行うスポーツとして、近代五種競技とトライアスロン(厳密にはオープンウォータースイミングを行う)がある。
- 飛込競技
- 高い位置にある台から水面に向かって飛び込み、その過程の演技などを競う競技である。板飛込みと高飛込みに大別され、それぞれ高さによって数種目に分けられる。
- 水球
- 7名ずつ2チームで行う球技で、相手のゴールにボールを入れることを目的とするものである。プールの底に足をつけてボールを扱うことは反則であるため、常に立ち泳ぎをしながらゲームを行う。
- シンクロナイズドスイミング
- 個人あるいは団体で、水中での演技を競うものである。女子のみが行われることが多いが、2001年公開の映画『ウォーターボーイズ』のヒットにより「男のシンクロ」も知られるようになった。
- オープンウォータースイミング
- 海・川・湖など自然の水の中で行なわれる遠泳の競技である。天候や潮汐、生物など外部からのさまざまな影響を受けやすいため、より速く泳ぐという技術ばかりでなく、危機管理も含めて自然の中で泳ぐための知識や経験も必要とされる。世界オープンウォータースイミング選手権では、男女ともに5km、10km、25kmで競技が行なわれている。また、オリンピックのみ競泳の種目に含まれている。
- 日本泳法
- 技の完成度を競う公式大会として、毎年夏に日本泳法大会が行われる。日本水泳連盟公認12流派が集う全国大会である。
以上のほか、水泳とかかわりの深いスポーツは多く、例としてサーフィンやライフセービング、スキューバダイビングなどのウォータースポーツが挙げられる。
装備
一般には、水泳を行う際は、アウターウェアとして水着を、インナーウェア(下着)として水着インナーを着用し、場合によってはスイムキャップやゴーグルを使用する。他に、抵抗を増し推進力をつけるためのパドルやフィン、浮力を得るためのビート板やプルブイなどを使うことも多い。また、フィンスイミングなどではシュノーケルやアクアラングなどを使用することもある。
教育
この節はその主題が日本に置かれた記述になっており、世界的観点から説明されていない可能性があります。(2015年2月) |
世界での水泳教育
この節の加筆が望まれています。 |
日本での水泳教育
体育ではスクール水着を着用して小学校低学年で水遊びの授業、小学校中学年で浮く・泳ぐ運動の授業、小学校高学年・中学校・高等学校で水泳の授業が行われている。
また、水害から身を守るために泳ぎを習得することの重要性、総合的な身体能力を養えるために身体能力向上の観点から、幼稚園児や小学生などの小さいころから水泳を習うことは非常に効果的であるため、スイミングが習い事ランキングで不動の1位になっている。そのため、民間の商業施設としてスイミングスクールやスポーツクラブが数多く開設されており、水泳の習得や身体トレーニングのためだけではなく、水泳(競泳)の有力選手を輩出する大きな役割を担っている。
また、競技としてだけではなく、水難事故に備えた着衣水泳の訓練なども行われている。また、日本古来の泳ぎかた(日本泳法・古式泳法)の伝承、海での遠泳や寒中水泳なども教育や訓練の一環として行われている。
- 事故
- 独立行政法人日本スポーツ振興センターの調査では、平成10年度~平成23年における小学校での体育活動による頭頚部の件数及び発生頻度は、競技別割合で水泳が全体の20%を占める。1983年から2013年の過去31年間に、学校管理下におけるプールでの飛び込みにより後遺障害を負った事故は計169件[2]。平成2年から21年までに、学校内での死亡に対し見舞金を支給した事例は陸上競技275件、水泳103件、柔道74件、となっている。
- 中学・高等学校での体育の授業等における頭頚部の死亡・重度の障害事故は11件、競技別割合では35%を占める[3]飛び込み・スタート時における1級障害の発生は2001年~2005年の間に9件。1998年から10年間、小学校1年生から6年生における体育科授業において発生した溺水死亡事故は計18人、競技別では計25人死亡という発生数になっている[4]。
- 事故事例
- 1955年7月、橋北中学校水難事件水泳訓練中の海難事故。女子生徒36人死亡。
- 1996年9月5日、大阪教育大学附属高等学校池田校舎にて女子生徒(当時2年生)が1限目の体育の水泳授業に出席、潜水泳法の評価中プールに浮いた状態で見つかる。同年9月12日に死亡[5][6]。
- 2006年、中国昆明(標高1900m)にて潜水トレーニング中に日本体育大学水泳部男子部員(当時20歳)が死亡[7]。
- 2012年7月、京都市立養徳小学校にて女子児童(当時1年生)がプールで浮いた状態で見つかる。病院搬送されICUで治療を行うも翌夕死亡。
- 2014年7月、京都市上京区の民営認可保育園「せいしん幼児園」にてプールで水遊びをしていた4歳児が死亡。
水泳選手
脚注
- 注
- ^ 「競泳」ではなく単にそのまま「水泳」と呼ぶことも多い。
- ^ 水中での運動をしている限り、熱中症の可能性はとても低いが、水中以外で補強運動などが行われる場合は他の運動時並の注意が必要(水泳の水分補給「熱中症、熱射病、日射病のHP」)
- ^ 水泳の競技大会は結局オリンピックを頂点にしていて、それに焦点をあてているので。また競技連盟(国際水泳連盟・日本水泳連盟)もそれに焦点をあてて、大会を運営しているので。
- 出典
- ^ 広辞苑【水泳】
- ^ 『学校の管理下の災害』日本スポーツ振興センター刊
- ^ 「学校の管理下における体育活動中の事故の傾向と事故防止に関する調査研究」-体育活動における頭頚部外傷の傾向と事故防止の留意点- 調査研究報告書 第2編 体育活動における頭頚部外傷の傾向(※PDF)
- ^ 学校における体育活動中の事故防止について 文部科学省 ※PDF
- ^ 平成8年9月5日に起きた大阪教育大学附属高等学校池田校舎における水泳事故について (※PDF)国立大学法人大阪教育大学
- ^ 大阪教育大学附属高等学校池田校舎における水泳事故について 国立大学法人大阪教育大学
- ^ 日本体育大学水泳部「宮嶋武広選手死亡事故」に関する質問主意書 衆議院 提出者 保坂展人
関連項目
外部リンク
- 公式
-
- FINA - 国際水泳連盟 (英語)
- JASF - 日本水泳連盟 (日本語)
- 学校における水泳事故防止必携 (※PDF)独立行政法人日本スポーツ振興センター
- 繰り返されるプール事故 NHK ニュースウォッチ 特集まるごと 2013年7月29日
- 文部科学省
-
- 水泳指導と安全 (※PDF)
- 水泳等の事故防止について
- 学校体育実技指導資料 第4集 水泳指導の手引(※PDF)