操縦

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操縦(そうじゅう)とは、

  1. 思いのままにあやつり動かすこと[1]。特に飛行機に関してこの用語を用いる[1]
  2. 可動式の機械(機械装置を含む)全体を思いどおりに操り移動させること[2]
  3. 人を思い通りにあやつること[3]。他者を自分の思惑どおりに行動させること[2]

概説

操縦は主に、航空機[注 1]宇宙船船舶などといった乗り物(あるいは、それらのラジコン)に対して用いられる用語である。

操縦する者を操縦者と言う。操縦者を補佐したり助手するものを副操縦者と言う。

操縦のために必要な資格を有し操縦する者は操縦士などと呼ばれ、操縦士を補佐したり助手する役割の資格を有して操縦する者を副操縦士という。(これらの詳細は「操縦士」を参照のこと。)

操縦を行うために設けられた席を操縦席といい。操縦のための場所をコクピット操縦室と言う。

運転と操縦

自動車自転車などについては、通常は運転と言う[注 2]。基本的に「操縦」とは表現しない。

鉄道車両(や鉄道模型)では、電車気動車機関車に「操縦」「運転」の両方が用いられている。

操作と操縦

操縦は、機械を操り、自分の意図した方向や場所に移動させることを言う。 それに対して、操作は、思いどおりに操るための行動動作である[4]。位置が固定されている機械装置を操ることについては「操作」という表現を用いる。よって、操縦というのは、機械に備わっている装置・機関類を「操作」し働かせることで、自分の意図する方向や場所に移動させることになる。 [注 3]

飛行機

滑走路に近づくために左へ旋回中。機体の状態は刻々と変化する。パイロットはそれに対応する。
画像左端のパイロットが操縦している状態。眼は窓の外や計器を見て自機の状態などを把握。耳にはヘッドセットをつけ、管制官などとの交信を行う。手は操縦桿を握る。足はペダルを操作する。(NOAA所属機にて)

(飛行機の)操縦とは、その時の飛行機の状態を、自分が(つまりパイロットが)望む最良の状態にもってゆくことを言う[5]。こう説明しなければならない理由がある。 例えば、飛行機を右に傾けるにはパイロットの前にある操縦桿を(民間機の場合、回転式のハンドルタイプなので)右に回せばよいのだが、操縦桿をずっと右に傾けていればいいというものではない[5]。操縦桿の傾きに反応して飛行機が右に傾いてゆくので、傾きがちょうど良い程度になったら操縦桿の位置を戻す必要がある[5]。ある傾きを保ったままにするために必要な操縦桿の傾きは、その時々の飛行機の傾きによって異なる[5]。また例えば飛行機の機首を上げるには操縦桿を引き、飛行機の機種を下げるには操縦桿を前方に(パイロットの身体から離れる方向に、「向こう側」に)押せば良いのだが、これも引き続けたり押し続ければいいというようなものではなく、機種の角度がちょうど良い角度になった段階で、その角度を保つ程度に操縦桿を戻してやらなければならない[5]

飛行機の操縦で大変なのは、上記のような様々な要素が、単独にあるのではなく、連動していることである[5]。たとえば、飛行機の左右の傾きが大きくなればなるほど機首は勝手に下がろうとする[5]。例えば高度を変えずに旋回しようとするならば、左右の傾きが大きければ大きいほど、それに応じただけ操縦桿も引き寄せなければならない[5]。また、エンジンの出力を上げると機首は勝手に上がろうとするし、逆に出力を下げると機首は下に下がろうとする[5]。また、低速飛行時に高揚力を発生させるための装置 フラップも、これを操作するとやはり機首が勝手に上下する[5]。こんな調子で、パイロットは、飛行機のエンジンやフラップを操作するたびに機首の勝手な動きを抑えるように操縦桿を操作しなければならないのである[5]



船舶

船舶のの操作(操舵)を行うためのハンドルはいくつかのタイプがあるが、写真はそのひとつ、ティラー。舵がどの程度、左右方向に水を押しているか、手ごたえ(フィードバック)で直接的に良く判る、というメリットがある。水を押している力の大きさが判るということは、船尾にどの程度の力が働いて船体の回転モーメントが変化しつつあるのかわかるのであり、眼をつかわなくてもそれが判る、おまけにティラーの角度と舵角も1対1対応で、つねに直観的に判るので、ティラーによる操舵のほうが、船が身体の一部になったような操縦ができる傾向がある。
この写真は、操舵のためのハンドルの一種、操舵輪。見栄えはするが、手ごたえが無いので操船にかかわる重要な情報がひとつ減ってしまう。操舵輪では、船尾がすでに動いてしまってから(つまり船体にかなりの回転モーメントが生じた後で)、操舵手が周囲の風景やコンパスを見て遅れて事後的に把握してから反応するので、一般に言えば、操舵手の反応や操作が少しずつ遅れがちになる傾向がある。また操舵輪は何回転もするので、一瞬見ただけでは本当の舵角が判りづらく(近年のものは舵角が小さい目盛や数字で表示されるものもあるが、それはかなり小さく、とてもではないが忙しい時や緊急時などには見ていられず)結局 それが原因で操船ミスや事故が起きることもある。

船の場合は、操船(そうせん)とも。軍用の船、艦艇を操縦することは操艦(そうかん)とも。

大型の船舶の場合は、ひとりで操縦できるものではなく、多数の人々の協働作業によってそれを操っている。 クルーに指示を与え、最終的に全責任を負う船長、神経をとぎすませて周囲の見張りを行う人(なお、この「見張り」こそが安全運航を行う上で最も重要な任務、ただの表現ではなく、本当に一番重要な役割[6])、 操舵によって船の進行方向をコントロールする人、エンジントランスミッションなど船の出力機関を出力をコントロールする人々、無線機器で外部との連絡を担当する人々、等々等々、がそれぞれの役割をまっとうすることで船舶は船長の思い描いた動きをしているのである。


操縦・運転に関する免許

日本の免許の分野別一覧も参照。

関連項目1

他者の操縦

他者の操縦 関連項目

脚注・出典

  1. ^ 気球飛行船滑空機飛行機
  2. ^ 馬車牛車など動物に牽引させる車両では「操縦」と言う[要出典]
  3. ^ 例えば、ロケットは地上基地内の管制室遠隔操作することで命令を与え、それを受け取ったコンピューター自動操縦を行う。宇宙船は搭乗者が機器を操作して、船体を移動させることを操縦と言う。クレーンラジコンは、操作する機器が自らも動くものを操縦と表現し、固定されているものに対しては操作と表現する。ロボットに関しては、工場用の固定された作業ロボットは操作すると表現する、ロボット競技のほかは今はまだ創作作品内のキャラクターでしか見ることがほとんど無い、移動するもの(例: 遠隔操作型の鉄人28号ジャイアントロボ搭乗型マジンガーZガンダムエヴァンゲリオンなど。)を操る時は「操縦」と表現する。

出典

  1. ^ a b 広辞苑 第5版 p.1547
  2. ^ a b 林四郎ほか「例解新国語辞典第六版」ISBN 4385136858(2002年1月)「操縦(そうじゅう)」の項
  3. ^ デジタル大辞泉
  4. ^ 大辞林 第二版「操作(そうさ)」の項1
  5. ^ a b c d e f g h i j k 『パイロットが空から学んだ』pp.58-65
  6. ^ [http://www.kaiho.mlit.go.jp/06kanku/takamatsu/d_safety_navigation/d_04anzen/d_4_16iroha/d_4_01_i/d_4_01.html}

参考文献