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定義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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定義(ていぎ、英語: definition)は、一般にコミュニケーションを円滑に行うために、ある言葉の正確な意味や用法について、人々の間で共通認識を抱くために行われる作業である。一般的にそれは「○○とは・・・・・である」という言い換えの形で行われる。基本的に定義が決められる場合は1つである。これは複数の場合矛盾が生じるからである。なお、これとは別に、(概念の)定義とは、概念の本質的性質を、明らかにする論理的作用の過程であるとの主張もある。そこでは、定義するにあたって守るべき4つの規則(たとえば、「循環するべからず」、「否定的であるべからず」など)が述べられている。(出典[1]の表現を若干変更してあります。)

概説

定義とは何か、ということへの関心は、ソクラテスアリストテレスといった古代ギリシャ哲学者たちの議論の中に既に見られる。しかしそこから2000年以上を経た現在においても、この議論は未だに継続しており、定義とは何なのか、という問題についてそれほどはっきりした結論は出ていない。

歴史的にこのテーマは主に哲学の領域で、20世紀以降であればとりわけ分析哲学言語哲学と呼ばれるような領域、そしてまた数学の一分野である記号論理学と呼ばれる分野、を中心に議論が行われてきた。そして20世紀後半からは認知科学といった、より実証的性格の強い分野で、定義についての議論をされることが増えている。

  • 法律ルールなどにおいては、定義が定まっていないと無効となる可能性があり、定義の存在は必要条件である。
  • 哲学用語の「定義」とは、本質を表現する命題のことである。

自然科学における定義は通常、自然言語を用いて表される。対して、社会科学における定義は、最近類種差の総体という形式をとることが多い。

類と種

いくつかの事物を、ある視点で一括りにしたとき、それら事物は階層化 (Hierarchy) されたことになる。

このとき上位の階層を (Genus)、下位の階層を (Species) という。類は種の集まりであり、種は類の構成要素である。

複数の類を構成要素とする上位の類を考えることもできる。このとき下位の類は、上位の類にとっての種である。

生物分類及び学名

例えばトラは、動物界脊索動物門哺乳綱食肉目ネコ科Panthera (ヒョウ属)・tigris (トラ種)という系列の中にあり、学名Panthera tigris という。ここでは Panthera が類(属)で、tigris が種である。

ネコ科を類と見れば、Felis (ネコ属)や Puma (ピューマ属)と共に、Panthera はその一種ということになる。

形式

最近類と種差による定義

最も厳密な定義のためには、「対象を種として含む類」及び「対象を他の種から区別する特徴」を述べればよい。前者を最近類、後者を種差という。

例)トラとは、黄色地に黒縞のある(種差)Panthera(最近類)である。ただし生物分類学における類種関係は絶対的なものでなく、文脈によっては生物分類学とは異なる関係を前提とした定義もあり得る。次の人類学社会学に見られるような定義に対して、最近類としてホモ属を示さないのは誤りだ──という主張は見当違いである。
例)人間とは、理性的な(種差)動物(最近類)である。

種差を明示しない定義

定義において種差が明示されない場合がある。

例)人間とは、動物(最近類)の一種である。

種差を明示しないことには、それが不要である(積極的な理由)場合、及び不可能である(消極的な理由)場合がある。後者については、定義する対象の本質である場合と定義を行う者の知識能力の問題である場合がある。

類が極度に広い場合

類が極度に広いと、存在・もの・何かなどの語を使わざるを得ないことになる。

例) 神とは、万能な(種差)存在(類)である。

しかし最近類を探し当てることができない結果、この表現に至ることも多い。

例) 椅子とは、人が座る(種差)もの(類)である(×)。
人が座る(種差)家具(類)である。

定義の表現

予備知識

「〜は〜である」という文について

椅子家具である。(椅子は家具の部分集合、椅子⊂家具)
うちのミーちゃんは三毛猫である(ミーちゃんは三毛猫の要素、ミーちゃん∈三毛猫)
は信じることである(愛すなわち信じること、愛=信じること)
椅子(と)は座るための家具である。(定義)
ミーちゃんは、我が家で飼っている三毛猫である。(定義)

外延と内包

ある概念を類と見たとき、その類に含まれる種の全てを外延(Extension)、その種に共通な性質を内包(Intension)という。種を全て示すことを外延的説明、共通な性質を示すことを内包的説明という。

例) 集合 A は {1, 3, 5, 7, 9} からなる。(外延的説明)
例) 集合 A は 10 以下の奇数である。(内包的説明)

これらを定義にも使える。

例) A とは、{1, 3, 5, 7, 9} を要素とする集合である。(外延的定義)
例) A は、10 以下の奇数からなる集合である。(内包的定義)

表現

定義の表現の多様性

上記の形式に還元できることを条件に、多様な表現が可能である。

「人間とは、ある種の(一種の)動物である」次のように定義する。次は定義である。
校則とは、学校での行動などについて規定したものである」「行動についての規定である」

脚注

  1. ^ ヴィノグラードフ クジミン『論理学入門』西牟田久雄、野村良雄 共訳青木書店、青木文庫、1973年、52頁~

参考文献

様々な「定義」の定義や、定義にまつわる歴史上の様々な論点をまとめている一冊。古いが読みやすく有用。
論文集。プラトン、アリストテレスからカント、ミルまで、有名な哲学者たちの定義にまつわる文章を集めた一冊。

関連文献

日本語のオープンアクセス文献

関連項目

外部リンク

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