ハルキゲニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。219.101.187.2 (会話) による 2015年11月6日 (金) 02:36個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ハルキゲニア
生息年代: 525–505 Ma
ハルキゲニア(生態復元想像図)
保全状況評価
絶滅(化石
地質時代
約5億2,500万- 約5億0,500万年前
古生代カンブリア紀前期中盤[カエルファイアトダバニアン末期]- 中期後半[セントデイヴィッズメネヴィアン中期])
分類
: 動物界 Animalia
亜界 : 真正後生動物亜界 Eumetazoa
階級なし : (未整理[1]左右相称動物 Bilateria
(未整理)旧口動物 Protostomia
上門 : 脱皮動物上門 Ecdysozoa
: ? 有爪動物門 Onychophora ?葉足動物門 Lobopodia
: ? Xenusia綱 Xenusia
: ? Scleronychophora目 Scleronychophora
: ハルキゲニア科 Hallucigeniidae
Conway Morris1977
: ハルキゲニア属 Hallucigenia
学名
genus Hallucigenia
Conway Morris1977
タイプ種
H. sparsa
シノニム

Canadia sparsa
Walcott1911

和名
ハルキゲニア
英名
Hallucigenia
下位分類群(

ハルキゲニア学名Hallucigenia)は、約5億2,500万- 約5億500万年前(古生代カンブリア紀前期中盤[カエルファイアトダバニアン末期]- 中期後半[セントデイヴィッズメネヴィアン中期][2])の海に生息していた動物澄江生物群、および、バージェス動物群に属するものの一つである。

現在では、現生するカギムシと同じ有爪動物門に属するものと考えられている。

呼称

属名 Hallucigeniaラテン語: hallucinatio 「夢みごこち、夢想」からの造語で、その後半を省略した上で、「〜を生むもの」といった意味の接尾辞英語: -gen; フランス語: -gène)をおそらく添えたもの。夢に出てきそうな不思議な姿を指したものか。多くの文献では「幻覚のような (like a hallucination) 」といった意味であるとする[要出典]

中国語では「怪誕蟲」(guàidànchóng; クアイタンチョン)と呼ぶ。

発見と復元の経緯

バージェス頁岩累層から見出されたハルキゲニアの化石(米国、スミソニアン博物館所蔵)

全長約0.5- 3.0cm。本種は、カナダはブリティッシュコロンビア州バージェス頁岩カンブリア紀中期後半、約5億500万年前に属す)にて、1911年米国人古生物学者チャールズ・ウォルコットによって発見された。彼はこれを環形動物・多毛類カナディアに属するものと判断した。

英国人古生物学者サイモン・コンウェイ・モーリスen)によってHallucigenia sparsaとして再記載[3]された(1977年)。このとき、彼はこの動物を、細長い体の腹面に長い(とげ)が歩脚のように2列で並び、背面に触手が縦一列に並ぶ形で復元した。腹面にある棘状の脚で海底を移動し、背面にある細長い触手を自在に伸ばしては、その先端部にあるはずの口で餌を吸い取るようにして食べていたのではないかと想像したのである。

また一方で、現存するいかなる動物からも掛け離れたそのような復元像をあり得ないものと考え、他の生物の付属肢が脱落したものではないかとも言われていた。

ところが、1984年以降、中国雲南省澄江生物群(カンブリア紀前期中盤、約5億2,500万- 約5億2,000万年前に属す)から近縁種 H. fortis化石が発見され始める。 そして、記載当時からの復元像が誤りであり、上下と前後を逆さまにしたものであったことが判明した。 以来今日では、棒状の細長い胴体の腹面に7対の細長い脚を、背面には防御用であろう2列の鋭い棘を持つ、極めて特徴的なトゲトゲした外見の生物として復元される。触手と思われていたものは、節の無い柔らかな歩脚であるとしている。

さらに2015年、ケンブリッジ大学のマーティン・スミスらの調査によりハルキゲニアの化石から一対の目と小さな環状の歯が発見された。従来頭部とされてきた球状の物体は、泥に押しつぶされた際に腸から押し出された内容物であったことが示唆され、従来の復元図は前後逆であったと結論された[4][5]

化石標本の状況から、屍肉をあさる動物(スカヴェンジャーscavenger)であったと考えられている。

スケール比較

バージェス動物群のスケール比較
Anomalocaris canadensis アノマロカリス・カナデンシス 
Laggania cambria ラガニア・カンブリア 
Opabinia regalis オパビニア・レガリス 
Wiwaxia corrugata ウィワクシア・コルガタ 
Pikaia gracilens ピカイア・グラキレンス 
Hallucigenia sparsa (ハルキゲニア・スパルサ)
ヒト()とバージェス動物群のスケール比較
Anomalocaris canadensis アノマロカリス・カナデンシス 
Laggania cambria ラガニア・カンブリア 
Opabinia regalis オパビニア・レガリス 
Wiwaxia corrugata ウィワクシア・コルガタ 
Pikaia gracilens ピカイア・グラキレンス 
Hallucigenia sparsa (ハルキゲニア・スパルサ)

脚注

  1. ^ 分類学上、未整理の分類群(タクソン)。以下同様。
  2. ^ 地質時代」を参照。
  3. ^ 生物学上の正式記録。
  4. ^ Martin R. Smith, Jean-Bernard Caron (2015). “Hallucigenia’s head and the pharyngeal armature of early ecdysozoans”. Nature 523 (7558): 75-78.  doi:10.1038/nature14573
  5. ^ カンブリア紀の珍生物「ハルキゲニア」、また復元図が書き換えられる 実は前後も逆だったITメディア、2015年6月26日、同年6月27日閲覧

参考文献

  • X.ホウ他著、鈴木寿志、伊勢戸徹訳、大野照文監訳、『澄江生物群化石図譜 -カンブリア紀の爆発的進化-』、(2008)、朝倉書店

関連項目

外部リンク

日本語による

外国語による