シンフォニア・タプカーラ
シンフォニア・タプカーラつまりタプカーラ交響曲(伊: Sinfonia Tapkaara)とは、伊福部昭による交響曲である。
作曲と初演
- 1954年、初稿完成。
- 1955年1月26日、指揮者ファビエン・セヴィツキーとの文通がきっかけと成り、インディアナポリスにおいてインディアナポリス交響楽団によって世界初演。
- 1956年3月16日、上田仁と東京交響楽団によって日本初演。
- 1979年12月、改訂版完成。
- 1980年4月6日、芥川也寸志と新交響楽団によって改訂版初演。
- 2002年5月、松木敏晃による吹奏楽版が完成。6月、野中図洋和と陸上自衛隊中央音楽隊によって世界初演。
概要
伊福部昭は少年期に交流したアイヌへの共感とノスタルジイが作曲の動機であると語る[1]。又、この作品は音楽評論家三浦淳史に献呈されている[2]。
1936年、アレクサンドル・チェレプニンは個人授業において、ミリィ・バラキレフを例に出し、伊福部昭に未熟な内の交響曲の作曲を戒めた。1943年、伊福部昭は『交響譚詩』を作曲するが、この作品を交響曲と名付けようとしていた[3]。
又、シンフォニア・タプカーラはスケッチのみを残して戦災に消えた『ピアノと管絃楽のための協奏風交響曲』(1941年作曲)に部分的に基いている。同様に、『ピアノと管絃楽のためのリトミカ・オスティナータ』(1961年作曲)も部分的に基いている。又、1997年から数年前、『ピアノと管絃楽のための協奏風交響曲』のパート譜はNHKの資料庫から発見され、総譜が甲田潤によって復元され、更に蘇演された。
初稿
この作品が完成した年は伊福部昭が東京音楽学校の作曲科講師を退任し、著作『管絃楽法』(完本ではない)上巻を発刊させた翌年であり、映画『ゴジラ』が公開した年である[2]。又、完成の翌年、伊福部昭は世界初演を録音したテープを聴き、その演奏について「演奏指導もせず、ただ楽譜を送るだけだとこうなるのかと勉強になった」と語った。このテープに録音された第1楽章は終わった直後に観客の拍手を含んでおり、ファビエン・セヴィツキーはそれを詫びていた。
タプカーラ
タプカーラとはアイヌ語において「立って踊る」と言う意味である[1]。
編成
曲の構成
改訂版と初稿の違いは主に第1楽章冒頭部、第2楽章中間部、第3楽章終結部である。
- 第1楽章:Lento Molto - Allegro
- 第2楽章:Adagio
- 第3楽章:Vivace
備考
- NHK「アニ*クリ15」のショートアニメ『おんみつ☆姫』(監督:前田真宏)で第3楽章が使用された。
- NHKの放送で使用されている緊急地震速報の告知チャイム音はこの曲の一節を参考にして作られた[4]。作成したのは伊福部昭の甥の伊福部達である。
- 伊福部が音楽を担当した映画『大坂城物語』(1961年、東宝)にて、第1楽章がアレンジされ劇伴として使われている。
- 劇場用アニメ『鉄人28号 白昼の残月』(監督:今川泰宏)では、同じく伊福部が作曲した兵士の序楽や日本狂詩曲などとともに、本人の了承を得た上で使用されている。