サブブランド

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サブブランドとは、同一の企業がメインのブランドとは異なるコンセプトサービス商品を展開する際に設けるブランドである。

概要

メインのブランド社名そのもののとなる場合が多いのに対し、サブブランドは社名とは異なる場合が多い。子会社を設けずに単一の会社で複数の異なるコンセプトサービス商品を展開する際に使われる。例えばトヨタ自動車は、メインブランドの「TOYOTA」のほかに、別ブランドとして「LEXUS」、「GR」を展開している。

日本の携帯電話におけるサブブランド

概要

2020年日本において、「サブブランド」とは、携帯電話事業者(MNO)であるKDDI沖縄セルラー電話連合とソフトバンクウィルコム沖縄連合(現在はウィルコム沖縄はソフトバンクに吸収合併されたのでソフトバンク単体)が展開する下記の2つのブランドをさす場合が多い。

上記の2つのブランドはそれぞれのメインブランドと比べ、ターゲットをライトユーザーに絞った上で、廉価な料金プランを展開し差別化を図っている。 なお、KDDIやソフトバンクらと同じく大手携帯電話事業者であるNTTドコモ楽天モバイルはサブブランドを持っていなかったが、ドコモは2020年12月に、上記2つのサブブランドに相当する独自プラン「ahamo」を発表している[1]

経緯

UQ mobileは、2014年8月にKDDIが設立したグループ会社「KDDIバリューイネイブラー株式会社」により同年12月に開始された仮想移動体通信事業者(MVNO)のブランドであるが[2]2015年10月にKDDIバリューイネイブラーがUQコミュニケーションズ吸収合併されてからはUQコミュニケーションズにより展開された[3]。その後、2020年10月にKDDIがUQコミュニケーションズからUQ mobile事業を承継し、KDDIが展開するMNOとなった[4]沖縄県での事業は、沖縄セルラー電話が展開)。

Y!mobileは、イー・アクセスおよびウィルコムを買収したソフトバンクが、2014年7月にイー・アクセスから商号変更した子会社として「ワイモバイル株式会社」を発足し、翌月からサービスをスタートさせているが、翌年にはソフトバンクに吸収されてブランドだけが存続している(沖縄県での一部事業のみ、ワイモバイル株式会社への商号変更後は2022年3月までウィルコム沖縄が展開)。

これらのサブブランドは、2010年代中盤に、それ以前の日本では少なかったSIMロックフリースマートフォンが多数発売されるようになり、SIMフリースマートフォンとのセット販売(「いわゆる「格安スマホ」)を目論んで新規参入が相次いだMVNOへの大手キャリアからの顧客流出(特にNTTドコモ回線を利用したMVNOへの流出)が増加した時期に、KDDIとソフトバンクが対抗策としてそれぞれ設けた。MVNOは実店舗をほとんど設けず、ネットワーク維持費、広告費、人件費などを抑えたことにより、ライトユーザー向けに大手キャリアよりも安いプランを提供していたことから、これらのサブブランドも、サービスやセット販売で提供する端末をミッドレンジ以下の機種に絞り、メインブランドよりも低廉な料金プランのライトユーザー向けブランドとして展開されることになる。

これらのサブブランドを運営するKDDI・沖縄セルラー電話とソフトバンクは、すでにメインブランドで高い知名度があり、資金力が豊富な大手キャリアの優位性を生かして、有名タレントを起用したCMの展開、大手の販売網を利用した実店舗展開やそれによるアフターサービス、小規模MVNOでは困難な型落ちのiPhoneの販売、これまでのMVNOのネックだった通信速度の高速化などで差別化を図った結果、既存のMVNOとの競争に対して優位に立っている[5][6][7]

2020年には菅義偉内閣が大手携帯電話会社に携帯電話の月額料金を値下げするようを迫る中、それぞれのメインブランドであるauSoftBankでの値下げによる料金収入低下を避けたいKDDI・沖縄セルラー電話連合とソフトバンクは10月28日、サブブランドであるUQ mobileY!mobileで、菅内閣からの要求を受けた形で、20GBで月額4,000円前後というプランをそれぞれ発表した[8][9]。これに対し、菅義偉内閣総務大臣である武田良太はメインブランドで値下げを行おうとしないKDDIやソフトバンクらの姿勢を批判している[10]

一方、KDDIやソフトバンクと同様に値下げが迫られる中で、サブブランドを持っていなかったNTTドコモは、2020年12月、デジタルネイティブ世代をターゲットにし、従来のドコモのプランから完全に切り離した、20GBで抜2,980円(2021年3月1日の発表で税抜2,700円に改定)の新プランの「ahamo」を2021年3月に導入すると発表した。ドコモとしては「サブブランド」と謳ってはいないものの、手続きはオンラインのみで、ドコモメール3GFOMAのサービスエリアがいずれも利用不可であるなど、「サブブランド」に近い位置づけとなっている[11]

ahamoはドコモ既存プランからの移行時の費用が無料であったことから、総務大臣の武田良太には評価された。また、携帯電話業界でこれまで慣習化していた契約後の最初の数か月間、1年間などといった期間限定割引や各種セット割引適用時の料金表記を止め、どのユーザーでも同じ料金を実現したことから、料金面でのインパクトも大きく、メインブランドでの大幅値下げを打ち出せていなかったKDDIやソフトバンクにとっては大きな衝撃となり[12]、方針転換を迫まれた。その結果、ahamoに対抗するメインブランドの新料金プランとして、ソフトバンクは「SoftBank on LINE」(2021年2月18日LINEMOに名称変更)、KDDI・沖縄セルラーは「povo」をそれぞれ発表している。

メインブランドからの移行時の費用

UQ mobileY!mobileとも、メインブランドからののりかえ時には、他社からののりかえ時と同様に、メインブランドの契約解除手数料、番号ポータビリティ(MNP)手数料、サブブランドの契約手数料が必要で、顧客には最大1万5,500円(抜)の費用負担が発生する場合がある[13]。また、メインブランドで分割払いで端末を購入していた場合は、分割支払金の残債を支払う必要がある。一方、サブブランドからメインブランドへののりかえ時には、メインブランド側が特典を用意し、条件付きで分割支払金以外の上記費用の免除や、メインブランドでの割引を用意している[14][15]。 なお、KDDI・沖縄セルラーは2021年2月以降、ソフトバンクは2021年2月17日以降、メインブランドからの移行時の費用を無料化すると発表している[16][17]

脚注

  1. ^ 新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表 NTTドコモ 報道発表資料 2020年12月3日
  2. ^ 新会社「KDDIバリューイネイブラー株式会社」の設立について KDDI株式会社 ニュースリリース、2014年8月29日
  3. ^ 合併に関するお知らせ UQコミュニケーションズ株式会社、KDDIバリューイネイブラー株式会社 ニュースリリース 2015年8月27日
  4. ^ 多様な価値提供に向けた「UQ mobile」の統合が完了 KDDI株式会社 ニュースリリース、2020年10月1日
  5. ^ 大手キャリアの“逆襲”が目立った2017年/MVNOは「勝ち組」「負け組」が明確に (1/3) ITmedia、2017年12月23日
  6. ^ 国内携帯の出荷台数、Appleが前年比2%減も6年連続1位 ITmedia、2018年2月14日
  7. ^ 目標の200万回線は困難に…… 伸び悩むMVNO「mineo」が挽回策 カギは“通信回線の譲り合い” ITmedia、2020年1月30日
  8. ^ UQ、20GBで月額3980円の新料金プラン「スマホプランV」 ケータイ Watch 2020年10月28日
  9. ^ ワイモバイル、20GB/4480円で10分通話定額付きの「シンプル20」 ケータイ Watch 2020年10月28日
  10. ^ 携帯料金、サブブランドのみの値下げは「羊頭狗肉」 武田総務大臣が批判 ITmedia、2020年11月20日
  11. ^ ドコモの「ahamo(アハモ)」、気を付けるべき点は? ITmedia 2020年12月3日
  12. ^ 石野純也のMobile Eye:ドコモの激安「ahamo」で携帯業界に激震も、“料金プラン”扱いには疑問 (1/3) ITmedia、2020年12月5日
  13. ^ 大手キャリアは国民に誠意を見せるべき――メインブランドの携帯料金を巡り武田総務大臣が熱弁 (1/2) ITmedia 2020年11月27日
  14. ^ UQ mobileからauへの番号移行がおトクに~各種手数料が実質負担なし、お一人でも月額3,460円で使い放題~ KDDI株式会社、沖縄セルラー電話株式会社 ニュースセンター 2020年9月28日
  15. ^ 「ワイモバイル→ソフトバンクのりかえ特典」を9月16日から実施 ソフトバンク株式会社 プレスリリース 2020年8月31日
  16. ^ 通信サービスの選択における利便性向上に向け、「au」と「UQ mobile」のブランド間の移行を円滑化 KDDI株式会社、沖縄セルラー電話株式会社 ニュースリリース 2020年12月9日
  17. ^ ブランドのりかえ時の手数料などを刷新 ソフトバンク株式会社 プレスリリース 2020年12月9日

関連項目

  • ブランド
  • 事業部制
  • 社内カンパニー
  • ahamo - NTTドコモが2021年3月に導入した新プラン。ドコモはメインブランドとしているが、サブブランドに近い内容となっている。
  • povo - ドコモのahamo導入を受け、対抗策として導入されたKDDI・沖縄セルラーの新プラン。
  • LINEMO - ドコモのahamo導入を受け、対抗策として導入されたソフトバンクの新プラン。ソフトバンクへの吸収合併が予定されているLINEモバイルの後継プランとなっている。
  • ツーカー - 2008年3月末にサービスを終了したKDDIの携帯電話のブランド。元々は別会社が集まってできたブランドだったが、KDDIグループ入り後に、同社のサブブランドとなり、UQ mobileと同様にライトユーザー向けにサービス展開していた。

外部リンク