コンテンツにスキップ

オオセッカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Bava (会話 | 投稿記録) による 2012年5月20日 (日) 14:36個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

オオセッカ
保全状況評価
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : スズメ亜目 Oscines
: センニュウ科 Locustellidae
: センニュウ属 Locustella
: オオセッカ L. pryeri
学名
Locustella pryeri (Seebohm1884)
シノニム

Megalurus pryeri Seebohm1884

和名
オオセッカ
英名
Marsh Grassbird[1]
Japanese Marsh Warbler[2]
Pryer’s Grass Warbler[2]
Japanese Swamp Warbler

オオセッカ(大雪加[3]Locustella pryeri)は、動物界脊索動物門鳥綱スズメ目センニュウ科センニュウ属の1種である。

和名は以前はセッカ属に含まれ[疑問点]セッカより大型であることが由来[3]

分布

旧北区東部に生息する[2]

L. p. sinensis

中国東北地方満州)と、おそらくはウスリー川流域南部(ハンカ湖)で繁殖し、長江流域で越冬する[2]

L. p. pryeri

本州関東平野北部以北で繁殖し、本州中部の太平洋岸で越冬する[2]

より詳細には、夏季に青森県岩木川河口仏沼)、茨城県霞ヶ浦)、千葉県利根川下流域)などで繁殖し[4]、関東地方から瀬戸内海沿岸にかけての太平洋側で越冬し、雪の少ないヨシ原に広く分布していると考えられている(留鳥)[3][5][6][7]。また、宮城県の河口域・湿地等で冬季の生息が確認されている[8][9]岩手県釜石市では捕獲記録があり、越冬地への渡りの途中であった可能性がある[10]

特徴

形態

全長11–14cm[5][11]。尾羽は楔形で長い[5][4]。上面の羽衣は褐色で、黒や黒褐色の縦縞が入る[5][11][12][13]。体下面の羽衣は白い[5][13]。体側面は褐色[5][11]。眼上部にある眉状の斑紋(眉斑)は淡褐色[5][14][12]。頬や耳孔を被う羽毛(耳羽)は淡褐色。翼は黒褐色で、羽毛の外縁(羽縁)は黄褐色。雨覆や三列風切には黒褐色の斑紋が入る[13]

嘴の色彩は黒く、下嘴基部は褐色[13]。後肢の色彩は淡褐色。

生態

海岸河口の周辺にある湿性草原アシ原などに生息する[5][11][15][13]

食性は動物食で、昆虫クモなどを食べる[15]

繁殖形態は卵生。繁殖期になるとオスは丈の高い草に止まったり、半円状に飛翔しながら囀る[13]草の根元に枯草を組み合わせた楕円形状の巣を作り、6–8月に5–6個の卵を産む[14]。メスのみが抱卵し、抱卵期間は約11日[14]。雛は孵化してから約12日で巣立つ[14]

系統と分類

系統

Alström et al. (2011)[16]より。

センニュウ科
センニュウ属

 

シマセンニュウ Locustella ochotensis

ウチヤマセンニュウ Locustella pleskei

シベリアセンニュウ Locustella certhiola

オオセッカ

Locustella pryeri sinensis

Locustella pryeri pryeri

エゾセンニュウ Locustella fasciolata

 

オニセッカ属]] Megalurus

分類史

Seebohm (1884) により、オニセッカ属 Megalurus、とりわけシマオオセッカ Megalurus gramineus と色のパターンが似ていることから、Megalurus pryeri として記載された[2]。なおこの属は、唯一オオセッカが日本に生息する種だったためオオセッカ属と訳されてきたが、ここでは混乱を避けるため、模式種オニセッカ Megalurus palustris よりオニセッカ属とする。

ただし彼は Seebohm (1890) ではオオセッカをセンニュウ属 Locustella に移した。そのほか、チャイロオウギセッカ属 Tribura(現在はセンニュウ属の一部)、オウギセッカ属 Bradypterus とする説も現れた。しかしその後、Delacour (1942) が、小型である以外はオニセッカ属の主な特徴を持つとして、オニセッカ属に戻したのが定説となった[2]

しかし、Morioka & Shigeta (1993)[2]は形態から、オオセッカをセンニュウ属 Locustella に移した。これは2004年以降の分子系統でも確認された[16]

亜種

2亜種に分かれる[11][2][1]

Bairlein et al. (2006) はこれらは別種に値するとしたが、Alström et al. (2011) では否定された[16]

  • Locustella pryeri sinensis (Witherby, 1912)
  • Locustella pryeri pryeri (Seebohm1884) オオセッカ - 日本固有種

人間との関係

干拓地や放置された農耕地が、湿性草原となり繁殖地とされる。

開発による生息地の破壊などにより生息数は減少しおり、日本国内での生息個体数は2500羽強とされている[17]。日本では以前は八郎潟[18]宮城県でも繁殖が確認されていたが、現在は確認されていない[11]。八郎潟でさえずっていた雄の数は1977年には122羽であったが、その後、減少している。その原因は、干拓地が乾燥し、植生の変化が進んだためとみられている[18]。仏沼では本種の保護のため、土地の買い上げ(ナショナルトラスト運動)などの対策が行われている[11]1993年種の保存法施行に伴い国内希少野生動植物種に指定されている。

  • L. p. pryeri オオセッカ

絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト

関連項目

脚注

  1. ^ a b Gill, F.; Donsker, D., eds. (2012), “Old World Warblers & babblers”, IOC World Bird Names, version 3.1, http://www.worldbirdnames.org/n-warblers.html 
  2. ^ a b c d e f g h i Morioka, Hitoyuki; Shigeta, Yoshimitsu (1993), “Generic Allocation of the Japanese Marsh Warbler Megalurus pryeri (Aves : Sylviidae)”, Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology 19 (1): 37-43, http://ci.nii.ac.jp/naid/110004311784 
  3. ^ a b c 安部直哉 『山渓名前図鑑 野鳥の名前』、山と渓谷社2008年、203頁。
  4. ^ a b 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館2002年、92頁。
  5. ^ a b c d e f g h 五百沢日丸 『日本の鳥550 山野の鳥 増補改訂版』、文一総合出版2004年、217頁。
  6. ^ 永田尚志、「オオセッカの現状と保全への提言」『山階鳥類研究所研究報告』、山階鳥類研究所、1997年、27-42頁
  7. ^ 金井裕植田光之、「オオセッカの生息地の分布と現状」、『平成5年度希少野生動植物種生息状況調査報告書』、環境庁、1994年、1-7頁
  8. ^ 山階鳥類研究所、「平成8年度環境庁委託業務報告書 オオセッカ生息状況調査」、山階鳥類研究所、1996年
  9. ^ 日本野鳥の会宮城県支部、「宮城県の鳥類分布」、日本野鳥の会宮城県支部、2002年
  10. ^ 千葉一彦村田野人作山宗樹、「岩手県釜石市におけるオオセッカLocustella pryeriの捕獲記録」『日本鳥学会誌』54巻1号、日本鳥学会、2005年、56-57頁
  11. ^ a b c d e f g 小原秀雄浦本昌紀太田英利松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』、講談社2000年、102、204-205頁。
  12. ^ a b 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥 増補改訂版』、日本野鳥の会2007年、252-253頁。
  13. ^ a b c d e f 真木広造大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、493頁
  14. ^ a b c d 環境庁日本産鳥類の繁殖分布』、大蔵省印刷局1981年
  15. ^ a b 中村登流監修 『原色ワイド図鑑4 鳥』、学習研究社1984年、32頁。
  16. ^ a b c Alström, Per; Fregin, Silke; Norman, Janette A.; Ericson, Per G.P.; Christidis, Les; Olsson, Urban (2011), “Multilocus analysis of a taxonomically densely sampled dataset reveal extensive non-monophyly in the avian family Locustellidae”, Mol. Phylogenet. Evol. 58: 513–526, http://www.nrm.se/download/18.42129f1312d951207af800049217/Alstr%C3%B6m+et+al+Locustellidae+MPEV+2011.pdf 
  17. ^ 上田恵介「日本にオオセッカは何羽いるのか」『Strix』21巻、日本野鳥の会、2003年、1-3頁
  18. ^ a b 西出隆「八郎潟におけるオオセッカの生態-2.干拓内での分布の推移」『Strix』1巻、日本野鳥の会、1982年、7-18頁

参考文献

外部リンク