イリエワニ

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イリエワニ
イリエワニ
イリエワニ Crocodylus porosus
保全状況評価[1][2]
LOWER RISK - Least Concern
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: ワニ目 Crocodilia
: クロコダイル科 Crocodylidae
: クロコダイル属 Crocodylus
: イリエワニ C. porosus
学名
Crocodylus porosus
Schneider1801
英名
Salt-water crocodile
分布
イリエワニの剥製。国立科学博物館の展示。
跳び上がるイリエワニ(オーストラリア・ノーザンテリトリー)。

イリエワニ(入江鰐、Crocodylus porosus)は、クロコダイル属に分類されるワニの一種。

分布

インド南東部からベトナムにかけてのアジア大陸スンダ列島からニューギニア島、及びオーストラリア北部沿岸、東はカロリン諸島辺りまでの広い範囲に分布する。

後述のような海流に乗って移動する生態から、オーストラリア北部には近年になって東南アジアから海伝いに分布を広げたと考えられている。日本では奄美大島西表島[4]八丈島などでも発見例がある。

形態

現生の爬虫類の中では最大級の一種であり、オスの平均は全長5メートル、体重450キログラムになる。最大の個体は、全長8.5メートル以上のものが記録されている[5]。口吻はやや長く基部の1.75-2倍で、隆起や畝が発達する。下顎の第1歯が上顎の先端を貫通する。後頭鱗板が無い。頸鱗板は4枚。胴体背面に並ぶ大型の鱗(背鱗板)は規則的に並ぶ。体色は緑褐色。

水かきは前肢では指の基部のみに、後肢では趾全体に発達する。

卵は長径約8センチメートル、短径約5センチメートル。

生態

主に汽水域に生息し、入江三角州マングローブ林を好む。イリエワニという和名も、これに由来する。地域によっては、河川の上流域やなどの淡水域にも生息する。海水への耐性が強く、海流に乗って沖合に出て、島嶼などへ移動することもある。

食性は動物食で、魚類両生類、爬虫類、鳥類哺乳類甲殻類などを食べる。攻撃的な性質であり、大型個体では人間や家畜を捕食した例もある。

繁殖形態は卵生。主に雨季に繁殖し、木の枝や枯葉などを積み上げた塚状の巣に60-80個(平均61個)の卵を産む。卵は80-90日で孵化する。幼体は小型のため、鳥や大型魚などに捕食されることも多い。

人間との関係

開発による生息地の破壊、皮革目的の乱獲などによって生息数は減少している。生息地では法的に保護の対象とされているが、地域によって生息数に変異がある。

人食いワニの「ロロン」は、フィリピン・ミンダナオ島ブナワンで2011年9月に捕獲された[6]。地元民の12歳の少女と農民の2名を捕食したとみられる[7]。ロロンは「世界最大の捕獲されたワニ」とギネスブックに認定され、専用の自然公園で2013年2月まで生存した。体長6.17メートル、体重1.075トン[8]。ブナワンではもっと大きな個体の目撃もあるという。

太平洋戦争中、ラムリー島の戦いにおいて撤退中の日本軍がこのワニに襲われ、多数(数百人から千人とも)が犠牲になったとされる。この話は海外ではよく知られており、 "Worst crocodile disaster in the world (disputed)" 、 "Most Number of Fatalities in a Crocodile Attack" などとして、ギネスブックにも掲載されている。ただし、この話を裏付ける正式な史料はない。当時、島にいた日本軍の守備隊は一個大隊1000人程度であるうえ、その半数は戦闘により戦死し、半数は撤退に成功している。

オーストラリアでは1971年より保護動物に指定されており、以後は徐々に数が増えている[9]

脚注

  1. ^ CITES Appendices I, II and III”. 2015年2月21日閲覧。
  2. ^ Crocodile Specialist Group (1996). "Crocodylus porosus". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2014.3. International Union for Conservation of Nature.
  3. ^ インドネシアオーストラリアパプアニューギニア個体群はワシントン条約附属書II。
  4. ^ 西表島浦内川河口域の生物多様性と伝統的自然資源利用の綜合調査報告書1 幕末から明治頃の時期に浦内川に漂着個体が複数生息していたのではないかという指摘もある。
  5. ^ 動物 - イリエワニ - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)National Geographic 2013年4月5日閲覧
  6. ^ 人食いワニ?の捕獲に成功、体長6.4m フィリピン 2011年09月07日 09:23 発信地:マニラ/フィリピン 国際ニュース AFPBB News
  7. ^ 巨大「人食いワニ」公開、早くも見物客殺到 フィリピン 2011年09月19日 11:50 発信地:ブナワン/フィリピン 国際ニュース AFPBB News
  8. ^ フィリピンの世界最大ワニ死ぬ 体長6メートル超、ギネス認定 2013年2月11日 10:00 MSN産経ニュース(共同)
  9. ^ “巨大ワニが共食い、空中で振り回して丸のみ 豪国立公園”. フランス通信社. (2015年12月4日). http://www.afpbb.com/articles/-/3069034 2016年2月19日閲覧。 

参考文献

  • 今泉吉典、松井孝爾監修 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社1984年、151、183頁。
  • 小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 オーストラリア、ニューギニア』、講談社2000年、103頁。
  • 千石正一監修 長坂拓也編著『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、158頁。
  • 両生爬虫類対策協議会 「CLOSE UP CREEPERS -注目の爬虫両生類-」『クリーパー』第43号、クリーパー社、2008年、63-64、75頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 両生・はちゅう類』、小学館2004年、141頁。

外部リンク