JR東日本信濃川発電所の不正取水問題
JR東日本信濃川発電所の不正取水問題とは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が信濃川発電所において10年間に渡り違法な取水を行い、北陸地方整備局への虚偽報告をしていた事件である。
事件の影響
JR東日本は北陸地方整備局から河川法違反の行政処分を受けた。また、2009年2月13日には水利権の取り消しをJR東日本に通知し、発電のための取水が停止した。発電の再開には水利権の再取得が必要なため、新潟県・沿川地方公共団体・関係利水者との賠償(過去の清算)・発電利益還元などが必要となる。
再申請で同意を必要とする団体
- 自治体(十日町市・小千谷市・川口町)
- 漁業協同組合(中魚沼・魚沼)
- 土地改良区(十日町・池ケ原・川口町・小千谷・川井)
- 土地改良組合(岩沢・津山・野辺川・木津)
- 揚水組合(桜木・芋坂)
- 小千谷市土地改良用水信濃川取水連絡協議会
行政処分に関わる信濃川発電所の一連の事象
- 許可された最大取水量を超えた取水
- 10年間(平成10年1月~平成19年12月)の超過量約1,8億m³。
- 最低維持流量の不足
- 10年間(平成10年1月~平成19年12月)の総不足維持流量約38万m³。
- 角落としの無許可使用
- 冷却水・雑用水の無許可使用
- 工作物等の無許可設置(250件)
- 宮中取水ゲートの不具合
- 試験放流量の不足量
- 7号ゲート3万m³~13万m³、10号ゲート981万m³~1,693万m³
- 試験放流量の不足量
- 平成19年自主点検指示に対する報告
経過
- 2008年(平成20年)- 9月5日、宮中ダム(十日町市)での不正プログラムによる超過取水が発覚。
- 2009年(平成21年)- 3月10日、水利権取り消し、宮中ダム取水停止。
- 2010年(平成22年)- 1月13日、信濃川のあり方検討委員会が初会合。JR東日本が維時流量毎秒40トン、夏秋期60トンを提案。
- 1月20日、信濃川のあり方検討委員会専門部会でJR東日本が最大取水量毎秒317トンを提示。
- 1月22日、十日町市内4会場で開く市民懇談会が始まる。
- 2月5日、信濃川のあり方検討委員会の2回目会合でJR東日本が維持流量毎秒70トン、80トンの変動型の試験放流を提案。
- 2月26日、信濃川のあり方検討委員会の3回目会合で、維持流量は変動型の試験放流毎秒40~120トン、最大取水量317トンで合意。
- 3月1日、JR東日本発電取水総合対策市民協議会で会長の関口芳史市長は水利権再申請の延長を決定。
- 3月9日、JR東日本が国に水利権再申請期限の1ヶ月延長願を提出。
- 3月16日、十日町市議会信濃川・清津川対策特別委員会は、JR東日本に対する地域振興策5項目に同意。
- JR東日本の水利権再申請への同意を市議会議決事項とするため条例制定案を上程。
- JR東日本の水利権再申請の期限が4月9日となったため3月定例会の会期を4月9日まで延長して試験放流案と地域振興策が盛り込まれた十日町市とJR東日本との協定書(覚書)などを審議。
- 3月18日、流量に関する市民説明会を開催。
- 3月19日、十日町市が地域振興策をJR東日本に要望。
- 3月23日、振興策への回答を受けて十日町市が再申請への同意を固める。小千谷市も同意の方針。川口町は同意を決定。
- 3月29日、十日町市議会が同意議案を可決。
- 3月30日、十日町、小千谷同市や関係団体が正式同意。JR東日本との覚書などに調印。
- 3月31日、新潟県が再申請に同意。
- 4月2日、JR東日本が国(国土交通省信濃川河川事務所)に水利権を再申請。
- 6月9日、国(国土交通省信濃川河川事務所)がJR東日本に対して水利権の許可を出す。
- 11月4日、小千谷市が地域振興策を提出。
十日町市が求める地域共生策
十日町市は2010年3月19日、JR東日本に対し「信濃川の河川環境との調和」と「JR東日本が十日町市と共生するための振興策」を求めた要望書を提出した。主な要望は下記のとおりである。
- 十日町駅を市の玄関口としてふさわしい整備
- 現在の十日町駅舎は、JRとほくほく線とで駅舎が独立しており、乗り換えの利便性や駅舎東西の回遊性が低いことなどから、十日町市はかねてから元来の出入口である東口駅舎(JR側)の改築を求めている。
- 現在の飯山線はJR移行後の合理化の一環で、多くの駅で交換設備が撤去されており、新潟県内区間で交換設備が設けられているのは十日町駅と森宮野原駅の2駅のみである。そのため十日町駅で運行系統が分断され、飯山線相互間やほくほく線との乗り換えが非効率なダイヤ編成となっている状況が長らく続いている。
- なお、飯山線の新潟県内の区間(足滝駅 - 越後川口駅間)は、2010年4月1日から管轄が長野支社から新潟支社へ移管された。津南町・十日町市・小千谷市などの沿線自治体は、これまでJR東日本に対し当該区間の新潟支社移管を求めてきた経緯があるが、JR側では今回の移管や前述の長岡方面直通列車の増発に関し、不正取水問題との直接的な関係は無いと表明している。
- 電源立地地域対策交付金対象地域への法改正等に対する支援
- 法改正への支援及び法改正までの暫定措置
- 地域振興策への支援
- 交流人口増加への取り組み・支援
- JR関連企業の進出など地域経済への貢献
- 地元農産物の販売イベントなど地域PR活動支援
- 地域・各種団体要望に関して
- 改善を求める要望に誠意を持って問題解決へ努力。
- その他
地域共生策(十日町市)に対するJR東日本側の回答
十日町市の要望書に対してJR東日本は3月23日に回答書を提出し、翌3月24日に開かれた市議会信濃川・清津川対策特別委員会と会議後の記者会見でその内容を説明した。主な内容は下記の通りである。
- 飯山線・ほくほく線の活性化
- 飯山線沿線の地域活性化
- 2014年の北陸新幹線開業で飯山駅が飯山線への接続駅となることから「観光路線」としての振興を図るため、今後は沿線地域と共同で路線の利用促進と沿線の活性化に尽力する。その一環として、市側が提案する縄文時代の遺跡(笹山遺跡、魚沼中条駅近く)を活かした振興策や、十日町周辺で開催されるアートイベント「大地の芸術祭」との連携などを検討する他、各駅周辺で芸術作品の制作・展示を行うなど「文化・芸術に親しめる路線」として誘客を図る。
- 十日町駅の改修・改築
- 現在JRとほくほく線とで駅舎が独立している十日町駅は、自由通路の新設や駅周辺の都市施設整備など、今後改修・改築に向けて市側とマスタープラン作成に向けた検討を進める。
- 飯山線における観光列車の運行
- 今後ハイブリッドリゾート列車の運行に向けた検討を開始する。なお蒸気機関車牽引の列車は現在、沿線には整備用の設備が整っていないため、調査・検討を行う。
- 魚沼中条駅の改称の検討
- 前述の振興策の一環として、魚沼中条駅を「縄文中条」「笹山遺跡中条」など遺跡に因む駅名への改称提案があったことから、今後検討を行う。
- その他
- 前述の通り3月のダイヤ改正で、十日町 - 越後川口 - 長岡間の上越線直通列車を1往復増発した。また飯山線の県内区間は交換設備が設けられている駅が少ないことなどから、十日町駅で運行系統が分断されている状況が長らく続いている。こうしたダイヤの改善や交換設備の増設などは引き続き検討する。
- また現在、直江津 - 犀潟間および六日町 - 越後湯沢間へ乗り入れている、ほくほく線の普通列車の運行体制を北陸新幹線開通後も継続できるよう、JR東日本と北越急行が協議することも表明された。
- 電源立地地域交付金対象地域への法改正等に対する支援
- 極めて困難(地域振興策の支援などで貢献したい)
- 地域振興策への支援
- 雪まつりや大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレなどイベントの協賛や宣伝、旅行商品の展開。
- 関連会社の食材工場の進出で、数十人規模を雇用。
- 信州デスティネーションキャンペーンで十日町地区の宣伝を強化。[1]
- 十日町地区の食材のPRや、駅ビルでの販売。
- 地域・各種団体要望に関して
- 誠意を持って協議し、問題解決に努力する。
- その他
- 流雪溝の拡大は新たな水利権取得が必要なため困難。
- 十日町市民スキー場跡地で「森づくり」
- 信濃川が鉄道動力源になっていることをポスターやテレビ、新聞等の広告でPR。
- 宮中ダム周辺の魚道や公園の整備。
- 千手発電所の一部を桜公園として整備。
小千谷市が求める地域共生策
小千谷市は2010年11月4日、JR東日本に対し「東日本旅客鉄道株式会社信濃川発電所との共生策に関する提案書」を提出した。主な内容は下記のとおりである。
- 鉄道施設の利便性の向上について
- 上越線・飯山線の利用促進
- 山寺踏切の改良整備
- 産業・経済の振興について
- JR関連企業の立地及び商品開発の支援
- 市内事業所の活用
- 小千谷市の特産品等の販売促進
- 観光の振興について
- 小千谷水力発電記念館(仮称)の整備
- 山本山の周辺環境整備
- 情報発信と観光誘客
- 各種イベント等への協力
- 観光物産展への市内事業者の参画支援
- 防災と環境保全について
- 防災協定の締結
- 森づくり事業
- 教育・文化の振興について
- 小千谷水力発電記念館(仮称)の整備
- 文化講演会等の開催
- 地域の伝統文化、文化財等の保存活動への協力
- ふるさと学習と芸術活動の推進
- 共生の推進について
- 対話・理解活動の推進
- 電源三法が適用される発電施設の対象拡大に向けた支援
外部リンク
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