ATX電源

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ATX電源の内部

ATX電源(エーティーエックスでんげん、: ATX Power Supply)は、ATXコンピュータ用の電源回路を収めたユニットの標準規格、およびその規格に準じた電源ユニットを指す。2015年現在、デスクトップパソコン(PC)用の電源としては、最も一般的なものである。100Vや220Vといった電源から入力を受けて、内部で5Vや12Vといった直流に変換し、出力としてPCの各部に安定的に給電する役割を担っている。

本項では、本電源から派生したSFX電源についても記述する。

概要

1995年に米インテル社が、従来のAT規格[1]に代わり、マザーボードや電源ユニットなどを含む構造規格として「ATX規格」を制定した。「ATX電源」はその標準規格に準拠して設計・製造された電源ユニットである。取り付けねじの位置やPC筐体における開口部の形状制限、供給電圧、制御信号、コネクタなどは規定されているが、形状はあまり規定されてはおらず、特に供給する電流値は規定されていないため、多様な供給能力の製品が存在する。

一般的な電源ユニットは、パンチングメタル製などの頑丈な筐体に収められており、その1面がPCの外面に露出する前提で作られている。露出面にはAC100-240V等の入力ソケット(IEC 60320 C14)を持ち、PC内部側には出力や制御信号線となる十数本単位の給電用電線等、またはそのような電線の接続用ソケットを備える[2]。特に外部記憶装置類用の給電用配線は、最端部の給電用コネクタだけでなく、配線途中にもいもづる式に備わっている[3]。通常は1基か2基の冷却用送風ファンをいずれかの面に備えており、PC内部または外部から取り込んだ空気で電源ユニット内の熱を奪い、温まった空気をPC外部へ強制排出したりPC内部の気流生成に用いる。1枚程度のプリント基板上にスイッチング式の電源回路を持ち、半導体素子を冷却するためのアルミニウム製のヒートシンクが内部で大きな容積を占めている。1重以上の内部保護回路を持っており、PPFなどが多用され、多くの家電製品のようなヒューズは備わっていない。

ATX電源は、市販のデスクトップPCに組み込まれている他にも、自作パソコン向けや既存製品の改造、修理用などとしてユニット単体がパソコンショップ等で販売されている。ATX電源は、総出力や電力変換効率といった電気的な性能の他にも、冷却機構の差などに起因する静穏性や、コンデンサの品質などに起因する信頼性と寿命の差、配線ケーブルの取り回しや装飾的な機能を含むオプションの有無など多様な製品が存在し、これらの要素によって価格も大きく異なる。安い製品では2千円前後から高価なものでは数万円のものまで存在し、高級品では概ね保証期間が長く設定されている。[4]

仕様

ATX構造規格および周辺構造規格向けの種類

ATX
Pentium 4発売以前に主流だった規格。代表的な規格書は「ATX Specification 2.03 Dec. 1998」。
ATX12V
Pentium 4以降に発売された電源の規格。マザーボードに向けて4ピンの+12V補助電源コネクタを加えた。代表的な規格書は「ATX12V Power Supply Design Guide Version 1.3 Apr. 2003」。
ATX12V Ver2.x
Intel Core 2以降に発売された電源の規格。主電源コネクタが20ピンから(下記EPS12Vと同じ)24ピンに変更になり、シリアルATA用電源コネクタを必須に定めた。代表的な規格書は「Power Supply Design Guide for Desktop Platform Form Factors Revision 1.2 Feb.2008 Page-63 12. ATX12V Specific Guidelines 2.31」。
CFX12V
Compact Form Factor 向けの 12V電源コネクタ付き電源ユニット。
EPS12V
サーバ/ワークステーション用マザーボードを想定した複数CPU/複数GPUに対応した電源規格。近年[いつ?]の製品はATX12V Ver2.31との両対応電源が主流。主な規格書は「SSI EPS12V Power Supply Design Guide Version 2.92 2002-2004」。
FlexATX
FlexATXフォームファクタ向けの電源ユニット。
LFX12V
Low Profile Form Factor 向けの 12V電源コネクタ付き電源ユニット。
NLX および miniNLX
NLXフォームファクタ向けの電源ユニット。
PS3
SFX電源ユニットの一種。
SFX および SFX12V
SFX12V は、SFX に 4ピンの+12V補助電源コネクタを加えたもの。
TFX12V
Thin Form Factor 向けの 12V電源コネクタ付き電源ユニット。

サイズ

  • ATX 幅150×奥行き140×高さ86mm
  • ATX 幅150×奥行き160×高さ86mm

120mmファン等の大型の冷却ファンが搭載されている製品では、吸排気するためにファン側に隙間が必要になる。 しかしながら、一部のPCケースでは電源取付用ネジ穴の位置が、電源の上下逆さまの取り付けに対応していない場合があるため、電源との組み合わせでファン側が板金でふさがれてしまうことがあるため注意が必要。

供給電圧の種類と許容誤差

  • +5VDC, ±5%
  • -5VDC, ±10%(供給するなら。過去にはISAバスなどが必要とした。)
  • +12VDC, ± 5%
  • -12VDC, ±10%
  • +3.3VDC, ±5%
  • +5VSB, ±5%[5]

EuP Lot6

欧州連合理事会欧州議会が「エネルギー使用製品のエコデザインに関する指令」として知られるEuP指令、および、その対象範囲を広げた「エネルギー関連製品のエコデザイン指令」つまり、ErP指令がそれぞれ告示・発効されたことによって、欧州域内で使用/販売される広範な電気製品類のエネルギー消費に関する規定が設けられた。この規定によって、欧州域で用いられる(可能性がある)ATX電源は、EuP指令の中でのLot6(オフモード、待機モード電力消費量基準)で示される「オフモードでの消費電力」と「待機モードでの消費電力」がそれぞれ1.00Wを超過しない[6]という基準値に適合することが求められるようになった[7]

コネクタ

一般的なATX電源には主に以下のようなコネクタが搭載されている。

PCメイン電源コネクタ
マザーボードに電力を供給するコネクタ。20ピンまたは24ピンをもち、電源ユニットのコネクタの中で最も大きい。-12V,-5V,+3.3V,+5V,+12Vと多種の電圧を供給する他、電源を入れるための信号線も含む。一部の電源ユニットでは24ピンのコネクタを20ピンと4ピンに分け、20ピンと24ピンの両方のマザーボードに対応させている。
ATX12V 4ピンコネクタ/EPS12V 8ピンコネクタ
メイン電源コネクタとは別にマザーボードに接続し、CPUに電力を供給する。通常ATX12V 4ピンコネクタが使われるが、より大電力が必要なハイエンドCPUではEPS12V 8ピンコネクタが使われる。ATX12V 4ピンコネクタに別の4ピンコネクタを組み合わせてEPS12V 8ピンコネクタとして使えるようにしている製品もある。
ペリフェラル 4ピンコネクタ
ハードディスクドライブやDVDドライブなどの補助記憶装置に接続するコネクタで、+5Vと+12Vを供給する。拡張カードやケースファンなどのアクセサリ類への電源供給にも汎用的に使われる。
FDD 4ピンコネクタ
主に3.5インチフロッピーディスクドライブに使用されてきたためこう呼ばれる。ペリフェラル4ピンコネクタよりも小型で、電源ユニットのコネクタの中では最も小さい部類に入る。ペリフェラル4ピンコネクタと同様、拡張カードなどのアクセサリへの電源供給に使われることもある。また、このコネクタを誤って挿したことによるトラブルはよくあることとして知られており、注意が必要である。
シリアルATA電源コネクタ
SATA接続のハードディスクドライブやDVDドライブなどの補助記憶装置に接続するコネクタ。Molexの67582-0000を用いる[8]。15ピンで+3.3V(14.85W)、+5V(22.5W)、+12V(54W)を供給する[9]
PCI Express電源コネクタ
PCI Express接続のグラフィックカードに接続するコネクタ。6ピンと8ピンのものがあり、主に6ピンのコネクタが使われるが、一部のハイエンドグラフィックカードでは8ピンのコネクタが必要となる。6ピンのコネクタに別の2ピンのコネクタを組み合わせ、8ピンとしても使えるようにしている製品もある。また、8ピンのものはEPS12V 8ピンコネクタと形状が似ているため、誤接続への注意を促す表示がされている場合が多い。PCI Express x16スロットの75Wでは不足する場合に接続する。6ピンは最大で75W、8ピンでは最大で150Wの電力をグラフィックスカードに供給する[10]

この他に、各社の製品の独自機能として、ケースファン電源供給コネクタ、電源ファン回転数検出用コネクタなどを装備するものもある。

選定上の留意点

ATX電源の給電能力が不足するとPCの故障の原因となる可能性がある。また、給電需要が定格内であっても供給に余裕があまり無ければ電源ユニットが相応に発熱するため、寿命はその分短くなる。供給可能な電流値も各電圧ごとやレーンごとで異なるため、総出力値だけでは判断できない。一般に電力の変換効率は定格出力値の50%付近が最適になるように設計されており[11]、電源容量については余裕を持った選択が望ましい。個別の給電能力や接続端子についてはパッケージの記載などを確認するべきである。

+5VSB (+5V standby voltage) はシャットダウン後(ACPI S3ないしS4モード)も待機電力として常にマザーボードなどに供給され続けているため、部品交換などPC筐体内部に触れる時に主電源スイッチをoffにするか電源プラグを抜くことを怠ると、故障の原因となる恐れがある。また、主電源を切ってもしばらくはコンデンサなどに電気が蓄えられているため、異常な電気的負荷を内部部品にかけることで故障や寿命短縮しないように、PC内部の作業時には主電源を切ってから電源ボタンを空押しすべきとされる[12]

ATX電源でも低価格な製品では、コスト抑制のために品質が犠牲になっているものがある。電源ユニットだけに限らずPC業界全体の問題であるが、部品ごとに製造する専業メーカーの分業化や多様化が極度に進んだ結果、高価格ながら上質の部品が入手できる反面、低価格ではあるが品質に問題のあるものまで流通している。例えば「ホワイトボックス・パソコン」などと呼ばれるパソコンショップ等が独自ブランドで販売するPC製品では、筐体と電源は既製の電源付きケースを大量一括調達することで仕入値を抑制することがあり、過剰にコスト削減を優先すると品質や設計に問題がある製品が含まれてしまう危険性がある[13]

製品に記される品質と安全の証明となる様々なマークは、ULマークと、GSマーク、TÜVNEMKOSEMKODEMKOFIMKOCCCCSAVDEGOST R、そしてBSMIEMI/RFIのための一般的な証明書マークは、CEマークと、FCCと、C-tickである。これらのマークは商用電源に接続される電源機器に必須とされるものが各国で制定されており、品質検査を受けた証として認定されたものに表示が許される。

80 PLUS

電源変換効率の性能差によって製品を分類するものとして、"80 PLUS"というグレード分けがある。この分類規定を満たすことによって省エネルギー性が示されるため、ATX電源製品の優秀性を示す尺度として商品の宣伝などで用いられている。"80 PLUS"では、交流入力から直流出力への電源変換効率において、下記の条件を満たしていることが求められる。AC115Vの入力時における、負荷:20%、負荷:50%、負荷:100%の各状況下においてそれぞれの電源変換効率が規定されている。

80 PLUS のグレード
グレード 115V 内部・非冗長 230V 内部・冗長
負荷 10% 20% 50% 100% 10% 20% 50% 100%
80 PLUS --- 80% 80% 80% N/A
80 PLUS Bronze --- 82% 85% 82% --- 81% 85% 81%
80 PLUS Silver --- 85% 88% 85% --- 85% 89% 85%
80 PLUS Gold --- 87% 90% 87% --- 88% 92% 88%
80 PLUS Platinum --- 90% 92% 89% --- 90% 91% 90%
80 PLUS Titanium 90% 92% 94% 90% 90% 94% 96% 91%

[14]右側の230Vはデータセンターなどで用いられる冗長電源システムでの規定である。

特色のある製品例

静音製品
  • 直径120-140mmの大径で低速回転の送風ファンを持つ
  • 低温時にはファンを停止させ、温度が上昇した時にのみ動作させる
  • ファンを搭載せず、外部に放熱用のヒートシンクを装着する
  • 電源本体をPC内に収めず、外部にACアダプタとして持ち、電線で接続する形態になっている
高価格製品
  • 高い冷却性能のために複数のファンを持つ/ファンの回転速度自動可変
  • 補助記憶装置ビデオカードを複数搭載する場合にそなえて給電用の配線数が多い
  • 大電力を消費する高性能ビデオカードのために+12Vの大きな給電能力を備える
  • 日本製の105℃対応アルミ電解コンデンサを使用している[15]
  • PC内部の空冷効果を高めるために、無用な給電用配線を排除できる着脱可能なプラグイン式ケーブルを備える
  • 保護回路を複数持つ
装飾・付加機能製品
  • LED付ファンを搭載し、給電中は電源のケース内部が青色や白色に光る
  • ファンの回転速度を手動で可変できる
  • ケースにメッキや表面加工が施される
  • シャットダウンしてからも30秒から1分間ほどファンを回転させ続けて内部の熱を逃がす
  • 低伝導率のガラスエポキシ基板を使用する
  • 振動の低減を謳う固定用ネジワッシャーが付属する

SFX電源

SFX[16]電源は、小型PC用のMicroATX規格に準じた電源ユニットである。ATX電源よりも小型化され、-5V出力が省略されている。 電源出力も、概ね100Wから400W程度とATX電源よりも小出力である。中にはATX電源互換のマウンタが付属している製品もある。

サイズ

  • SFX(A) 幅100×奥行き125×高さ50mm
  • SFX(B) 幅100×奥行き125×高さ63.5mm
  • SFX(C) 幅125×奥行き100×高さ63.5mm
  • SFX(D) 幅100×奥行き125×高さ63.5mm

※ SFX(B)とSFX(C)はファンの厚みが17.1mmとなっており、空冷ファンが下部に出っ張っている。

脚注・出典

  1. ^ AT規格はPC/AT互換機用の規格であるが、代表的なデファクトスタンダードであって、PC/ATとその同等品からなる多様な派生製品の中から主流となった形状や特性が順次、業界内で公認され、規格として文書化されたものである。
  2. ^ 給電用電線がソケットによってATX電源本体から外せるようになっている製品があるが、使用しない無用な線を除くことでPC内部での空冷の効果が高められる反面、接触不良の危険性やコスト高に加えて高電流の接続点が増す事による電圧降下と電力の無駄が生じるというデメリットがある。
  3. ^ ハードディスクドライブのような補助記憶装置類用の給電用配線は、大きな"Pheripheral Power Connector"と呼ばれる主に5インチサイズの記憶装置向け電源コネクタと、やや小さな"Floppy Drive Power Connector"と呼ばれる主に3.5インチサイズの記憶装置向け電源コネクタに加えて、21世紀になって登場した小さな"Serial ATA Connector"と呼ばれるものが存在し、近年では5インチサイズの記憶装置の利用が減少するなど状況の変化に対応して、ATX電源でも年を追うごとにサイズの小さな電源コネクタの比率が多くなる傾向がある。これら3種類の間の相互変換用の電線・コネクタが販売されている。
  4. ^ エナジアプラチナ1000W(5年保証)
  5. ^ ATX2.2規格
  6. ^ オフモードと待機モードのいずれでも1.00Wを超過しないという基準値は、2013年1月8日以降は、いずれも「0.50Wを超過しない」へさらに厳しい値に変わる予定である。
  7. ^ ここが知りたいRoHS指令 - 中小企業基盤整備機構 (2012年1月6日閲覧)
  8. ^ http://www.japanese.molex.com/molex/products/datasheet.jsp?part=active/0675820000_CRIMP_HOUSINGS.xml
  9. ^ http://www.molex.com/pdm_docs/ps/PS-67490-002.pdf , 2015-01-12閲覧。1回路あたり1.5Aでありそれぞれ3回路あることを考慮し、P=IVより算出可
  10. ^ http://www.playtool.com/pages/psuconnectors/connectors.html#pciexpress , 2015-01-12閲覧
  11. ^ 玄人志向に聞く「PC電源のツボ」 - AKIBA PC Hotline!, Impress Watch (2011年8月3日付配信、2011年11月5日閲覧)
  12. ^ 電源ケーブルを抜いた状態でも電源ボタンを押すとLEDが一瞬点灯したりファンが一瞬回る事があるが、これは回路や電源部に電気が残っていた場合に発生し得る現象である。このような電源回路の特性によって、周囲の家電製品(特に冷蔵庫や掃除機のような大きなモーターを持つもの)の電源をon/offすることによってAC100Vの商用電源線に大きなノイズが乗り、瞬断相当になっても、PCが異常動作をすることはない。
  13. ^ 一部の「ホワイトボックス・パソコン」のような電源付きケースには、得体の知れないATX電源が組み込まれている場合があり、極端な場合、ATX電源のラベルに書かれているブランド・型番等の情報からインターネットで検索しても素性が摑めない様な代物や、一般的な単品製品よりもコネクタ数が少なかったり、開封して内部を見るとパーツや造りが粗悪な場合もある。PCメーカーとして高い知名度やブランド力を有する企業でも、電源ユニットについては自社で製造せずに他社から供給を受けて販売している事例は多い。「継続定格出力」と「ピーク時出力」についての差異が曖昧であったり、製品により都合よく使い分けるメーカーも存在する。これらの事から、時に特定型番・ロットのパソコン製品・ATX電源にまつわる品質や故障多発を巡る噂や懸念などが囁かれる事もある。また、ホワイトボックスパソコンでは、コスト抑制などの為にハイエンドモデルでもそれを理由とした高品位な電源が用意されない事は別段珍しくはない。この為、ATX電源について言えば、「ハイエンド向きを謳う高価な製品だから」「○○社のハイエンドモデルのパソコンに組み込まれているものだから」「パワーユーザ向けの大出力の製品だから」「著名なパーツメーカーである××社の製品だから」などといって、全てが確実に高品質・高信頼性のものであるとは簡単に断言できず、いざ実際に使ってみなければ判らないという実態が付きまとうのも現実である。この様な事から、PC用部品の中でも特にATX電源については品質面や信頼性に関しての問題意識が存在するため、主にインターネット上を中心に情報交換が行われている。その中には信頼性や故障発生率などの品質面以外にも、後述する様なメーカー・輸入代理店のアフターサポートの状況・能力などにまつわる情報や話題も数多い。また、この様な場では、主にケース組み込みの低コスト・低品質の粗悪な電源ユニットを指して、動物名をブランドネームや製品名に採用している物が多いことに由来して「動物電源」という揶揄表現が用いられる事もある。 特に低-中価格帯のものに対して品質面で懐疑的な見方をする者の中には、「電源ユニットは使い捨て」と割り切って1-2年程度で定期的に交換するユーザーもおり、完成品のホワイトボックスパソコンについても使用前に電源だけは自分の眼鏡にかなう製品を別途調達して入れ換えるというユーザーも見られる。さらには、重要な業務などに使用しているため故障が絶対に許されない環境で使用している者の中には、メーカー保証が受けられなくなるリスクは承知の上で、定期的なメンテナンスの都度に電源のケースを開封して内部のコンデンサなどの状態をチェックし、僅かでも不安な点があればすぐ交換するという者も見られる。また、頻繁な交換まではせずとも、コンデンサの状態については敏感にチェックしている者も多く、品質的な瑕疵が比較的少ないとされる日本製コンデンサの使用は、中価格帯を中心に製品としての主要なセールスポイントとなっている(ことに日本で販売されている製品に限っていえば、高価格帯の製品では全コンデンサが日本製である事は、事実上の基本となっている)。 また、これは他の自作パソコン用パーツにも共通して言える事ではあるものの、その品質と同様にアフターサポートの能力・質についてもメーカー毎の幅が非常に大きく、高いブランド力を持つ大手メーカーや知名度の高いメーカーであるからと言って、故障時のサポート対応能力でも優れているとは一概に言えない。台湾などの海外メーカーの製品でも、販売代理店が日本国内で故障確認や代替品発送などを行っている製品では3日程度で対応完了するなど非常に迅速な場合もあるが、逆に、販売代理店が故障判断の権限を持たない代理店契約の内容である場合には、代理店経由で海外のメーカー工場に送付しての対応となる為、修理や代替品発送による対応の完了までに数週間から数ヶ月を要する事も見られるなど、かなりまちまちな一面がある。 一部メーカーやパソコンショップなどが販売しているホワイトボックスパソコンや組立キットでも、BTOで選択項目の1つとしてATX電源が用意されているモデルがあり、この場合、料金を追加すればより大出力・高性能の電源に変更できる。ただし、海外の製造メーカーから既製品ベースの「電源付きパソコンケース」を大量調達する事で仕入コストを抑制して大幅な低価格を実現させている製品やメーカーのものについては、他パーツのBTOが可能でも電源は選択できないことがある。
  14. ^ [1] - plugloadsolutions.com (英語、2011年11月5日閲覧)
  15. ^ ATX電源に限らず多くの電気製品では、寿命を決定付ける代表的な要素の1つとしてアルミ電解コンデンサの機能不全がある。アルミ電解コンデンサの内部には不織布などに含浸させた電解液が含まれており、封止部などパッケージの経年劣化によって密封が損なわれることで電解液が漏れたり蒸発することで蓄電機能も衰え、やがて完全に失われる(ドライアップ)。電解液の減少や喪失によって内部がショートすることは稀であるが、劣悪なアルミ電解コンデンサでは大量に漏れ出た電解液が配線パターンをショートさせたり周囲の電子部品を傷めて破壊的な障害を起こすことがある。固体コンデンサを選択すればこのような問題は避けられるが、21世紀初頭現在、実用的な大きさやコストの範囲内で大容量の蓄電性能を得るには、アルミ電解コンデンサ以外の選択肢はない。アルミ電解コンデンサには一般に85℃対応品と105℃対応品があり、アレニウスの法則によって両者の寿命には4倍の開きがあると考えられる。いずれにしても85℃や105℃といった高温雰囲気中で動作させ続ければ、1000時間規格の物では1.3ヶ月ほど、2000時間規格のものでも2.6ヶ月ほどで想定された寿命を迎えることになる。
  16. ^ "SFX"は"Small Form Factor"に由来する。

参考ウェブサイト

関連項目

外部リンク